第6話 おかえりなさいの距離 

 おかえりなさいそりゃおかしいはなし


 おかえりなさい、ススム

 ただいま、なあ母さん?

 なあに?

 どうして俺んちは普通なの?

 あら?普通が一番よ。

 マモルのヒレも、みんなの力も羨ましいよ。

 それでも無力の人間族は魔王を倒したのよ。

 そんなの大昔の話でしょ?

 考え込みすぎると面白いのもつまらなくなるわよ

 うん、そうだね


 俺以外にも人族はいる。誰しもが感じる劣等感、それが強かった。

 だからあの日の通学路、俺は夢を見ているのかと思った。委員長も寒そうにマフラーを巻き、マモルも泳がない。みんなみんな人族だ。俺はなるべく静かに過ごし、マヤ先輩に放課後言った。


「先輩!猫の耳としっぽはどこに置いてきたんですか?」


「はあ!?」


「他のみんなも、マモルも人魚じゃないし、みんな人族になったんですか?」


「ススム、新しいネタか?」


「やっぱり俺異世界に来たんですね?俺の望んでいた世界に」


「ほ、保健室行くか?熱高いんじゃ」


「先生なら氷の魔法で冷やしてくれますね」


 保健室で先生からも冷たい目線を浴びた。やはり魔法は使えるんだなんて。


 帰りたくない、このままここにいたい。そのまま冬から春になる。ひどくゆっくりに感じた。みんなと桜を見に行った。お花見を楽しむみんなの風景が、なぜかだんだんとにじんでくる。外見や力が違うだけで同じなのに、俺の知らない世界。楽しいし嬉しいのに、なぜこんなに寂しいんだろう?



 突然の桜吹雪、彼の視界は目を閉じたためゼロになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る