第2話

「大丈夫かな?。森の怪物に襲われないかな?」


 やはり、怪物は、いるようです。熊の様に大きく、狼の様に強いのでしょうか。


「とりあえず、怪物に出会う前に、耳を届けよう」


 しかし、森も、ここまで深く入ると、昼なお暗く、帰り道を見失いそうになります。キラキラの小川も見えなくなりました。


 持っていたクルミの実を帰り道の目印に、ひとつづつ、置いていきました。


 森の奥には、泉があり、明るく開けた場所でした。


 ノリちゃんは、少しだけ休憩と、泉のそばの大きい石に座りました。


 この森に住むウサギが、訪ねて来ました。

大きく飛んでいるのに、ウサギの耳でも、足音がほとんど聞こえません。


「ノリちゃん、ノリちゃん。こんな森の奥深くまで、私を訪ねて来てくれたって、聞いたわ。ありがとう」


 そのウサギさんには、とても立派な耳が、付いていました。


「あれ?耳は落としていないのね。森の入口付近に、この耳が、落ちていたの。てっきりウサギさんが落としたと思ったのだけど」


「耳は、私たちのいちばん大切にしている物だわ。そんなに簡単に落とさないわよ」


「他のウサギさんも落としていないのね」


「聞いていないわ」


 ウサギさんは、そわそわして、周囲を見回して、ノリちゃんに言った。


「それより、人間が、こんな森の奥にまで、踏みこむのは、危ないわ。リリマルが、出るかもしれないもの」


「リリマルって何?」


「分からないわ。誰もみたことないもの。でも恐ろしい怪物だって聞いている」


「困ったわ。この耳を落とした子が、心配だわ」


「そうね。私、もう一度みんなに聞いてみるわ」


 今日は、帰ろうということになり、来た道を振り返ると、リスが、ちょこんと座っていました。


「ノリちゃん。クルミは、もうないの?」


「まあ、目印のクルミを食べちゃったの?」

 

「目印だったの?ごめんなさい」


 リスは、すぐに謝りました。


「ところで、何の目印?」


「帰り道よ。私こんな森の奥まで、来たことがなかったから」


「な~んだ。帰り道くらいなら、私が、道案内するわよ」


 リスは、胸をポンと叩いて、さっそく歩き始めました。


「よかったわね、ノリちゃん。じゃあ、私今から耳を落としたウサギを探してみるわ。そんなに時間は、かからないと思うわ。明日、森の小川で待ってるわ。その時に、結果は、伝えるわ」


 ウサギと別れたノリちゃんは、リスと歩き出しました。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る