第24話
※
「三十分ほど経った頃かな。挨拶にやって来たドクに、私は戦いたいという意志を伝えた。流石のドクも驚いていたよ、あまりにも即決しすぎる、ってね」
ふふっ、と口元を緩ませる葉月に、剣矢は問うた。
「それからどうしたんだ、お前は?」
「その道の教育機関に入った。小中学校での学習と、戦闘訓練を施される秘密機関だ。まあ、学習は難しくなかったかな。戦闘訓練は大変だったけど、これで悪人を倒せると思えば、苦痛じゃなかった」
その言葉に、剣矢はずきり、と胸が痛むのを感じた。
これではまるで、葉月は洗脳されたテロリストではないか。いや、確かに自分たちは今、立派な殺人集団になっているわけだから、互いのことは言えないが……。
だがもしかしたら、この胸の痛みこそ、葉月やエレナが感じていることではあるまいか。
大切な人に罪を重ねてほしくない、という件だ。
「なあ、葉月」
「うん?」
『他人を大切に思うというのはどういうことなんだ?』――そう問いかけようとしたが、剣矢は瞬間的にそれを躊躇った。
「お前、傷の方は大丈夫なのか?」
「心配いらないよ。あんたを助けるくらい、作戦のうちに入らない。後でみっちり憲明に叱られたり、和也に泣かれたりしたけどね」
「そうか」
そう言って俯く剣矢に、葉月は『取り敢えずよかった』とだけ告げた。
ちょうどその時。
《んん……。皆、聞こえているな? こちらはドクだ》
「ドク?」
一体どうしたんだ? わざわざ通信機器を使って話をしているということは、今ここにはいないのか?
《重要な話がある。今日は遅いので、あー、明日の午前八時に、第一会議室に集まってもらいたい。十分休息を取って、話に臨むこと。以上だ》
ぷつん、と音声が切れるのに合わせて、剣矢と葉月は顔を見合わせた。
「何だ、今の?」
「あたしに訊かれても……」
「まあいいか。取り敢えず、俺はもう休むよ。長話に付き合わせて、悪かった」
「い、いや、こちらこそ」
微かに頬を染める葉月を一瞥し、どこか温かいものを感じながら、剣矢は汗を流しにシャワールームへと向かった。
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