第6話
剣矢はドクの下へ来てすぐに、自室で銃器の点検を行うつもりだった。耐水加工は施していたし、丸ごと交換するにはまだ惜しい。イタリア製の、最新鋭の自動小銃だ。
さて、どの部品から整備したものか――。
そう考えた矢先のことだった。
「ああ、帰って来たな、剣矢くん」
「只今帰りました。何かあったんですか、ドク?」
こういう時のドクは、言い淀むということがない。尋ねれば、真っ正直に返答する。
しかし、それでも多少は配慮してほしかった。何せ、ドクの返事はこんな内容だったからだ。
「例の爆弾テロの首謀者が分かった。君の父親だ」
「……は?」
「錐山尚矢、四十二歳。名前や年齢は間違いないね?」
沈黙している剣矢の態度を、ドクは肯定の意思表示と受け取ったらしい。
一つ頷いてから、話を続ける。
「理由は分からないが、彼が起こしたのが件のテロだ。情報を得るために、君には吸血による情報の回収を頼みたい。これは、君の『両親の仇を討ってみせる』という執念とも一致すると思うが、どうかね?」
「錐山尚矢に吸血を?」
「そうだ。だが、まだ周囲の人間関係が把握できていない。慎重に事を運ぶとすれば、まだ数年はかかるだろう。それまでに、出来得る限りの戦力は揃えておく。だから――」
「分かりました」
自分でも意外なほど、剣矢は納得していた。
「俺が自分の手で、親父を始末します。少なくとも、お袋の仇ではありますから」
剣矢の眼光を、ドクはまっすぐに受け止めた。
「了解した。君の意志を尊重しつつ、作戦を計画しよう。だが、まだ二年から二年半ほどはかかると私は読んでいる。忍耐が要るだろうが、今後も作戦協力を頼みたい」
剣矢はすぐさま、大きく頷いて見せた。
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