第4話

「これは国の一大問題に発展するかもしれない事なのです!

早急に調査及び、討伐隊の編成を行うべきなのです!!」



とある部屋の一室で、ロースは強く叫んでいた。

しかし、ロースの興奮した態度とは真逆にそれを聞く長髪金髪の女性の態度は冷静な物であった。

彼女こそが彼の上司であり、彼の所属する騎士団のリーダーである女傑『リス二ヴ』であった。



「貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか?

今、この国は隣国との諸問題や新手のモンスターの一団などで混乱状態。

そのような不確定な災害ごときに軍が動かせると思っているのか?」


「しかし、今回同行した『ピリメア』からの書類は見たでしょう!

今回現れたのは間違いなく新しい『ダンジョン』に間違いがありません。

彼女は魔術団でも若いけれど優秀な『魔術師』、まちがいなどではありません。

貴方もその報告書を呼んだら、それが真実だとわかるはずです。」



今回の休暇で故郷に『ダンジョン』らしきものがあると知ったロースはピイと共に早急に町へと戻り、村長など一部の人の身にその結果を伝え、援軍を呼ぶために早急に王都へと帰還をした。

しかしながら、ロースの応援の要請は今こうして却下されてしまっているのだ。

ロースが強く強弾するが、それに対し彼の上司はこう冷静に返した。



「貴様に言われずとも、すでにその報告書を読ませてもらった。

そして、その上で今回この件に関して、『騎士団は動かない』こう決定したのだ。

確かに、《白き丘》《ラドスの門》《炎水の灯台》ダンジョンというのは、古今東西我々を悩ませ、件のダンジョンも国内最大級の災害になりえるかもしれないことを認めよう。」


「ならなぜ!」


「簡単なことだ。

『我々がそこまでしてそのダンジョンをどうにかするメリットがない』からだ。

聞けば、そのダンジョンが現れた場所はかなりの僻地。

例えそのダンジョンが危険な魔物の棲家であってもそこでならいくら暴れても国の被害はほとんどない。

仮にそこまで遠征に行くとして我々が騎士をそこまで動かすのにどれだけの費用がかかるのかわかって言っているのか?

さらに言えば、むしろあそこはダンジョンが危険な物であった場合、放置した方がより国益になりえる。

なにせ、あの忌々しい長耳どもと共食いしてくれるかもしれないしな。」


「なっ!」



彼は自身の上司の《冷血》ぶりに驚く。

そのあまりの上司の言いように彼は激昂して、まくしたてる。



「人命がかかっているのですよ!

あそこの近くには村があり、今なお多くの人々が危機にさらされているのですよ!

今動かずして何が『騎士道』ですか!」



新前とはいえ、一応は『騎士』であるロース。

彼は自身の上司の心情である、『騎士道』から揺さぶりを掛けようとした。

しかし、それに対する『リス二ヴ』の反応は冷たいものであった。



「そうだ。私は『騎士』だからこそ、今回は動かないのだ。

我々がこの件で動けば、確かに貴様の故郷である村には益がもたらされるかもしれん。

しかし、それにより失われる金はどうだ?それで何人の貧民が食えると思っている。

その間に隣国や魔物が攻め込んだらどうするつもりだ?今この国の状況が分かっているのか?

大事を見ろ、小事に捉われるな。

私から言えるのはこれだけだ。」


「……わかりました。

今回の件の理解が得られず非常に遺憾です。」



ロースはそういうと、リス二ヴに背を向け、部屋から退出しようとする。

その顔は明らかに悔しさでゆがんでおり、このままほっておくと何をしでかすか不安になる、そんな顔をしていた。。

そんなロースの表情を見たリス二ヴは、溜息を吐きながらロースを呼びとめる。



「……ったく、その顔を見るに全くわかっていないのが丸見えだぞ。

貴様も騎士になったのだから、腹芸の一つでも覚えろ。

貴様をこのままほっていくと一人で勝手に突っ込みそうだからな。

特別におあつらえ向きの任務を用意してやった、これをやるがいい。」



リス二ヴの言葉に反応し、ロースは彼女の方向を振り返る。

そして、彼女の手には一枚の紙が握られていた。





●異世界迷宮経営物(仮)

『人間編2』





「で、国境の警戒と称して今ここに至るというわけですか。」


「……あくまで表向きではな。」



ロースは『国境の警戒』の為という任務で再びこの村まで訪れることとなった。

今回の任務は騎士団からは『ロース』一人、そして、『魔術隊』から調査員として『ピイ』が参加することとなった。

ロースの住んでいる町は『ドグマン』は大きな山にあることはご存じであるが、ここは同時に『聖なる土地』とも言われているエルフの住む森にして国『レニア』との国境線でもある。

しかし、この国境線に『見張り』や『警戒』がいることはめったにない。

なぜなら……



「まあ、エルフたちがこの山を越えてまでわざわざこっちに来るようなことなんてまずないですからねえ。

しかも国境線とはいえ、山数個分以上離れているんでしょう?

ならば、町にずっと滞在するだけでも大丈夫だったのでしょう?」


「ああ、今回の任務は完全に俺が装備を持ってここへ来れるために団長が作ってくれた任務だ。

……今村で行われている会議には俺は参加する気はない。

あの話題は、今村に住んでいる村長たちに決めてほしいしな。

俺はせめて、話し合えるだけの情報を探るつもりだ。」



ロースが馬を進め、そして、彼が見据えるのは前回は入り口だけしか見ていない、なにがあるかはわからない場所『ダンジョン』の入り口であった。

今回、『ロース』が団長に言われてた任務、その裏には『ドグマン』に住む人々に対する『退避』の警告をすることを許可された。

しかし、村の人々にとって、『退避』することは『村』を捨てることにほかならず、その上、『退避命令』による恩赦は1年間の税金の免除と言うものではあるが、それは職業や住居などの手助けしてくれないという事でもある。

これは正直なところ田舎の村に対して不可能なことを要求しているに等しいのだ。

そのことをよく知っているロースは表情は険しく、ピイもロースにつられて同じ方向を見て、ダンジョンの入り口を視認し、やはり未だにあの時発見した『ダンジョン』が健在であるようで思わずピイの口からため息が出る。。



「ありゃあ、小さいダンジョンは良く『自然消滅』するとか言う報告を聞いていたんですが、実際甘くないですねえ……。

で、先輩やっぱりやっちゃうんですか?」



ピイはそう言ってロースの顔色をうかがう。

ロースはピイの方を見ずに答えた。



「ああ、今回俺はこのダンジョンに『侵入』してみる。

正直なところ、これが安全か危険かもわからない。

しかし、実際に潜入してみなければどんなところかわからるだろう?

ココが魔物の巣だった場合を考慮して、ここの親玉が倒せればよし、せめて地図みたいなものが製作するのが最低目標だ。

……これは任務ではない、俺の独断行動だ。お前はこなくてもだいじょうぶだぞ。」



ロースのその物言いに、ピイは頬を膨らませながら反論した。



「せんぱ~い。

ダンジョンの目の前まで誘っておいてそんなことを言っちゃうんですか?

せっかくの噂しか聞いたことがなかった『ダンジョン』、それの調査ができるなんて、私の知的好奇心が天元突破なんですよ!

珍しき魔道具、珍妙な構造、新たな魔物、どれも私興味あります。

私も魔術師の端くれ、ぜひぜひこの探索に私も連れてってくださいよ。」


「ったくおまえは……。」



ピイの明るい口調を聞き、ロースはピイの気遣いをうれしく思う。

もちろんピイがこのダンジョンに対して興味があるのは本音であろう。

確かにダンジョン内には、ピイが言った通り、未知の物や財宝がたくさんある場合があり、さらにそれを集めることを生業にする冒険者もいるという。

しかし、ダンジョン、しかも中が未確認のモノはとても危険であり、進んでいきたがるものはほとんどいないと言ってもいい。

そもそもダンジョンは、中が魔素に満ちているので普通の人間では長期間滞在することができない、長くいると体調を崩し、下手すると魔物化してしまうかもしれない。

そのような劣悪の環境の中、逆に中にいる魔物は地上にいる者よりも強くなっており、大概の魔物は積極的に人間を襲う。

中の構造も複雑で罠が仕掛けてある場合まである。

これを進んで調査するのは、戦争中の国の国境を行くよりも危ないと言われるほどである。



「なら、後悔しても知らないぞ?

とりあえず、今回の目標はこのダンジョンの簡単な地図製作。

それと、できるなら中にいる魔物の親玉の退治だ。

時間は、とりあえず俺の持っている紙に地図が描き切れなくなるくらいまでってことにしておこう。」


「はいはい。

あ、あと地図は私が書きますから、戦闘とかは先輩にお願いしますね。」



かくして、二人はこの岩でできた入口のダンジョン、この時は知らないが将来『悪魔の誘惑』と呼ばれるその内に入ることとなった。









中に入ってから、少し日が傾いてきたころ二人は未だに洞窟内にいた。

二人はどちらも洞窟内で見つけた岩に座っており、二人のそばには二匹の翁蝙蝠の死骸が転がっていた。

ロースは岩に座りながら剣に着いた返り血をふき、ピイは光魔法で付けた明かりを頼りに地図を書いていた。



「思ったより中は広そうだなあ……。」


「そうですねえ。

先輩も難なく剣を振り回して戦えていますし、これなら私が魔法を撃ったとしても、先輩を巻き込まずに済みそうです。

中にいる魔物もほとんどが野生動物の延長みたいな奴ばっかりですねえ。

しいて言うなら、《スライム》だけが厄介でしたね。」


「そうだな。

スライムの体は酸でできているから、剣士の俺としては特に厄介だ。

さっき、スライムを一体切りつけちまったから、剣がさびていないか不安だ。」



二人が中に入ってから今まで三回くらい魔物に遭遇してきたが、それらは《鼠》の魔物、《スライム》、そして、今目の前に転がっている《蝙蝠》の魔物といったところであった。

これらの魔物は一応どれも《魔物》ではあるが、一匹一匹ならば戦闘の心得があるものならば難なく倒せ、また2,3匹で襲われたとしても《王国兵士》ぐらいの強さがあれば倒せるレベルの物ばかりであった。



「ダンジョン内の魔素の濃度も思ったより緩いですしねえ。

これくらいなら一晩いたとしても大丈夫そうですね。

けど正直、私にとってここにいてもあんまり得することはなさそうですねえ。

只の洞窟みたいなダンジョンですから《宝》があることは期待できそうにありませんし、出てくる魔物を浄化したとしてもしょっぱい奴らばっかりですしねえ。

今の所『浄化』して得するのはスライムくらいですかね、まあ、この《魔石》が手に入っただけで得したと考えておきますか。

まあ、その《魔石》はかなりしょぼくてがっかりですがねえ……」



ピイはそう言いながら、手元にある小石大の大きさの黒色の石を眺めた。

《魔石》は《スライム》などの一部の魔物が浄化されたときにまれに残る石状の物であり、簡単に言えば《魔力》を込めやすい鉱石である。

もちろん、大きさや色、純度によって価値が大きく変わるものであり、それによってこめられる魔力の量や質も違い、宝石としての価値もある。



「……このまま順調ダンジョンの地図を完成できればいいが。」


「このレベルの魔物しか中にいないとしたら、そこそこ高名な魔術師と司祭がいれば何とかなりそうなレベルですねえ。

……まあ、そう簡単にいくとは思えませんがねえ。」


「だよなあ、《スライム》以外で今まであった魔物は全部この辺の生き物が《魔物》した奴ばっかりだしなあ。

明らかにこのダンジョンには、この辺に住む生き物を魔物化させた原因があるはずだしな。

それが分かればいいんだが……」


「まあ、そうでしょうねえ。

何か原因がなきゃ、周囲からここに魔物が集まるわけないですしねえ。

……っと先輩、お客さんのようですよ」



洞窟の奥から何かごろごろところがる音が聞こえ、ロースは岩から立ち上がり剣を構える

ピイもそれにつられて立ち上がろうとすると、その刹那、洞窟の奥からピイに向けて細い蔦が伸びてくる。



「っ!おっと、そうはさせねえ。」



しかし、ピイにその蔦が届く前に、ロースは素早く反応しその蔦を切る。

蔦の先端が切られたことにより、その先っぽが浄化され、黒い霧となり消滅する。

それに驚いたのか、蔦があっという間に引っ込み、しかし、ごろごろという音は大きくなる。

そして、その音がはっきりする頃には、その魔物の全貌が明らかになった。

が、それは二人をより困惑させるものであった。

形は球形で、頭頂にはへたの様なものがついており、下からは紐のように細長い蔦がこちらを覗うかのごとく、いくつも伸びている。

その表面は人の顔を模したかのようなに穴が開いており、表面は黄色と黒のまだら模様であった。

あまりに奇怪な見た目でありながら、二人とも全く見たことのない魔物であった。



「なんだあ?この魔物は。

変な触手が伸びてきたから、何かと思ったが、これはなんだ?岩かなにかか?」


「私も見たことがありませんが、おそらく植物かなにかの魔物ですかねえ……。

先輩あの魔物の元になるような植物に心当たりは?」


「……ねえな。

なら、こいつがここがダンジョン化した原因かもしれないな。

とりあえず、あの伸びる触手には気をつけろよ。」



ロースはそう言いつつも剣を件の魔物、彼らは知らないが《カイス》に剣を向けて、警戒を怠ってはいなかった。


そして、両者がにらみ合うこと数刻、先に動いたのは魔物の方であった。

《カイス》がその身から二本の蔦を伸ばし、それを左右から挟み込むかのようにロースに向かって伸ばした。

が、しかし、ここはロースの方が一枚上手であった。



「そんな大ぶりな攻撃、当たるかよ。」



ロースはしゃがんでその攻撃をかわすと、その隙に《カイス》の方へと攻め寄る。

攻撃が外れたことを悟ったカイスがさらに数本の蔦を伸ばす、ロースの方へと攻撃を仕掛けようとするも、ロースの素早い攻撃によりすべて切り払われてしまった。



「これで終いだ!」



そう言って、ロースが《カイス》の本体目の前まで近づき、その身に向かって剣を振り下ろす。

そして、ロースの剣先が《カイス》のまだら模様の球体の体に入り込んだことのより、ロースの心に隙が生まれた。

その時の事であった。



―――――ギャピャピャ!!


「なっ、こいつ悪あがきを!


――ぶあっ!」



その瞬間、剣を切りこまれながらも《カイス》の顔を模した穴の《口》にあたる部分から、赤色の液体を、ロースの顔に向かって吹きかけた。

もちろん力の限り剣を振り下ろしているロースはその一撃をかわすことができず、顔面にその液体を受け止めてしまった。



「せっ先輩!

大丈夫ですか?」



切りつけられたことにより浄化されている《カイス》と、今顔に液体を受けたことにより顔の液体を腕で拭っているロースの方へとピイは駆け寄った。



「っ畜生!目に変な液体が入った!

ってうわ。なんだこの液体!少しべたべたする上にすっげえ甘ったるい。」


「うわあ、確かに何やら先輩からすっごい甘い臭いがしますよ……。

って先輩、その液体舐めないで下さいよ。

どんな毒が含まれているかわかったもんじゃありません。」


「そんなことはわかっているから安心しろ。

あ、すまんがタオルか手ぬぐいを持っていたら貸してくれないか?

俺のタオルはさっきスライム切った剣を拭いたから、布地に『酸』が付いちまって顔が拭けないんだ。」



その言葉を聞き、ピイは心配そうにロースを見つめながらカバンを探る。

しばらくすると、ロースが服の袖で顔をある程度吹くことができ、腕がべとべとになってはいるものの、眼を開けるようにはなった。

しかし、それでもピイは以前鞄をあさっており、ロースが少しロースが不審に思ったところ、ピイはすまなそうな顔をしながらロースの方へ向き直っていった。



「すいません、先輩。

私のタオルは今朝、宿屋に預けちゃってます。」


「げっ、マジかよ。

このわけわからん赤い液体に濡れたまま、探索を続けなきゃならんわけか……。」


「ああ、すいません先輩。

けど大丈夫、私の《洗浄》の呪文を使えば……ってあれ、この音は?」



ピイがロースに呪文を唱えようとすると二人の耳に、今度はバサバサという羽音が聞こえてきた。

これには二人とも心当たりがある、この音は先ほども戦った《蝙蝠》の魔物の羽音である。そうわかるや否や、ロースはさっきまで地面に転っていた剣を拾い、ピイもロースへの呪文の詠唱を止める。



「この羽音は、《蝙蝠》の魔物か。

しかし、これは……」


「先輩、なんか嫌な予感がするんですけど……。」


「奇遇だな。俺もだ。」



しばらくすると、その音は次第に大きくなり、その数も増えているように思える、その上、かさかさと何か這いずる音まで追加された。

その音を聞き、二人は自分たちが今どんな状況におかれているのか、理解ができそして即座に行動する。



「おい!走るぞ!」


「はい、先輩!」



ロースは腰にある鞘に剣を戻し、ピイの手をつかみ一目散に音のする方向とは逆に走り始める。

ピイもロースの手をしっかりつかみ、(うっすら頬を赤らめながら)後れを取らないように走る。

しかし、しばらく走ってもその音は一向に小さくならずむしろ大きくなっているのに気が付き、一瞬後ろを振り返る。

が、彼女は自分が後ろを振り返ってしまったことを後悔した。

そこに見える光景は、彼女の予想通りでありながら、同時にはずれてほしい光景であった。



「せんぱ~い!

う、後ろに見たこともない数の魔物たちがぁ!」


「ったく、やっぱり予想通りかよ!

とにかく、今は振り切るぞ!せめて戦闘に有利そうな場所くらいまでは。」


「あの数を一気には無茶ですよお……」



彼らの背後には多数の《蝙蝠》と《鼠》の魔物の群れがいた。

その数は優に二桁を超えているように思え、一匹一匹はあっさり倒せるとしても、あれだけの数に一斉に襲われれば、どうなるかわかったものではないだろう。

そして、さらにたちが悪いことに走っているとどこから来たのか、わき道から合流したのか、その群れの魔物の数が増えているように思える。

……この時、正面からも魔物が現れ、挟み撃ちされていないのは運が良かったと言えるだろう。

そして、二人の足に疲労がたまり、速度が落ちてきたときに、ロースの眼にそれが映った。

それを見たロースは叫ぶ。



「おい、この先に扉が見えた。

そこに飛び込むぞ!」


「って、先輩どんな罠があるかもわかんないのに!」


「そんなこと言っている場合か!

止まったら嬲り殺されるぞ!」


「うう、わかりましたよ~。

せめて、嫁に行ってから死にたかった~!」



そんなことを言いながら、ロースが勢い良く扉を開けると、二人はその《部屋》に飛び込む。

しかし、彼らの予想に反し部屋や扉に何か罠が仕掛けられているわけではなく、あっさりと部屋にはいることができ、何かが起こるその前に二人は扉を閉め、そのまま扉を抑える。

そのすぐあと、扉の向こうから大量の揺れが感じられ、何かが大量に扉にぶつかったのが分かる。

その後しばらく、扉の向こうから大量の羽音とカリカリと扉をひっかく音がしたが、それも数分後には止み、部屋に静寂が訪れた。

音がやんだのを確認し、自分たちがあの魔物の群れから逃れたの危機が付くと、二人とも地面に座りこみ、安堵の息を吐いた。

そして、初めに口を開けたのはピイだった。



「はあ~、死ぬかと思いました。

正直、ここまでのピンチが来るとは思ってもみませんでしたよ。」


「……そうだなあ。

けど、そのおかげで、さっきのあれの意味がわかったな。」


「あれというと?」


「あの丸い化け物が吐いた液体のことだ。

今俺の頭にかかってるやつ。

これは、おそらくだが魔物を集める効果があると思われる。」


「通常、魔物が吐く液体と言えば、腐食性の酸や体をむしばむ猛毒と相場が決まっているもんですが……。

あんな魔物見たことも聞いたこともありませんよ。

おそらく、あれがこのダンジョンの固有種と言われる魔物だと思いますよ。」


「よかった。

ということは、こんな魔物が世界中にうろちょろしているわけじゃないんだな

ちょっと安心した。」


「……何言っているんですか先輩。

おそらくあれがこのダンジョンの周りから動物がいなくなっている原因ですよ。

先輩がダンジョンから村への被害を少なくすることが目的なら、あの魔物も攻略は必須課題ですよ。」



二人は壁に背を持たれかけながら、会話を続ける。

ロースは息を整えながら、部屋の様子を観察する。

どうやら部屋の中に自分達以外の生き物はい無いようで、しいて言うなら部屋の中央に少し大きな台座とその上には両手に剣と盾を持った鎧の石像が見える。

その石像は今にも動き出しそうではあるものの、今の所動く気配は見えない。

部屋の壁にいくつかの斧や槍のような武器が見え、一瞬お宝かと思ったが、どれも石でできているようだ。

自分たちが入ってきた扉がある壁とは反対の側の壁にはもう一枚の扉が見える。

ピイは息を整えつつ、周りの魔力を肌で感じ、あることに気が付く。



「げ、先輩。

ここの《魔素》、さっきの通路とは比べ物にならないほど濃いです。

ここに長時間いるとあっという間に体を壊しますよ。」



ピイの言葉を聞き、ロースは深く息をつきながら彼女の言葉に反応する。

今回の探索でこのダンジョンについてある程度からくりが分かってきたし、この部屋の先などいろいろ時になることもあるが、ここが引き際のように彼は間いた。

これらの情報を村に持って帰れば何か村の話し合いに役立つであろう。

まあ、彼としてはこのダンジョンに、わざわざダンジョンの外の出て、集団で計画的に人の村を狙って襲うとされる、『オーク』や『ゴブリン』といった魔物がいないとわかっただけでも大きな収穫であった。

これなら、ダンジョンの周りに『傭兵』でも雇って見張らせれば、しばらくは大丈夫かもしれない。

まあ、ダンジョンは『徐々に巨大化』する物らしいのでこの策は一時しのぎにしかならないこと。

この村は自分が仕送りしているとはいえ、警備を雇うほどの金がないという2つの大きな問題があるが。



「と、なるとよくもわるくもここが引き時だな。

まあ、大体のこのダンジョンのからくりが分かっただけでも良しとするか……。

ならここを出る前に、何らかの方法でこの液体を取らなきゃいけないみたいだなあ。

幸い、この部屋には魔物らしきものがいないようだが……

なにか布みたいな、体を拭くものでもあれば最高なんだが。」



ロースが部屋を見渡すが、部屋にそのような者があるようには見えなかった。

この液体が体から取れなければ、この部屋を出たとしてもまた



「あ、先輩。

それなら、さっきはごたごたがあってできませんでしたが、私が《洗浄》の呪文を唱えてあげますよ。

この呪文を使えば、体についた汚れや先輩のやけに強い体臭、特にそれに魔物からつけられた返り血や汚れなんかは一発ですよ。」


「おい、臭いは余計だこの馬鹿野郎。

まあ、とりあえずそれをお願いできるか?」


「いいですよお。

あと、何も一言も先輩が臭いなんて言ってませんよ!ちょっと匂いが強烈なだけですよ」


「同じじゃボケ。」



そんな言い合いが一段落し、ピイは腰に下げていた薬瓶の一つを取り出す。

薬瓶ほどの大きさのそれを開けると、その中身をロースの顔に振り掛ける。

そして、中から透明の液体がロースの顔の全面に降りかかる。



「ん?なんだこの液体は?

水か?」


「あ、先輩動かないで。

液体が均等に掛んないでしょう。」



ピイがロースに注意を促し、それに従い彼は動きをいったん止める。

そして、瓶の中の液体が尽きると、ピイはその薬瓶を腰へと戻し、ロースの頭の上に手を乗せようとする。

が届かない。



「……先輩、しゃがんで目をつぶってください。」


「おう、注文が多いな。」



そして、ロースがしゃがんだのを確認しピイはロースの頭の上に手を乗っける。

そのままピイも目をつぶり、その口から詠唱を始める。

ピイの体から光が発せられ、その光はそのままロースの体にまとわりつく液体、そして全身へと伝わる。



「―――――その身を清めよ!《洗浄》」



ピイの呪文が唱え終えるとともに、ロースの体の光が強く瞬き、ロースの体に纏っていた水が消え、そして、それと共に《カイス》にかけられた赤い液体、そして、洞窟内を歩くことによって全身についていた汚れも消えていた。



「先輩、眼を開けていいですよ!」


「おお、もうできたか。

お、確かに体の汚れが……あ!あぶねえ!!」



眼を開けると同時に、ロースはピイを真横に突き飛ばした。

ロースの突然の行動に、ピイは全く反応できずそのまま真横に突き飛ばされる。

ピイは一応は戦闘訓練も受けているためかろうじて受け身は取れたものの、その肉体の差は大きい、ロースに押されたわき腹が痛む。



「いった~、先輩何を……!

って、え!」



ピイの目に映ったのは、先ほどまで自分がいた場所にいる、台座の上で全く静止したはずの石像とその石像からの石剣の斬撃を剣で受け止めているロースであった。



「どうやらあのどう見ても怪しいこの《石像》、やっぱり魔物みたいだったな。」


「だ、大丈夫ですか先輩!」


「わからん。とりあえず、力はかなりあるみたいだ。

いったん下がっててくれ!」


「は、はい!」



ピイが後ろにさがりはじめると当時に、ロースと『石像』の勝負が始まった。

ロースはその手に持つ両手剣で『石像』に攻撃し、体をまとう軽鎧で、祖相手の攻撃をはじく。

『石像』は目の前にいるロースを打倒さんとその手に持つ石剣を使いロースの体を切り付け、その手に持つ盾でロースの剣戟を防ぐ。

しばらく、二人の一進一退の攻防が続いていたが、次第に力関係は崩れてきた。

徐々にだが、ピイは『石像』の剣戟に押され、後ろに後退し、その体にもいくつかの切り傷ができていた。



「(こいつ……強い!

こいつの剣技は本物だし、早い。

なにより、体はまさしく《石》より固いのがきつい!

救いは、こいつの武器も《石》でできているおかげか、一撃の鋭さがない所か。)」



ロースが今切り合っている《石像》はロースが今まで戦った魔物の中で、間違いなく5指、いや、『オーガ』の次に強いという意味では、2番目に強い相手であった。

もし、今目の前の魔物がただの《石》の固さをしている魔物であれば、ロースは今頃こいつを倒せているだろう。

ロースの剣は、自慢ではないが、会心の一撃が決まれば、石の固さをしているモノであろうと砕ける自信がある。

しかし、石像、剣技と盾捌きが絶妙にうまく、ロースの剣がきれいに当らないように『石像』にとって致命打にはならないよう、盾で逸らしてくる。

その上、この石像自体の筋力や速さは『ロース』より上であり、せめてもの救いは、相手の武器が《石》性なので軽く切りつけられた程度では、致命打にならないところであろう。



「先輩援護します、右によけて!

いけ!《魔法の矢》!」



ピイの言葉に一瞬で反応したロースがその身を横に移動させる。

ロースが『石像』と接戦をしていた間に、ピイはせめてもの援護と呪文の詠唱をしていたのだ。

そして、そのロースが躱した後ろからまるで急に表れたかのように『石像』に向かって、拳大の光弾、《魔法の矢》が『石像』に向かう。

《魔法の矢》は低位とは言え魔法、その威力は本物の矢とは段違いであり、魔物の種類によっては《魔法》に弱いなどもいる、よってピイは一撃が『石像』にとって致命打となると思ったのだが……。



「いやいやいや、何であの『石像』、平然としているんですか!

この手の敵は魔法に弱いってのが定石じゃないですか!」


「……いや、効いてないわけじゃないようだ。

よく見ろ、アイツの持っていたはずの盾がぶっ壊れている。」



《魔法の矢》を盾で防いだ石像はその攻撃をその手に持つ石の盾で防いだようだ。

その代わり、先ほどまで持っていた盾が壊れ、今その石像が持っているのは剣一本という事になる。

その一撃が効いたのか、『石像』はピイの方を向き、その手に持つ剣を大きく振り上げた。



「……!

躱せ、ピイ!」



ロースが声をかけるのとほぼ同時に、その『石像』は手に持っていた剣をピイに向かって投げつけた。

その軌道は、適当に投げたわけではなく、真っ直ぐきれいにピイの方へと向かっていた。



「おおっと、そう簡単には当たりませんよ。」



しかし、ピイはその一撃を予期していたようで、あっさりとそれをかわす。

壁に当たった剣が、砕けて破片となり石つぶてが飛ぶが、それすら綺麗に躱した。



「よし、よくやったピイ!

これでアイツは丸腰……て」



ロースは『石像』が武器を失った今が好機と切りかかりに行ったが石像の手が一瞬浅黒く輝いたかと思うと、その手には先程とは違う武器、巨大な石ツルハシが握られていた。



「先輩!どうやらこいつ、この部屋内にある武器なら、すぐさま手元に呼びよせられるようです。」


「くそ、部屋中にある石の武器はそういう事か!」



そして、再び、ロースと『石像』の接近戦が始まる。

しかし、先ほどと違う武器を操る『石像』の動きに翻弄され、ロースは戦いにくさを感じていた。

その上、今の武器は先ほどの《石剣》とは違い、巨大な石のツルハシ、当たれば石性とは言え致命打になりうるのだ。

正直今の状況はかなりやばい。

このまま戦っていけば、消耗戦となり、間違いなく《魔素》が満ちているこの部屋では自分たちの方が分が悪い

魔法での援護も詠唱に時間がかかるし、間違いなく又手に持つ武器で防がれてしまう。

下手したら再びピイに武器投げをされてしまうだけに終わるかもしれない。

ロースがそう頭を悩ませていると、ピイの声が聞こえる。



「先輩!私が今から、とっておきの魔法を使います!

ちょっと時間がかかりますが、時間稼ぎお願いします。」


「……そうか!まかせとけ!」



ピイが何か策があるらしい、彼女は今回わざわざ自分のわがままでここまで突き合わせてしまった上、彼女の策は大抵信のおけるものだ。

そう、ロースがそう判断すると目の前の『石像』の集中力を咲く。

『石像』も一瞬、ピイの方を向いたが、すぐにロースへとその手に持つツルハシを振り下げた。

《石像》と戦うロースは考える、どうやれば、この『石像』から時間を稼げるか。

そして、ロースの頭にも一つの策が思い浮かぶ。

これが成功すれば、今の様な薄氷の上を歩くような接近戦から逃れられるだろうし、時間も稼げるという一石二鳥だ、やる価値はある。


そう決めると、ロースは先ほどよりもさらに『石像』に近づき戦闘を続ける。

一瞬、巨大な武器を使っている相手であるのでもしかしたら今のように密着してしまえば、相手は手も足も出なくなるのではと思ったが、それほど甘くはないようだ。

《石像》はその手に持つツルハシの柄を使い、こちらの攻撃をきれいにいなしてきた。

それでも先程よりはだいぶ戦いやすくなったとロースは思いそのまま接近戦を続けるが、

それも長くは続かなかった。

元々速さと力は向こうの方が上、ロースが有利なのは武器の差ぐらいなのだ。

数合の切り合いの後、ロースはあっさり『石像』に押し出され、あっさりと距離をあけられてしまった。

しかし、今の間にロースの策の一段階は終わった。

ロースは『石像』から一歩後ろにさがり、剣を強く握りしめ直す。

後ろでは、ピイが何やら今まで聞いたことのない呪文を呟いている。

ピイがこいつにとどめを刺すなら、せめて自分も一回くらいかっこいいことしないとな。

そうロースが思案すると、その口から思わず声が漏れる。



「……おい、『石像』。

お前が俺の言葉を理解できるかどうかはわからんが、とりあえず言わせてもらうぞ。

ちょっと賭けに付き合ってもらうぞ!」



ロースはそういうと、姿勢を低くして一気に『石像』へと近づく。

『石像』もそのロースの動きに合わせてその手に持つ巨大なツルハシを振り下ろす。

しかし、姿勢を低くしていたおかげか、ロースが相手の攻撃になれたためか、その一撃をかわすことに成功。

そして、次はこちらの番だとばかりに、接近に成功したロースが、その手に持つ剣を大きく振り上げる。

しかし、反応の良さはピカイチな『石像』はその攻撃をあっさりとツルハシの柄で防ごうとする。



「それを待っていた!」



その言葉と共に、より一層の力を込めて剣をふるう。

初めから、彼の狙いは『石像』の持つツルハシ、さらに言えば、先ほどから集中的に狙っていたツルハシの柄の《一点》。

そここそが先程から、『石像』が無意識にロースの攻撃をずっと防いだところであり、そこはすでに今までのロースの攻撃により、小さな切れ目が入っていた。



「―――いっけえええええ。」



ロースの一撃によって、石像の持つツルハシが柄から真っ二つになる。

そのまま、『石像』ごと切り抜かんとするが、『石像』も自分の武器が壊されたことに気づき、後ろに向かって飛ぶ。

しかし、それでも少し遅かったのだろう、ロースの剣が石像の殻がの表面を切りさき、薄くではあるものの『石像』も身、いや皮を切りさいた。

どうやら、致命打にはならなかったのだろう、『石像』はいまだ健在であり、その手がうっすらと光る。



「させねえ!」



ロースはそういうと、『石像』に近づき、『石像』が武器を呼び寄せるのを止めようとする。

しかし、『石像』もここでやられるほど甘くない。

ロースが近づくのに合わせ、今度は石像の方からこちらに向かって突っ込み、そのまま素手で『石像』が殴りかかってくる。



「って、おお!

ぐえっ!」



『石像』の予想外の行動により、ボディ―をもらってしまい、吹っ飛ぶロース。



「いてて、やっぱりこれでやれるほど甘い相手じゃねえか。

けど、一撃いれてやったぞ。」



ロースは姿勢を崩してしまったが、すぐに立ち上がり、石像の方を向く。

そこにいた『石像』は腰を低く落し、その拳をこちらに向かって構えている。

どうやらこの石像、徒手術でも十分戦えるらしい。

その胸には先程ロースが付けた《傷跡》があり、そのから少し『浄化』されたのか、黒い靄が漏れているのが分かる。



「先輩!ナイスアシストです!

行きます!《吸収》!」



呪文を唱え終わったのか、ロースの後ろ側にいたピイがその手から透明な魔力でできた弾が飛び出す。

うっすらと白いその魔力球の中央には先程ピイが手に入れた《魔石》があるのが分かる。

それに気づいた『石像』はその一撃をかわそうと、右によける。



「残念!それは追尾性だ。」



その魔力球はその石像の動きに合わせ、その軌道を変える。

そのまま、その石像が守る間もなく、その球体が先程ロースが付けた『石像』の《傷跡》の着弾する。

するとその《球体》は『石像』から《魔素》を奪うかのようにその身が真っ黒になり大きさも膨れ上がった。

逆に『石像』は球体が膨らむごとにその動きが鈍くなっていった。

最終的に石像は、ぱったりと動きを止め、球体の方も、一定以上膨らむと、風船が割れるかのようにはじけ、そこから、先ほどよりもかなり大きくなり、色もよりどす黒くなっている《魔石》が転げ落ちた。

そのまま動かなくなった『石像』はゆっくりとその身を崩し、『浄化』を始めた。



「ぷはあー!

疲れましたよセンパ~イ!」


「ああ、お疲れ様。」



『石像』を倒したことを確認した二人はその身の力を抜く。

正直、この敵は下手をしたら殺されていたかもしれない。

それほどの実力の敵であった。



「あ~、部屋に入った時、真っ先にあれを壊せば……。」


「言うな、それを。

それよりさっきの魔法はなんだ?今まであんな魔法見たことないぞ?」


「ああ、あれは最近『魔術団』の研究の一つですよ。

違法魔導師や魔導生物を捕まえるために作った魔法で、相手の魔力や《魔素》を奪う魔法です。

まあ、実は武器を呼び寄せる魔法が使えなくなれば位に思ってやりましたが、まさかこれで倒せるとは。

魔石を使う分、燃費はよろしくありませんが思ったより使えるんですねえ、この魔法。」



そう二人が雑談している間に、『石像』の浄化が終わったのだろう。

そこのは、先ほどの『石像』に比べ、一回り小さい鎧が、そして、先ほどピイの魔術で放ち、魔素を吸収したことにより、一回り大きくなった《魔石》がそこに残っていた。

ロースはそこに近づき、それらを観察する。



「なんだ、この『全身鎧』は?

これじゃあサイズが小さくて子供しか着れないぞ

しかも、石でできているからこれは実戦じゃあ使えないだろう。」



ロースはそう言いながら渋い顔でそれを見つめる。

実はロース、今回少し期待していたことがあった。

魔物を倒すと浄化されるのは知っての通りであるが、特に今回のような強い魔物であれば、時折、珍しい物へと浄化される場合があるのだ。

例えば、相手が剣の魔物の場合、名刀へと浄化される場合があるらしいし、亀の魔物の場合、防具もなる固い甲羅が手に入ると言った具合だ。

ロースはもしかして、こいつを倒せば、何かしら強い武器、そうでなくても村の護衛を雇えるくらいの金になる何かが出ればと思ったのだが。

ロースはそう落胆し、目の前にあるどう見ても役に立たない『鎧』を見て、溜息を吐く。


しかし、それとは対照的なのはピイであった。

ピイはその鎧を真剣な顔で見つめ、そして、ロースへと話しかけった。



「先輩ちょっといいですか?」


「ん?なんだ?」



ロースは軽い気持ちでピイの顔を見たが、その顔が真剣だという事に気が付き、この鎧がただの鎧ではないことを察した。



「それを使えば、もしかしたら、このダンジョンの警戒や村の護衛の件、なんとかなるかもしれません。」


「な、それはほんとうか!」



その言葉にピイはうなずき、それを肯定したのであった。


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