甘くて儚い花曇り
桃園 蓬黄
愛と独占欲
緊急事態宣言により休校となった高校生活二年目の年。僕は二ヶ月も好きな人に会えなかった。
僕の好きな人は僕の嫌いな男の彼女だ。妬んでいるわけではなく、小学校の頃からそいつとは仲が悪かった。小学校入学二日目に喧嘩と言ってはあまりに幼稚な取っ組み合いをしたほど、彼と僕は噛み合いが悪かった。
彼氏がいる人を好きになるなって?
そう言われても、僕が彼女のことを好きになったのは八年前のことで、男と彼女が付き合い始めたのが昨年の二月のことだ。折り合いをつけようにも、彼女を眺めていた時間に比べて数ヶ月という期間はあまりに短すぎた。最低限、僕の中では。
春、桜並木が綺麗で、高校の近くに住んでいた僕は、勉強の合間に桜並木を眺めたりした。
八年間片想いをしているはずなのに、桜を見ると、何故かその恋心は薄れていった。
桜の花は一度散ったら、元に戻ることは二度とないという。初恋は実らないという。高校一年時に付き合っていたカップルの十組に一組は最終的に結ばれるという。
そんな事実が鼻炎の僕を鼻炎よりも苦しませた。
そもそも、ぼくが勉強を始めたのは彼女の影響だ。彼女は優秀だった。スポーツも勉強も、性格も、容姿も、全てが高水準でまとまっている高嶺の花のような人だ。
買い被りではない。彼女は県内屈指の進学校でもそれなりに上位の成績を維持しているし、部活でも県内ではそれなりの順位にいる。
彼女のいわゆるステータスという面に惹かれた自分ももしかしたらいるのかもしれない。ただ、そういう余計なものが見えてくるよりもずっと前から彼女のことは好きだった。
梅雨になり、気分が落ち込むような天気が続いた。けれど、僕は顔を上げて高校に向かった。
最近、彼女はとても楽しそうだ。それをみていたら、自分の傲慢さに気がついた。
自分ではなくても、自分よりも、あの人のことを幸せにしてくれる人間がいるのなら、それはそれで良い気がした。
僕が求めていたのは、彼女の幸せな笑顔なんだと、初めて気がついた。
高校生活はもう終わりを迎えようとしている。だからもう少しでいい。
もう少しでいいから、あの子の顔を私に見せて欲しい。
この恋と呼んでいいのかすらわからない、ほんのりと甘い幸福感を僕に分けて欲しい。
昔、彼女と同じ高校に行こうと思って勉強をしていた僕の努力はこうして報われれば良い。
少しだけ折れ曲がった僕の中指のように、僕の恋愛観は少し曲がっているんだろう。
甘くて儚い花曇り 桃園 蓬黄 @N4Luto
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