番外編2 編集後記(初稿)

 編集後記(初稿)


 先生や他の図書委員のお力添えもあり、今年も図書館報を発行できる運びとなりました。この館報を通して今年の図書委員会はどのような活動をしていたのかを知ってもらえたり、図書委員によるオススメ本の紹介で今後の読書の糧にしていただければ幸いです。


 私が言いたいことは本当に上記に尽きるのですが、館報執筆の大変さについて少し書こうと思います。この図書館報はこの編集後記を含め、私一人で多くの記事を書きました。それを聞いた方は作業量の多さに驚くかもしれませんが、それ自体は厳しいものではないと私は思います。なぜなら歴代の委員長はそれを遂行すいこうし、今回で三十七号という長い歴史を途切れさせることなく、継承してきたのですから。

 しかし全く大変でなかったといえば嘘になります。特に私は終わった頃には文字でびっしり埋まっているであろう、この編集後記を書くのに苦労をしました。


 編集後記。人によっては書いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。新聞の最後に記者、もしくは編集者の言葉を載せる欄らんです。簡単にいえば、この欄のことです。あくまでこの執筆・編集作業を通じて、編集者自身がどう思ったかを書くのが一般的で、各記事のような客観的な文章ではなく、主観的な内容が大部分を占めます。


 正直普通の記事と編集後記を比べるなら、普通の記事の方が分量が圧倒的に多いので、大変そうだと思いませんか? しかし私は編集後記の方が大変でした。なぜなら本当は読書も本も好きじゃないし、苦手であることに書いていて、気づいてしまったからです。


 私は今限定なら、それなりに読書をするタイプです。だいたい高校に入ってからは二百五十冊以上読んだでしょうか。言っておきますが、これは一切自慢ではありません。過去の後悔によるただの収斂進化の結果です。つまり読書離れが叫ばれて久しいですが、それに違わず高校入学前はあまり本を読むような人間ではなかったということです。


 それでも読書をするようになったのには、環境とそこにいた先生の影響があります。逆に言えばそうでしかありません。私の読書欲は自ら湧いて出たものではなく、他人に煽られてやっと生まれてきたもの。

 そのため本来読書家が備え持ってそうなイメージのある深い見識だったり、知識欲が強そうというような性質は全くもって存在しません。

 所詮仮初でしかなかったということが今回の館報執筆で思い知らされました。この編集後記を読んでくださっている方がどのくらい時間をかけて、読んでいるかは分かりませんが、少なくともその数十倍は執筆時間をかけています。


 それは仮初めの読書家の私ではそれなりの苦行でした。まず語彙力がないせいで、頭のイメージを上手く表現できない。凄い文筆家ならイメージと表現がぴったり重なるのでしょうが、語彙力タンクに言葉がびっしり詰まっていない私はどの表現にも、軽く違和感を覚えてしまいます。結局伝えたいこととは遠く離れていってしまう。


 次に構成力に問題がある。読書家ならば自然に話の流れを掴めそうなものですが、生憎私にそんな能力は持ち合わせていません。一文一文を書いていくだけで精一杯です。編集後記を読んでいる方の中には、この文章がどこか散文的でちぐはぐ感じた方もいるのではないでしょうか。それは多分間違っていないと思います。


 しかし私の場合、本を読まなければ、これは一生日の目を見ることのない「気づき」だと思います。読書をしていたからこそ、その大変さを頭の中で言語化できた。知覚できた。そしてもし一度気づいてしまったら、それは既に不可逆であり、気づかなければ良かったなど後悔する暇もなく、少し前の自分とは違う生き物になってしまっている。

 もちろん気づかなければ幸せな世界もあったでしょうし、少なくともいたずらに複雑な気分になることはなかったかもしれません。敏感に世界の形を察知するのは悪いことだとは思いませんが、ある程度の鈍感さがなくては、世知辛い世の中を上手く生きることも難しいでしょうし。

 けれど気づいてしまう、気づかされてしまう。本には表裏一体のメリットデメリットがあると思います。


 何が言いたいかというと、なんだかんだいつまでも無知のままではいられないということです。人は鋭敏に状況を察知し、変質していく。生きているなら、当たり前のことです。

 そのために本というのはいいツールだと思います。他人と意見を交わさずとも、その場に行かなくとも、経験を積むことができる。読書の時間がないという悩みはよく語られますが、むしろこんなに手軽に経験を得られるものは他にないと個人的に思いますよ。


 正直な話、別に本じゃなくても、自分にとって変われる触媒があるならそれでいいと思います。スポーツでも音楽でも何でも。ただまだ知らないことがたくさんあると自覚していて、これから「気づき」を手に入れたいという人には、私としては本をオススメしたいということです。


 これ幸い、この館報の四面には編集後記の他に図書委員のオオスメ本が載っています。それを読んで、少しでも「気づき」を手に入れることができたならば、図書委員の努力の甲斐があるというものです。


 最後に『図書館報』の発刊にあたり、アドバイスをくださった先生方、記事執筆やその手伝いをしてくれた図書委員の皆、その他この館報に関わった全ての方に厚く御礼申し上げます。






              図書館報第三十七号編集長 岸辺きしべ 涼りょう

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