第4話 愛し合う為に出会えたのなら

私は今、この魂の記憶を元に小説を書いている。

時に文字を綴りながら思う事がある。

愛というのは罪なのか?

人を愛する事が罪ならば、皆、罪人として生きている事となる。

でも、愛は罪ではない。

たとえ許されない恋でも、誰かを好きになってしまう。

その想いは強く心を縛り付ける。

だからこそ、吐き出す場所が必要だと思って、私は小説という物を書くことにした。




【いつも、あなたを想っています。

けど、この想いはあなたへ伝える事が出来ません。

あなたの背中を見つめるだけ、私にはそれしか出来ない。

顔を見つめてしまうと、その瞳に吸い寄せられてしまうし、とても恥ずかしくなってしまう。

あぁ、それでも、私はあなたに触れたいし、私にも触れて欲しい。

この願いは届かないけど、もしも届くなら、ずっと抱きしめていて欲しい。

あなたのぬくもりを感じていたい。

あぁ、神様。

時間の神様がいらっしゃるなら、幸せな時間がどうか、永遠に続きますように、あの人の姿を見つめることしか出来ないけど、この細やかな幸せが、ずっと続きますように。

私の願いが、少しだけでも叶いますように。】




現実、その願いは届かなかった。

人の人生には終わりが必ず来る事になっている。

美しい自然、人々の笑顔。

それが消えた時、人はなぜこんなにも悲しむのだろう。

彼が亡くなった時、私はなにも出来なかった。

愛しい人が亡くなるとは思いたくなかった。

彼の死に顔はとても安らかだったけれど、私の心は重い気持ちでいっぱいだった。

どんなに涙を流しても、姿を探しても、彼はもうどこにも居なかった。

傍にいられるだけで良かったのに、声を聞けるだけで、見つめられるだけで良かったのに。

それすら出来なくなってしまった。

愛する人を失った悲しみ、それを世間は残酷に、乗り越えるしかないと私に囁いた。

私にはそれが、悪魔の囁きに聞こえていた。

“なんて残酷な事を言うのだろう、私の気持ちなんて誰も知りもしないのに。

あぁ、人生やり直せるなら、あなたの存在を知らない世界で生きたい、そうすればこんな気持ちを知らずに生きられたのに”と、前世の私は思っていた。

けど、彼の存在を消すことは叶わなかった。

私の心の中に、彼への思いや生前の姿がハッキリと焼き付いている。

それが魂に刻まれたまま、私は再び生まれてきた。

今は、それなりに幸せな生活が出来ている。

けど、いつかまた、夫と永遠の別れが来てしまう。

どちらが先に天へ旅立つか分からないけど、それまでに一杯、夫を愛して、ぬくもりを感じて、前世で果たせなかった想いを、今度こそちゃんと果たさなきゃ、その為に生まれ変わっても、また再び出会えて、今度はちゃんと、恋人になって夫婦になったのだから。

悲しい悲恋ではなく、今度はハッピーエンドで終わらせなきゃ。

私達夫婦は、そのために縁で結ばれているのだから。



終わり




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前世の君と今世のあなたと愛の迷宮 まるみ @marumi-tama

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