幽霊を信じるって素敵じゃないですか?
僕を悩ませる君。どうして君だけの本心を読み取れないのか気になって仕方がない。
クラス座席、教卓から見て窓側の一番後ろ。教室の隅に座っている僕に対して、君は一つ右斜め前に座る。そのせいで授業中は黒板を見ていても君が目に入るとつい考え込んでしまう。
そうして、小さな独り言と溜息を一日に何回も繰り返している。
問題はない。僕の席の隣はクラスの人数的な理由で空席になっているから。だから小声で呟くくらいには誰にも聞こえないんだ。
そう思っていた。
授業4時限目が終わった昼休みのことだ。
母親に作ってもらった弁当をひらくと、特に特別な弁当でもなければ、見た目の悪い弁当でもなく、至って普通の弁当。そんな毎日見る弁当になにを思うこともなく「頂きます」と口にする。
美味しそうなお米を口に入れて噛み始める。まだ米粒の形状が残っているがそれを喉に通す。
その瞬間だった。
「ねぇー!」
ダッダン。
「ゔぅ?!」
死角から突然現れた人影、その勢いにお米が喉に詰まる。
「あ、大丈夫?」
なんとか、詰まった物を通してから人影の正体である顔を見ると、目の前では一応は心配そうな表情でこちらを見ている君の存在があった。
君とは月乃光のことだ。
君と言う呼び方にも特に特別な意味とかはない。
「あ!そんなことよりさぁ!」
「え、そんなこと?」
こいつ全然心配してないんだ。
ダンッ。と僕の弁当が乗っている机に両手を強くついた。ガシャっと弁当が一瞬跳ねる。
僕も一緒になって、ビクッと身体を反応させてしまう。
「幽霊を ‘’信じる,, って素敵なことだと思わない?」
人を殺めそうになった奴が、次には意味のわからないことを言い出した。そんな発言を無視して、お米をまた一口入れ、噛みながら細目で君の顔をじっと見た。
この時も、やっぱり君の本心は見えない。
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