ある日のふたりの1ページ
@somaru168
第1話
今年の桜は早咲きだった。アスファルトの花びらを踏みながら校門へと歩く。余裕を持って1本早いバスに乗った甲斐あって、歩く生徒はまばらだ。
「サクラだ〜おはよー」
後ろから声がしたと思ったら、1人の女の子が軽やかに自転車から降りて真横に立った。シュタッと音を立てる靴、揺れるポニーテール。
「久しぶりだねぇ。元気してた?」
明るく弾む動きとは裏腹に、のんびりとした口調で話す彼女はサクラの幼馴染だ。
「久しぶりか。最後に会ったの、1年生の打ち上げだもんね。」
「そうそう〜。サクラ、きっと勉強だろうなぁと思って。あんまり遊べない分、今年こそ同じクラスが良いなぁ〜どうかな?」
どうだろうね。クラスって玄関に貼ってあるんだっけ。そう返しながら校門をくぐる。
ミツキのことは好きだ。でも、この幼なじみが私は少し怖い。誰もが認めるルックス、勉強もそこそこできる、それでいて親しみやすく誰にでも分け隔てなく接するミツキは、もちろん人気者だ。
そんなミツキの横にいると自分には何もないのだと気付かされるし、事実、不釣り合いだ。それでもミツキは私の横にやってくる。
「同じクラスだ!サクラ!」
玄関の掲示を見るなりサクラの両手を掴んでミツキは一回転する。
「ちょっ…待っ…!」
振り回されたサクラは、こけないようにミツキの周りをなんとか一周して顔を上げた。
「サクラ〜!!」
とびっきりの笑顔で抱きついてくるミツキの背中を、ぽんぽんと叩いてあやしながら言う。
「割と苦しいから放してほしいかもだ…」
解放された私はやれやれと溜息をついた。これはなかなか前途多難だ。どうなることやら。ちらりと校門を振り返ると、風が吹いて桜の花びらをぶわりと巻き上げた。
ある日のふたりの1ページ @somaru168
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