第14話『お昼寝』
午後1時過ぎ。
7人でのお昼ご飯が終わった。
ツルッと食べられるのもあり、最初に出されたそうめんは全て食べ、亮さんが追加で茹でてくれたそうめんも難なく食べることができた。俺も結構食べたので満足している。
後片付けも陽子さんと亮さんがしてくれることになり、俺達5人は氷織の部屋に戻る。
「そうめん美味しかったッス! お腹いっぱいッス」
「あたしも。愛莉ちゃんが食べさせてくれたから、いっぱい食べられたわ」
「そうだな。氷織も食べさせてくれたし。そうめん美味しかったな」
「美味しかったですね。私もいっぱい食べました」
氷織もそうめんを結構食べていたな。笑顔でモグモグと食べている姿は可愛くて。
「ふああっ……」
愛莉ちゃんの可愛いあくびが聞こえた。
愛莉ちゃんの方を見ると……愛莉ちゃんは眠たそうにしており、右手で両目を擦っていた。可愛いなぁ。
「愛莉ちゃん、眠いですか?」
「……うん。そうめんいっぱいたべたからかな……」
「お腹がいっぱいだと眠くなっちゃうことあるわよね。あたしもちょっと眠いわぁ……」
ふわああっ……と、火村さんはわざとらしくあくびをする。
ただ、お腹いっぱいだと眠くなっちゃうことがあるのは分かる。俺も弁当の量が多めの日は、昼休みの後の授業で眠くなってしまうから。
「ほいくえんでは、おひるごはんのあと、おひるねするじかんがあるの」
「そうなのね。あたしの通った保育園でもあったわ」
「あたしの通っていた保育園でもあったッス」
「私は幼稚園に通っていたからか、お昼寝の時間はありませんでしたね」
「氷織と同じだ。幼稚園だからかお昼寝はなかったな」
保育園ではお昼寝の時間があり、幼稚園ではそういった時間はないところが多いのだろうか。
「眠たそうにしていますし、お昼寝が習慣になっているそうですから、愛莉ちゃんはお昼寝しましょうか」
「……うん」
眠たそうにしながらも頷く愛莉ちゃん。それも可愛くて。
「あたしも愛莉ちゃんとお昼寝しようかしら。ちょっと眠いし。愛莉ちゃんと寝たいし」
「本音が出てるッスね」
「きょうこちゃんもいっしょだとうれしい。ほいくえんでは、おともだちといっしょにおひるねするから」
一緒に寝てくれる人がいると安心できるのだろう。それに、火村さんは愛莉ちゃんにとって大好きなお友達だから。
愛莉ちゃんの言葉を受けて、火村さんは愛莉ちゃんに優しく微笑みかける。
「一緒に寝ましょうね、愛莉ちゃん」
「……うん」
「では、お二人はベッドで寝てください」
「でも、それだと3人が相当静かに過ごさなきゃいけなくなると思うわ。昼寝するのがあたしだけなら、そんなに静かにしなくていいけど」
火村さんの言う通りだな。同じ部屋にいたら、2人を起こさないためにもかなり静かにしないといけないか。
「ねえ、氷織。もし大丈夫なら、七海ちゃんの部屋で寝てもいいかしら。そうすれば、3人はある程度普通に過ごせるし」
「なるほどです。七海から許可をもらえればかまいませんよ。メッセージで聞いてみましょう」
「お願いするわ」
氷織はローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取る。休憩になっていて、七海ちゃんとすぐに連絡がつくといいけど。
愛莉ちゃんと火村さんが七海ちゃんの部屋で寝るなら、俺達は氷織の部屋で普通に過ごせるか。それに、愛莉ちゃんは七海ちゃんのことが気に入っているから、七海ちゃんの部屋でお昼寝するのはいい案かもしれない。
「どうやら休憩中のようですね。すぐに既読になりました」
「良かったッス」
「……七海から返事が来ました。七海の部屋のベッドで寝てOKです」
「……良かったわぁ」
火村さん、結構嬉しそう。氷織ほどじゃないけど、七海ちゃんのことも気に入っているからなぁ。七海ちゃんのベッドで眠れるのが嬉しいのかも。もしかして、それを狙って七海ちゃんの部屋で寝るのを提案したのか? 火村さんならあり得る。
七海ちゃんからの許可が出たので、火村さんと愛莉ちゃんは七海ちゃんの部屋に行くことに。また、これからお昼寝をするため、2人はお手洗いを済ませた。
氷織は七海ちゃんの部屋のエアコンを点ける。火村さんと愛莉ちゃんが一緒に寝るため、氷織は自分のベッドにある枕を七海ちゃんの部屋に持っていった。これで、2人一緒に七海ちゃんのベッドで快適に寝られるな。
「愛莉ちゃん。先にベッドに入って。床側にはあたしが寝るから」
「うん、わかった」
愛莉ちゃんは先にベッドに入り、元々このベッドにある枕に頭を乗せる。
その後、火村さんがベッドに入り、氷織の部屋から持ってきた枕に頭を乗せた。氷織がいつも使っている枕に頭を乗せているからか、火村さんはとても幸せそう。
七海ちゃんは火村さんの方に体を向け、火村さんが着ているブラウスの袖をそっと掴む。こうすることで安心して眠れるのかも。
氷織はベッドの掛け布団を火村さんと愛莉ちゃんに掛ける。
「ななみちゃんのにおいがする」
「そうね。いい匂いね、愛莉ちゃん。七海ちゃんのベッドだから、七海ちゃんに包まれている感じがするわね」
「うんっ。きょうこちゃんのいいにおいもする。それにあたたかくてきもちいい」
「ふふっ、嬉しいわ。愛莉ちゃんもいい匂いがして、温かいわよ。愛莉ちゃんと一緒に、しかも氷織の枕で眠れるなんて。幸せすぎて永遠に眠ってしまいそう……」
うふふふふっ、とちょっと厭らしさも感じられる声で火村さんは笑う。そのことに氷織と葉月さんは楽しそうに笑っていて。永眠はさすがにないだろうけど、かなりぐっすりと眠れるんじゃないだろうか。愛莉ちゃんよりも寝そうな気がする。
「ベッドがきもちいいから、もっとねむくなってきた」
「ふふっ。それはいいことよ、愛莉ちゃん」
「……おやすみ、きょうこちゃん、みんな……」
愛莉ちゃんはそう言うと、ゆっくりと目を瞑る。そこから程なくして、可愛らしい寝息を立て始める。
「さっそく寝始めたッスかね」
「そんな感じがするな。さっきから眠そうだったもんな」
「七海のベッドと恭子さんが隣にいるおかげでしょうね」
「そうだと嬉しいわ。……それにしても、愛莉ちゃんの寝顔は凄く可愛いわぁ。寝顔も天使ねっ」
火村さんはうっとりとした様子ででそう言う。ただ、愛莉ちゃんを見る目つきは優しくて。普段よりも火村さんが大人っぽく見えた。
あと、愛莉ちゃんは寝顔も天使か。その言葉に心の中で深く頷いた。
「ほんと、可愛い寝顔ッスね、愛莉ちゃん」
「そうですね。小さい頃の七海の寝顔に寝ていますね」
「そうなんだ。さすがは従妹だ」
「ふふっ。……あたしも、ベッドと枕と愛莉ちゃんの温もりが気持ちいいから眠くなってきたわ」
「そうですか。愛莉ちゃんと一緒にお昼寝してくださいね。私達は私の部屋にいますから」
「ええ。3人ともおやすみ」
火村さんは柔らかな笑顔でそう言うと、ゆっくりと目を瞑った。
氷織はベッドの側で膝立ちをして、右手で掛け布団越しにポンポンと叩く。愛莉ちゃんがいるから、まるで保育園の先生のように見えて。
それから程なくして、部屋の中には火村さんと七海ちゃんの寝息の合唱が聞こえるようになる。
「火村さんも眠りに入ったかな」
「そうみたいですね。恭子さんも寝顔可愛い」
「可愛いッスね」
確かに、火村さんと愛莉ちゃんの寝顔はとても可愛いな。見ていると気持ちが癒やされてくる。
「せっかくなので、2人の寝顔の写真を撮るッス」
「いいですねっ。LIMEで送ってください」
「いいッスよ」
氷織と葉月さんは楽しげに話している。そのことを火村さんに言ったら「あたしにもちょうだい!」って迫りそうだ。
葉月さんは氷織の部屋から自分のスマホを持ってきて、火村さんと愛莉ちゃんの寝顔を撮影した。カシャッ、とシャッター音がするけど、そこまで大きな音ではなかったので2人が起きてしまうことはない。
「いい写真が撮れたッス。ひおりんに送っておくッス」
「ありがとうございます。……愛莉ちゃん、恭子さん、おやすみなさい」
「2人ともおやすみ」
「おやすみッス」
俺達3人は静かに七海ちゃんの部屋を後にした。
氷織の部屋に戻ると、氷織が何か冷たいものを持ってきてくれると言ってくれた。せっかく、オレンジジュースとりんごジュースがあるので、俺はオレンジジュースをお願いした。ちなみに、葉月さんはりんごジュースを頼んでいた。
2、3分ほどで、氷織がジュースを持って部屋に戻ってきた。また、氷織も自分の分としてオレンジジュースの入ったマグカップを持ってきていた。
さっそく、氷織が用意してくれたオレンジジュースを一口飲む。
「おぉ、オレンジジュース美味いな」
「さっぱりしていて美味しいですよね」
「美味しいッスよね。……うん、りんごジュースも美味しいッス」
「一口飲んでみてもいいですか?」
「いいッスよ」
氷織は葉月さんにりんごジュースを一口いただく。りんごジュースもお気に召したようで、笑顔で「美味しいですっ」と言っていた。愛莉ちゃんみたいで可愛い。
果実系のジュースは久しぶりに飲んだけど、結構美味しいな。昔はジュースや甘い炭酸飲料をよく飲んでいたっけ。今はコーヒーや紅茶、日本茶が多いけど、たまにはこういうジュースを飲むのもいいかもしれない。
その後は3人でジュースを飲みながら、今まで撮った愛莉ちゃんの写真を見ながら話したり、普段よりも音量を小さめにして3人とも好きなアニメを観たりして、午後の時間を過ごすのであった。
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