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「それじゃ、誰かとぶつかって落とし誰かが蹴ったかもしれないぞ?」
「蹴ったとしてもベッドまでの距離と後蹴った人の力と方向にもよると思います。可能性は低いと思います」
九十九はそう言うと椅子を二脚取り出し、樋川と斉藤に渡した。
「樋川さん、斉藤さん。お座りになって下さい」
すると樋川は恐る恐る椅子に座った。
斉藤も無言で座る。
「僕・・・、思うんですがこの事件、犯人が二人居ると思っています」
九十九は静かに言った。
「この少人数で話すのは話が大事となって世間に知れ渡ることを僕自身も恐れたからです。世間に知れ渡れば、樋川さんの所も斉藤さんも所もそして僕の家である渓河家にも関わっているという事で評判等を落としかねないので内密にするのかどうするかは斉藤さんや樋川さん自身で決めて下さい。ですが、せめて僕が推測したこの事件の真相が本当かどうか聞いて下さい。・・・宜しいでしょうか?」
九十九は二人の前に立つ。
綱方は相変わらず隅っこで刀を抱え、目を瞑りながらも話を聞いていた。
そして、九十九は推測を語り始めた。
まず最初の事件である宗弥さんの事について話そうと思います。
僕が第一発見者となって目撃した宗弥さんの死体。
僕は宗弥さんが生前どんな方だったかは全く知りませんでしたが、いろいろな方々に伺ったところ宗弥さんの家で少々問題があったそうなんです。
それがかなり財界でも話題になっていたことだそうで。
どうやら宗弥さんの家は一ヶ月前かに先代の当主が亡くなられたとかで後継者問題があったそうです。
宗弥さんの家系は三人兄弟の五人家族で、弟さんに嘉次(ヨシツグ)さんと妹さんに冬子(フユコ)さんがいらっしゃって三人のいずれ誰かが後継者という話になっていて遺言書はあったのですが、どうやら三人の中で一番物に優れている人という事で最終的に宗弥さんに決まって話は治まったみたいですが、弟さんの嘉次さんがその事を全く気に入らず鈴谷さんの所と裏で手を組んでいたそうです。
あ、証拠はありました。
無礼ながら少々鈴谷さんの私物を見せて頂いた所、手紙があってそれにはこの事に関することがあったので。
後返り血で浴びた服がありましたので決定的証拠だと思います。
多分、宗弥さんの死で弟さんは晴れて当主になれるとお考えだったのかもしれません。
なので宗弥さんの死は鈴谷さんのよる計画的犯行だと確信します。
その証拠に舞踏館の文字ですが、実は鈴谷さんはその言葉通りの犯行を行っていたんです。
覚えていますか?
あの言葉・・・
―怪は始まる、朔までに。
回る回る道化師。時計の針でもあげようか。
哀れな吊るされた男。
顔を仮面で隠して灯に照らそうか。
最後は誰?最後は誰?
最後は誰と踊ろうか、赤いドレスで踊ろうか。
三日月島は喜ぶよ、笑うよ。
朔になればみんな消えるよ。―
【回る回る道化師。時計の針でもあげようか。】は宗弥さんの犯行の事だったんです。
凶器ですが・・・、僕のポケットに丁寧にハンカチに包んであります。
これは、時計裏の歯車を動かすのに使う簡単に取れるレバーの一つだったんです。
試しにつけてみましたが、間違いなくレバーでした。
鈴谷さんは犯行後予め用意していたロープ等で歯車に括りつけ、凶器を時計裏に唯一ある窓から捨てそれから舞台に参加という流れですが、その直前に時計裏で彼(綱方)と出くわしてしまい、頭を殴り舞台に平然と参加をする。
さらに都合がいい事に自分が殴った相手が偶然にも自分の犯行を被ってしまう羽目にとなった。
本人は次の日随分の余裕でした。
その時の余裕はそこから来たのだと思います。
因みに、宗弥さんの遺体には何回も刺した跡があったのでその時の返り血を浴びているはずなので途中で同じ服に着替えたと考えられます。
そうすれば、踊りの時でも血で怪しまれる事もないですから。
なぜ遅れたかと聞かれたら適当な嘘を言って誤魔化したんだと思います。
鈴谷さんはそういう大胆な行動で犯行に臨んだではないかと見ています。
で、次の日。
鈴谷さんは何者かに殺害され、死亡。
・・・樋川さん、先程の話が僕の推測にして最後の確認でした。
失礼ですが、僕は鈴谷さんの殺害の犯人を貴方だと思っています。
このライターと後あの鈴谷さんの殺された方がその証拠です。
殺され方ですが、鈴谷さんはあの詩に沿っての非常に凝った犯行でした。
しかし、鈴谷さんの殺害での犯行状況はあまりにも不自然さで違和感がありました。
もし、犯行がど同一人物なら【哀れな吊るされた男。顔を仮面で隠して灯に照らそうか。】という部分に完全沿った犯行になるはず。
しかし、実際は首が吊るされているだけでそれ以外は何もありませんでした。
いや、寧ろそれしか出来なかったのかもしれませんね。
本来なら顔を仮面で隠して灯に照らそう、なんて顔を火で炙るとか等の事を個人的僕はそういうイメージをするのですが、そういった巧妙な事がなかった。
時間がなかったんじゃないかと思っています。
長々となりましたが本当のところどうなんですか?
樋川さん・・・
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