18
「馬鹿みたいだな」
綱方が独り言のように言った。
此処は木下結衣のいる部屋。
綱方は九十九と分かれた後、なぜ足が此処へと導いた。
多分、この屋敷内斉藤と九十九以外で話せる者と言えばこの木下しかいなかったからだろう。
木下はと言うと何も言わず唯々聞いていた。
「よく考えてみてば自分勝手で他人任せにしか考えられない」
綱方は蹲るように俯いた。
「あの今九十九さんは?」
木下が言った。
「わからない。あの後探したけど見つからなかった。島を出てはないみたいだけどどこか言ったのかご主人に聞いたけど無駄だった」
綱方はそう言うと深いため息をついた。
「少しはまともに話せる奴だと思ったオレが甘かったのかな」
木下に言っているようだが、何処か独り言のような口調で綱方は言った。
ガサガサと草の中を歩く後が聞こえた。
荒い息が結構疲れている様子である事が伺えた。
そこにいたのは九十九だった。
あの後誰にも声を掛けずただひたすら此処で草の中をうろついていたのだ。
場所は屋敷の中心の真後ろ。
綱方と別れてからずっとある物を探していた。
あの宗弥の殺害に使われた凶器である。
ここに来る前まで時計裏の所にいたのだが、凶器が全く見つからないのである。
その代わりに時計裏の部屋の中に一つだけの窓が開いていた。
「おかしい。時計裏にないなら此処らへんにあってもいいのに」
九十九はそうぶつぶつ言いながら草を掻き分けた。
この場所と目をつけ、探し二時間少々。
一向に見つからなくて半ば諦めかけようとした。
昨日は雨が降った所為か、今日も朝からずっと雲っておりもうあっという間に空はいつもよりも早く暗くなって来たからだ。
そして、起き上がろうとした時近くの木の中に褐色の何かが見えた。
「え?」
九十九は気になって木を揺すって見た。
すると、何かが落ちてきた。
「これ・・・」
九十九はそれを拾うとまじまじと見つめた。
もう既に乾いた血がべっとりついた何かの部品。
「これが凶器?」
一体何の部品なのか九十九にはわからなかった。
何かのレバーのようだがナイフのようにも見えていろいろと考えると混乱していった。
とりあえず持って帰ろうとポケットからハンカチを取り出し丁寧に包んでしまった。
九十九はゆっくりと立ち上がり上の窓を見つめこんな事を想像した。
何者かが宗弥を舞踏会前に時計裏に呼び出した。
犯人はそこで得たかは知らないが、この凶器を持ち出し正面から宗弥さんを何度も刺した。
正面からだと返り血を浴びる、・・・上に何かを着ていたのだろうか。
いや、男性なら黒いスーツなら気付きにくい。
殺害したら予め用意した紐などで歯車に括りつける。
そして、遅くに舞踏会に参加して理由などを適当に言って誤魔化してアリバイを作る、といったところだろうか。
九十九はまだ躓く事があった。
鈴谷さんの殺害方法だ。
首を吊るなんてまるで自殺だ。
しかし、なんでわざわざ口に銃を?
疑問がだんだんと膨れ上がる。
やはり自殺ではないのかもしれない。
そう思うと九十九は暫くそこに立ち尽くした。
その後、綱方は木下のいる部屋から出て行き行き先など考えずただ屋敷内を歩いていた。
気がつけば足を止めていた。
そこは、鈴谷が死んだ又は殺された部屋。
九十九は自殺じゃないのかもしれないと言っていたが、首を吊っている時点でもう自殺だと見ていた綱方は今になって本当に自殺なのか?とやっと疑問を持ち始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます