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九十九がそういうと、綱方に近づき綱方の手を掴み刀を見た。

「見たところ、血を拭いた形跡がない。・・・大抵、血を拭き取っても少し刀っていうモノはなかなか綺麗にならない物って僕のお父さんが言っていたよ。それに着ている着物だって昨日の服と同じだ。返り血を浴びていていない。殺された宗弥さんの遺体には沢山の刺し傷があった。服はボロボロだったし、傷も一つ一つ大きかった。あれからだと、犯人に宗弥さんの血がついてしまうはず。これ等から見れば君は犯人である確証がない。・・・つまり君は、犯人でもなければただの被害者。という事で皆さん、これは僕の推測ですが何か反論はありますか?」

九十九は、集団に振り向き言った。

全員黙り込んでいる。

「皆納得しているみたいだよ?」

九十九が言った。

綱方は刀を落としその場で崩れた。

「周りからの反論がないって事はもう大丈夫だよ」

九十九がしゃがみ綱方を見つめた。

綱方は無言でコクリと頷いた。

「ほぉ、君はとんだお人良しなんですね」

何処か人を見下しているような口調の声が九十九の耳に入った。

「何の御用ですか?・・・鈴谷さん」

鈴谷はコツコツと九十九に近づき、下から二人を見つめた。

そして、綱方が落とした刀をひょいと拾った。

「おぉ、見事な刀で。何でいつまで持っているんですか。外国に売ればかなりの額で売れるでしょうに」

「鈴谷さん!それは、彼の物です!」

「わかっております。人のものを盗む輩ではないですよ?私は」

鈴谷は、にっこりと笑うとわざと落とすように刀を放り投げた。

綱方は、それに瞬時に反応し慌てて刀を手に取った。

「な、何するんだ!」

「あ、これは失礼」

「お前!」

綱方が刀を持ち構えようとしたのが見えた。

慌てた九十九は

「駄目だ!」

と鈴谷に盾突こうとすると九十九は瞬時に綱方を抑えた。

「離れろ!止めるな!」

綱方は九十九の腕を振り払おうとすると九十九は小声で綱方にこう言った。

「今此処で盾突けば、さっきの僕の証明が無駄になる」

九十九がそう言うと、綱方はやっと気を沈め我に帰った。

それを見て、九十九は微笑すると鈴谷の方に顔を向けた。

「鈴谷さん、貴方今までどちらに?」

九十九は、鈴谷に言った。

「いや、ちょっと向こうにいましてね」

「どういうご用件で?皆さんは、ほとんど此処にいらしていたのに」

九十九は知らないふりをして鈴谷の様子を伺った。

すると、鈴谷から鼻笑いが聞こえてきた。

「いやー、君には参りますね。実は私集団行動が苦手でしてね」

鈴谷が言うと、九十九は

「そうですか」

とニコッと笑顔を見せてはいたが目が全く笑っていない素っ気無い答えを返したのだった。




「九十九さん・・・」

斉藤は、なぜつい先程までの話を推測出来たのかと言いたくて口をパクパクさせていた。

ここは、九十九の部屋。

あの後、斉藤は九十九と綱方を連れてこの部屋に来たのである。

話がややこしくならないうちに。

「・・・僕にもわかりません。でも、何でしょう。彼は違うと思っていたんで思っていた事を話したまでだと思います」

九十九は、苦笑した。

本当の事であるのだ。

自分は元から綱方が犯人でないと確信していた。

勘みたいなものである。

だが、まさかこんな形で彼の助けになるとは思っても見なかったが。

「・・・じゃ、お前から見て犯人が俺じゃないのなら誰だって考えているんだ」

綱方が言った。

窓際で腕を組みなるべく斉藤にも九十九にも目を合わせないように余所見していた。

「・・・鈴谷さんだと見ている」

九十九は言った。

「鈴谷さんは、昨日僕と斉藤さんがこの屋敷に来た皆を呼び集めた時に一緒に来た。その時はいいんだけど、途中鈴谷さんはこっそりあの話し合いから出て行ったところを僕は見たんだ。だから僕が綱方君を時計の裏で見つけた間までのアリバイが鈴谷さんにはないんだ」

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