10
九十九は目を疑った。
また死体からピチャっと音が聞こえた。
それを見てゾクゾクと鳥肌が立った。
さっきからの水音はこの死体から落ちてきた血だったのだ。
そして、九十九は崩れるようにその場に手を着いた。
手が何かで濡れた。
九十九は右手を覗いた。
鉄のような匂い、赤い液がたらーっと伝った。
これも血だったのだ。
あまりの気持ち悪さに九十九は吐き気に襲われた。
気持ち悪いのは仕方なかった。
鳥肌は今でもゾクゾクと立っていて震えが止まらなかった。
死体はというと歯車と回る度首を一回転させていた。
九十九は、歯を食いしばり吐き気を我慢しながらも死体をまじまじと見た。
口の周りにはあの手についた血がついていた。
九十九はその後九十九の後をやっと追いかけて来た斉藤に体を揺り動かされても一切反応を示さなかった。
本人はこんな経験なんて初めてだったのだ。
これが彼が人生の中初めて目にした殺された死体、そして殺人現場だったからだ。
ふと九十九は目を覚ました。
見える天井、体を起こすと自分はベッドに寝かされていたことに気付いた。
「・・・アレは、夢?」
九十九はぼそっと言った。
しかし、右手を裏返し手の平を見てみると赤かった。あの時の血がついていた。
「うわぁああ!!!!」
九十九はベッドから飛び下り、便所の洗面台へ走った。
蛇口を大きく捻り、水を沢山出し手を急いで洗った。
しかし、もう乾いているため洗い落とすのに少し時間が掛かった。
一生懸命手の平を擦って血を取ろうと九十九は必死になった。
そして、大分血が取れると蛇口を捻り直し濡れた手を見てまだ血がついていないか確認した。
九十九はしばらくそのまま固まった。
九十九はきっちりと身支度し部屋から出ると、応接間足を運んだ。
応接間には斉藤と頭に包帯を巻いた綱方が立ち、多くの人達がざわめいていた。
「斉藤さん、アンタの雇った用心棒さんをさっさと警察に出しな」
集団から野次が飛んだ。
状況からしてあの死体の事が知られたんだな、と九十九は思った。
「いや、だから彼が言っているように彼は人殺しなんてしてないんです!誰かに陥れられて」
「じゃ、アンタが仕組んだ事か!?」
「な、・・・なんでそういう事に」
斉藤は必死の抗議をした。
しかし、相手達はどうしてでも綱方を犯人として決めつけ警察に送ろうとしているのが聞いているだけでもわかった。
人間は第一印象を大切にしているように一番感じたものを優先する考え方がある。
これもその一部と九十九は思った。
「・・・斉藤さん、どうしたんですか?」
九十九はわからない振りをして話に加わった。
「九十九さん、・・・もう体調は大丈夫なんですか?」
斉藤は優しい微笑みで九十九を迎えてくれた。
「あ、・・・はい。夜と比べて楽になりました」
「そうですか、それはよかったです」
斉藤と話をしていると集団から怒鳴った声が聞こえた。
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