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斉藤はつくづく九十九に呆れてしまった。
学問などに関心を持ち、武道にも興味がある。
息子としては不満な部分なんてない。
だが、性格がこんなのんびりというか何処か抜けているような性格で見ていてとても不安で親にとって思わず困った悩みの種になってしまう。
斉藤は九十九の言う通り源三とは文通の仲である。
九十九に何かあったら教えてくれと以前の手紙で言われた斉藤だが、本人は言わないでくれと言う。
少しどうしたらいいものかと思ってしまった。
「九十九さん、大丈夫です。私はそれ程物を言う人間ではないです」
「ほ・・・本当ですか?」
「勿論です」
「はぁ、よかった」
九十九は安心して胸を撫で下ろした。
「それより九十九さん、何で寝たりなんか」
「いや、ベッドに身を投げたら疲れがどっと来て・・・気がつけば寝てしまって」
「九十九さん・・・。此処に源三が来ていたらどうなっていた事か」
「本当ですね、即殺されていたかもしれないです」
「ディナーまだでしょう。舞踏館でまだ食事が出ているのでどうぞ」
斉藤は言った。
「あ・・・、そう言えば僕何にも食べていませんでしたね。通りでお腹空いているはずです」
「さぁ、まだ舞踏館に残っている方もいるかもしてません。行きましょう」
「はい」
斉藤の言葉に九十九は子供のように反応し、ベッドから降りた。
舞踏館へ向かうと九十九はゆっくりゆっくり遅く歩いているように感じられた。
廊下を歩く度、なぜが変な違和感を感じた。
耳の奥からキィーンという耳鳴りのような小さい音が聞こえた感覚がしたからだ。
何かが起こる予感を感じた。
なんだろうと九十九は思った。
そうすると、
「キャアアアアアア!」
と女性の悲鳴が何処からともなく聞こえた。
「な、なんなんだ!?」
「舞踏館か!?」
「とりあえず声のする方へ!」
九十九は言った。
斉藤も使用人もその後を続く。
舞踏館へ繋がる廊下を走り、左曲がりの角を曲がろうとすると九十九はドンと誰かとぶつかった。
相手は、昼間見たあの侍だった。
「あ、・・・君は!」
九十九は声を掛けようとした時、斉藤は声を上げた。
「綱方くん!」
斉藤が綱方という侍の名を呼ぶが、答えようともせずぶつかった九十九に謝りもせず九十九達が来たところを走って行こうとした。
「綱方くん!!」
斉藤はもう一度呼びかける。
しかし、綱方は振り返りもせず廊下を走って行った。
「九十九さん、大丈夫ですか?」
「あ、はい。平気です」
斉藤は手を差し出すと、九十九はそれを握り締め立ち上がった。
九十九は綱方が行った後を見た。
綱方の事など全く知らない九十九は、昼間の事といい嫌な印象が出来上がってしまった。
九十九達は舞踏館に着くと九十九は舞踏館の扉を力任せに押して中へ入った。
最初に目に入ったものは目の前にある白い壁に赤い字が書かれていた。
怪は始まる、朔までに。
回る回る道化師。時計の針でもあげようか。
哀れな吊るされた男。顔を仮面で隠して灯に照らそうか。
最後は誰?最後は誰?
最後は誰と踊ろうか、赤いドレスで踊ろうか。
三日月島は喜ぶよ、笑うよ。
朔になればみんな消えるよ。
何で書いたのかはわからなかった。
一瞬九十九は『血』と思ってしまった。
一文字一文字を赤いものでたっぷりとつけて壁に書いたのか滴り落ちて余計気味悪く思えた。
九十九達の前に一人さっきの悲鳴を上げた人なのだろうか。
女の人が気を失って倒れていた。
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