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大きい扉が斉藤により開かれると豪華な赤い絨毯が廊下を敷き詰めていた。
九十九はわくわくした目で周りをきょろきょろと見回した。
珍しい花瓶に絵画、いろんなものがあった。
そして、大きな広間へと着いた。
「うわぁ、素晴らしいですね。斉藤さん」
「いやいや驚くのはまだ早いですよ、九十九さん。ここは応接間です。そして、この窓の向こうに見えるのが舞踏会の舞台となる舞踏館です」
斉藤は、九十九を窓へと案内した。
九十九は窓を覗いた。
そこには大きい白い舞踏館があった。
その舞踏館はガラスが全てステンドガラスで彩り、柱には天使や花などの彫刻が彫られていた。
「立派ですねー、あそこで舞踏会が」
「そうです、九十九さん。この二日間頑張って下さいよ?」
斉藤が笑って言うと、九十九の肩をぽんぽんと叩いた。
それに反応したのか、九十九はビクッと動き目をおどろおどろさせた。
「あ、はい。・・・運がよければ」
九十九は斉藤にまた痛い所を突かれて少し肩を落としてしまった。
それを見ると斉藤は面白がって大声で笑い出した。
「九十九さん、そういう事じゃ駄目ですよ?もっとビシッとしていないと」
斉藤は、今度九十九の背中をバンと叩いた。
「あ、・・・アハハ」
九十九は苦笑するしかなかった。
そんな時だった。
右の側にあったドアがギィと特有の音を立てて開いた。
九十九と斉藤は振り向いた。
最初、目に入ったのは縞々模様の袴が目に付いた。
その次は刀。
そして、藍色の着物に黒の結った髪。
今時珍しい侍の姿をした人が出てきた。
「ご主人、見回りは終わったぞ」
彼は斉藤にそう言った。
「おぉ、そうですか。ご苦労様です。では、次に舞踏館の裏を他頼みます。」
「わかった」
侍は軽く返事を返すと、九十九に目も暮れずすぐさま外へ出て行った。
九十九はただただぼうっと彼を見送った。
「斉藤さん、今の人は」
「いや、彼の事は気にしないで下さい。舞踏会では警備員役として働いてもらうよう雇ったただの用心棒です」
「へぇ、廃刀令で刀を持つ人なんてもういなくなったと思ったのにまだいたんですねー」
九十九は、面白そうに言った。
「そう言えば、九十九さんはそういう古いものについて興味がおありましたね。しかし、彼は少し変わり者です。あんまり自分の事を話してくれないもので」
「人はそれぞれですから、彼の場合秘密主義者な人なのかもしれなませんよ?」
「だと思っています。それよりも九十九さんは他人より自分の事を心配しなくては」
「そうですね、どんな方が来られるのか楽しみにしています」
九十九はそう笑顔で返した。
しばらくして斉藤と別れると屋敷の案内人の案内で九十九はこれから二日間過ごす部屋へ入った。
中も西洋をイメージした赤の色で統一した家具やカーテン、絨毯で飾られ、窓からは海を眺めることが出来た。
「素敵ですね、流石斉藤さんだ。統一性があって何か凄すぎて言葉でどう表現したらいいか」
九十九は部屋のあちこちを見て言った。
「そう言って頂けますとご主人様もさぞお喜びになるでしょう。では、ごゆっくり」
案内人が笑顔でそう言うと、ドアを閉めた。
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