ふるえ

三月の

やわらかな肌に

さめざめとした記憶が

はるか薄らいでいく

北西から吹く風は

あきらかな色を呈して

春が青を穿つ


しなやかな

花の名前をしらないで

ひとり

三丁目の歩道橋をわたっていた

あなたのことを

季節はついに追いこして

わたしは

いつのまにか

歳をとっていた


あゝ

かつての

ふるえを

愛撫するふうに

頸を透きとおるひかり


あゝ

すべての

分岐を

なぐさめるふうに

胸をつらぬくかおり


時間は

からだを

くし刺しにして

無駄に赦された気分にさせる


からだをめぐる血液が

いずれ逆流することを

ひそかに祈っている

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