ストーンダンジョン 臆病な英雄と英雄になった少年

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 かつてダンジョンの内部に置き去りにされ、死にかけていた少年はもういない。


 ダンジョンの最奥に到達した、アレキサンドライトのパーティー。

 イークスは感慨にひたっていた。


「とうとう、ここまで来たんだ。ダンジョンに見捨てられてたのが嘘みたいだ」


 イークス達はどのパーティーよりも強くなった。

 そして、ダンジョンの最奥にたどりつくための実力を身に着けた。


 後は、一番奥の部屋をあけて、ガーディアンを倒すだけとなった。

 いったん拠点に戻ったイークス達は、町で各々準備をすすめる。


 しかし、そこに話しかけてくる者達がいた。

 それは、ゴールドストーンというパーティーのメンバーだった。

 かつては、最強の英雄パーティーと呼ばれたゴールドストーンのだ。


 出会ったのは、その一人であるヒューデという女性魔法使いだった。


「このままダンジョン攻略を進めるなら、気を付けるべきだ」


 ヒューデはイークス達に忠告する。

 彼女は、ダンジョンのモンスター出現傾向からみて、最奥ではカタストロフィドラゴンが出てくるという。

 カタストロフィ・ドラゴンは破滅的な攻撃を繰り出す竜だ。


 ゴールデンストーンは、その竜にやられて壊滅的なダメージを受けたらしい。

 生き残った者の、心を折られてしまったヒューデは、強いトラウマを刻み付けられた。

 彼女は、声を震わせながら忠告する。


「勝てる者はいない、死んでしまうぞ」


 しかしイークス達は、それでもダンジョンの最奥に行くと述べた。


「夢だったんです。危険なのは分かってます。それでも行かせてください」


 イークス達は、決意を胸に宿し、着々と準備を進める。

 そんな中、ある非常事態が発生した。

 ダンジョン最奥にいるはずのモンスターが、ダンジョンを出て町を暴れているというのだ。


 このような事はたまにあった。

 モンスターは原則ダンジョンから出てこないが、モンスターを使役するテイマーが移動させると、ダンジョンから出てしまうのだ。


 この時も、誰かがダンジョンから出してしまったらしい。

 そして、何かの拍子にテイム状態が解除されてしまったとか。


 暴れているのは、ハリケーンドラゴン。

 だが、数時間後に進化してカタストロフィドラゴンになったらしい。


 放っておくわけにもいかないため、イークス達は、カタストロフィドラゴンの討伐に向かう。

 駆け付けたその場にはヒューデもいた。


 心がくじかれていながらも、市民を守ろうとしていたヒューデ。


 その姿に心を受けたイークス達は、彼女に恐れは乗り越えられると告げる。


「ヒューデさん! あなたは抗う心の全てを失ってしまったわけではありません! 思い出してください。英雄だった頃の自分を!」


 ヒューデはイークスの言葉に説得される。


 英雄としての姿を取り戻したヒューデと共にイークス達は、カタストロフィドラゴンを討伐した。


 戦闘後、ヒューデはあるべき姿を思い出させてくれたアレキサンドライトのお礼がしたいという。


「私も君たちのパーティーに加えてくれないか?」


 それで、今回の騒動で怪我をしたパーティーメンバーの代わりに、ダンジョンの最奥攻略を手伝う事にしたのだった。





 ダンジョン最奥では、予想通りカタストロフィドラゴンが出迎えた。


 破滅的な攻撃を繰り返すドラゴンを前にして、イークス達はすぐに満身創痍になった。


 しかし、英雄としての心をとりもどしたヒューデを筆頭に、攻撃を加えて、とうとうドラゴンを倒した。


 彼らがたどり着いたダンジョンの奥には、多くの秘宝や財宝。


 彼らは、かけがえのない仲間達と共に達成感を分かちあった。



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