第7話
授業中・国語
「はい。今回は2人1組でレポート作成して提出してください。ペアは自由です。」
ペア方式又は複数人での共同作業はボッチには鬼門となるものだ。といっても僕は初めからあまりもの以外あり得ないので悟りを開いたかのように穏やかだが。
ま、とりあえず周りがペアを作ってあまりが来るまではしばらく待ちだな。
そんな事を考えていると1人真っ直ぐこっちに来た。周りはまだ騒がしいのに足取りに迷いがない。
「よぉ鷹宮、俺とやろうぜ。」
「…わかった」
かなり以外な人物がきた。どれぐらい以外かと言えばこちらを見ている鈴宮が目を見開いて固まるぐらいだ。
そんな引く手数多の奴が迷いなく僕のとこに来るなんて普通に怪しい。何か裏があるのでは?
「よっしゃ。ならさっさとやろうぜ。放課後残るとか嫌だから授業中に終わらせたい」
「確かに、こんな事で残りたくはないなぁ」
その考えには同感なので僕もペンをとりサラサラと纏めていく。だが西野にも何かしらの目的あるだろうし、また放課後呼び止められるのも困るからこちらから切り出すとしよう。
幸い周りは仲良しで集まってるだけあって盛り上がっててこちらの声は聞こえないだろう。
「なぁ西野、僕に何か用があったんじゃないのか?」
「何でそう思うんだ?」
「別に僕じゃなくてもペアになる人は沢山いた筈だ。なのに今まで1度も接点もなかった人が突然迷いなく真っ直ぐ僕のとこに来るなんて怪し過ぎて、何かあるんじゃないかと思うのは当然だろ」
「すげぇ警戒されてんな。まぁその通りなんだが」
「結局のところ本題は何なんだ?鈴宮か?」
「葵だよ。この間仲良くなってたからさ葵に彼氏いるのか知ってるかと思ってさ。」
「確かに仲良くはなったがそこまでは知らないぞ」
「そっか。…なぁ鷹宮俺と友達になってくれないか?」
「⁇ 、何だ突然。僕にこれ以上どうしろと言うんだ?」
「違う違う。確かに下心もあったが純粋に友達になりたいと思う気持ちもある。実際こうして話してみるとお前って結構ハッキリ言うし全く取り繕った感じもしなくて、他とは違った居心地の良さがあると思うんだ。」
それにやはり鷹宮は気になる。あの玲香と一気に距離を縮め最近はよく一緒にいる、なんだかこの2人を見ているとほんのりと酸っぱさを感じる。だからかもう少し近くで見てみたくなったんだ。
「だから俺と友達になってほしい!」
友達か、今までいた事もないからどんなものなのかわからない。普段何をするとかどんな話をするとか正直想像もつかない、だけど何かあった時相談できる人は欲しいと思っていた。世間的な友達とは違うだろうけどそれはこれから知って行けばいいと思った。
「ああ、これからよろしくな。西野」
「こちらこそだ。それと苗字は堅っ苦しいから司で呼んでくれ」
「わかった。改めてよろしく、司」
「ああ!まずは手始めにこのレポート終わらせようぜ!」
この日僕に初めて友達ができた。友達というのがまだ全然よくわからないけど少しずつ知って行こうと思う。
昼休み・教室
「辰巳!一緒にメシ食おうぜ!」
…何時もの特等席行こうかと思ったがこれも友達付き合いというものだろうと思い席に座り直す。というかいつの間にか名前呼びだしこれがリア充という奴か?
「辰巳ー!一緒に食べよー」
「鷹宮君とお昼なんて久しぶりだね」
「ああ、まぁ普段教室いないしな」
「お?玲香と葵も一緒か楽しくなりそうだな」
「西野君もいるなんて珍しいね」
「ていうか何であんたがここにいるのよ。まさか辰巳の事いじめてないでしょうね!」
「そんなわけねぇだろ!お前俺がそんな事する奴だと思ってたのか⁉︎」
一気に周りが騒がしくなってしまった。だが煩わしさはなく不思議と心地良いものだ。
巣立つ最後まで僕が1人なのを心配していた彼彼女達が今の光景をみたらなんて言うだろうか、昔の僕がみたらどう思うだろう、きっと羨ましいとかもっと頑張ろうって思ってくれただろうか?
「鷹宮君またゼリーだけなの?」
「辰巳お前こんなで本当にたりるのか?」
「あんた前にも私がちゃんとお昼は食べるようにしなさいっていったでしょ!まったくもう、ほらこれあげるわ」
そういって彼女は小ぶりのタッパーを取り出してきた。中には玉子焼きとか唐揚げミートボールブロッコリーなどが入っている。
「鈴は用意周到だねぇ」
「これもしかして全部玲香の手作りか?」
「ふっふ〜ん!辰巳の事だからどうせ言ったところで改善しないと思って用意してきたの。小食だって言ってたからおかずだけね、まぁほとんどあまりものだけど」
「すごい旨そう、味見していい?」
「ダメに決まってるでしょ。ただでさえ少ないのにそんな事したら辰巳の栄養がなくなるじゃない。」
せっかく彼女が僕のために用意したのだから誰にも渡すつもりはない。
「…悪いな司。鈴宮の料理は僕の物だ。誰にも譲ってやるつもりはないよ」
「「おおッ⁉︎」」
「んなッ…!…ッ‼︎」
2人が急に声を上げ鈴宮はへたり込んでしった、何かしただろうか。
やはり鈴宮の作るものは旨い僕も同じのは作れるがまったく違う、なにがここまでの差を生み出すかきになる。
「うん、旨い。鈴宮の料理はなんだか染み渡る。」
「うるさい!変な事言うなぁ!」
「うわぁ、ハチミツレモンソーダ見たいな甘酸っぱさ」
「初めて聞く、すごい独特な例え方だね。でも甘くて酸っぱすぎず炭酸見たいな感じがするいい表現」
「あぁ!俺も女子の手料理を食べたい!何かください!」
「う〜ん、ハンバーグでいいならどうぞ?」
「うおぉぉぉぉぉ‼︎」
向こうもなんだが盛り上がってる、なんだかんだ司もちゃっかり葵さんの手料理頂いてるし。後すごいうるさい。
そんな楽しい昼休みはあっという間に過ぎた。
放課後はもう恒例となりつつある鈴宮家にお邪魔している。
何度みても家庭的で見事な手際だ。スッピンの方が可愛いし薄着で無防備すぎる気もするが。
今は香澄ちゃんと一緒にアニメをみている。正直最近アニメなんてみていなかったから着いていけない。どこかで予習しとこうかな?
「辰巳ー。手伝ってー。香澄は手を洗ってきなさい。」
「「はーい」」
ずいぶん慣れたものでテキパキと食器をだし盛り付けていく。慣れとは怖いものだ。
3人で食卓を囲む。僕はこの時間が好きだ。香澄ちゃんが1日の出来事を目一杯教えてくれて、それを鈴宮が穏やかな顔で時には頷きながら眺める。とても穏やかな時間、ずっとこの瞬間が続けばいいのに。
「辰巳?ボーッとしてどうしたの?」
考え込んでる間に彼女がお茶を運びテーブルに置いていた。
「ああ、考えごとしててさ。鈴宮が学校と家事の両立に香澄ちゃんの面倒見て、料理も上手で正直スッピンの方が可愛いかったり結構適当な髪型だったり肉付きがいいだとか他の誰も知らない事を知れて僕だけが知っていて誰にもこの鈴宮を見せたくないなぁ、と思ったんだよ」
感情に浸っていたせいか長々と語ってしまった。
「…この、バカァァァ‼︎」
「ぐあっ‼︎」
お盆が手裏剣の如く顔面に飛来した。超痛い。
「なにいきなりまた恥ずかしいこといいだしてんの!バカなんじゃないの⁉︎」
「ご、ゴメン。次から気を付ける」
「もうっ、バカ!アホ!」
ようやく落ち着いたので2人で食器を洗う。
「辰巳、明日はせめて1つぐらいゼリー以外の食べ物を持ってきなさい。今日だって皆心配してたでしょ」
「そうだな。それなら、…いややっぱりやめとく」
「はぁ⁉︎なんでよ!」
「ただの我儘だが、そしたら明日また鈴宮さんが作ってくれるかもしれないから」
「…ッ‼︎」
黙り込んだと思ったら次の瞬間にはこっちにすごい水をバシャバシャしてきた。冷たっ!
なかなかのヤンチャぶりをみせる、これも誰も知らない僕だけの姿だ。 彼女は小さい頃すごいヤンチャっ子だっただろうなぁ。
無事に洗いものも済ませ大分外も暗いため今日はもう帰るとする。
玄関からでると後ろから声をかけられる。
「明日、何かリクエストある?」
「そうだなぁ、春巻きかな」
「うん、わかった。じゃあまた明日」
そういって僕は鈴宮家を後にする。
この1人になった時間がとても寂しく感じる、今までずっと1人が当たり前だったのに今じゃ鈴宮の家で鈴宮の料理を食べるのが当たり前になって僕の中で彼女の存在がどんどん大きくなっていく。彼女はどう思ってくれているだろうか。
僕は未だにこの感情が何なのかわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます