第6話
朝教室に入ると特に変わったことはない、空気が重いだとかそんな事もなく皆普通だ。昨日名前の知らない誰かが告白すると言っていたから失敗にしろ上手くいったにしろ何かしらの変化があると思ったが、まだしてないのかただ単に広まらなかっただけか。
まぁ、どっちでもいいか。少し様子をみよう。
昨日の某を見つけたが特に変わらず澄まし顔だがどこかどんよりしてるあたり失敗したか?鈴宮さんの方も流し目で見てみるが少し目が赤くなっている、いったいどんな話したんだ?
今しばらくはそっとしとくべきだな。
今日は雨も降ってないので何時ものベンチで昼食とり(ゼリー×2)本を読んでいればあっという間に後十分で予鈴の時間になり教室にもどる。
教室に戻ると鈴宮さんがプリントの束と格闘していた。
「鈴また生徒会から応援頼まれたの?断ればいいのに」
「うん、私も断りたかったけど今回までだからって言われて断りづらくて」
「あんまり無理しちゃダメだよ?」
「心配してくれてありがとね」
なるほど生徒会からの依頼だったのか。
翌朝・教室
鈴宮さんが珍しくギリギリにきた。目元にはハッキリとクマがあるように見えるし、今も欠伸をしている。
「鈴今日クマができてるよ!」
「おはよ〜。葵、もう少しだから大丈夫よ」
鈴宮さんのスペックなら問題無いだろうが彼女は学校と家事を両立させなければならない以上睡眠時間を削るしかないはずだ。
彼女は昼も早めにすませ書類書いている。開いたままの鞄からはまだ大量のプリントがギッシリ詰まっている、量的にまだ大分かかるだろう。
放課後心配になった立花さん達が言い寄っているが鈴宮さんは曖昧に笑って帰ってしまった。
教室から出ようとすると中村(今日知った)が話しかけてきた。
「おい鷹宮お前鈴宮と仲良くしてるのにあれ見て何も言わないなんて心配じゃないのかよ!」
「さぁな、大丈夫なんじゃないか?またな」
「あ、おい!」
別に鈴宮さんのことを心配してない訳じゃない。睡眠時間まで削っているということは体力も削っているということだ。体調だって崩しやすくなる、むしろ心配だ。
だが直接言ったところで鈴宮さんの性格的に手伝わせてはくれない、律儀で頑固だし。
ならどうすれば彼女の力になれるかのか。中村の声を無視して教室をでて生徒会室に向かう。
「どうも会長、少しいいか?」
鈴宮視点
最近気分も悪く睡眠も十分にとれていない。原因は2つだ。1つは中村の告白で聞いた話だ、告白は断ったがその後鷹宮が私に釣り合わないだとか自分を酷く下卑していたことを聞き凄まじい怒りが湧き上がり目が潤んでしまう。
教室に行くと元凶の鷹宮が何食わぬ顔で本を読んでる。今いってしまえば止まらずいろいろ溢れ出してしまい手もでるかもしれないと思い留まり席につく。
そんな中原因の2つ目、生徒会からの臨時で雑務を頼まれてしまった。本当は鷹宮の事もあり断るつもりだったが今回限りで終わりにするからと頼み込まれ引き受けてしまった。
家事をする以上どうしても寝る時間を削るしかない。わかっていたことだが、これは少々堪える。周りの心配も大きくなってきたがそもそもが私が引き受けた仕事だ。人に頼るなんて出来ない。
そういえば毎日心配してくれる葵や皆と違って鷹宮はそういった素振りを見せない。今は有難い事だがあの件もあり腹が立つ。今の仕事が終わったら絶対締め上げてやる。
鷹宮といえばここ数日家に来ていない。いつもは来てくれるのに連絡しても忙しいの一点張だ。
確かに最近何をしているのか疲れているようだが何故何も教えてくれないのだろうか。もしかして何か怒らせた?でもまったく心当たりがないし今度問い詰めよう。
今は終わった仕事を生徒会に届けるのが先だ。
放課後すぐに荷物をまとめ生徒会に向かう。ノックをして中に入ると会長の
「あれ鈴宮さんどうしたの?」
「何って任されてた書類持ってきたのよ」
私が答えると崎城は眉をひそめ不思議そうな顔をした。どうしたのだろう。
「書類ならさっき鷹宮君が持ってきてくれたけど、もしかして渡し忘れかなにか?」
「は?鷹宮?なんであいつがでてくんのよ」
「なんでって鈴宮さんが彼に頼んだんだろう?何日か前に生徒会に来て『鈴宮さんのやってる今の仕事もう少しで終わるから先に次の分の仕事を渡して欲しいと鈴宮さんに頼まれたんで受け取りにきた。なるべくまとめて渡してくれ』って頼むはずだった分全部渡したんだけど、随分早く仕上がったね」
崎城の言葉を聞きながら考える。まず私はそんな事鷹宮に頼んだ覚えはない。でも現に仕事は終わってる。
じゃあ誰が終わらせた?決まってる、忙しいの一点張りでやたら眠そうだったあの馬鹿だ。
私は崎城に書類を渡し早足に生徒会をでて歩を進める。
香澄を迎え帰りながらケータイを取り出しメールを打つ
鷹宮視点
「ふぁぁ〜」
今日何度目かの欠伸をする。寝みぃ、流石に徹夜で一気に片付けるのは久しぶりだったがやり過ぎたか?でも早めに終わらせないと気付かれるかも知れんしな。まぁ、無事終わったことだし今日は帰ったらすぐ寝よ。
そんなことを考え歩いてると携帯が着信で震える。いったいなんだろう。
from 鈴宮玲香
本文:今日 絶対 家 来い
えぇ!怖ッ!なんでこんな区切られてるんだよ!あぁ超怖ぇよぉぉ‼︎えぇー行くのやだよぉ…
でも行かないともっと怖いしなぁ、覚悟きめるか。
「南無三」
鈴宮家
玄関を開けるとすぐにリビングに通された。香澄ちゃんは今日友達の家にお泊まりに行ってるらしい。既に料理は出来ているのかいいにおいが立ち込めている。ついでに殺気も立ち込めてる。なんで?
「まず先に、生徒会の仕事助けてくれてありがとう」
「お、おう」
え?なに?そんな事で殺気だしてるのか?
「私、中村に告白されたんだけど」
「ああ」
なんだ中村の奴ちゃんと告ったのか。まぁ鈴宮さんのこの様子から察するに振られたんだろうな。成仏してくれよ中村。
しかしそれならば何故僕は呼ばれたのだろうか、いよいよ意味がわからん。
彼女は背筋が凍るような声で言った。
「あんた、私と釣り合わないなんて言ったの?」
確かに言った。僕と鈴宮さんでは釣り合わない。でもそうじゃないんだ。
「まってくれ鈴宮さん。確かに言ったがそういう意味じゃないぞ?僕は嫌われ者で鈴宮さんは人気者だから評判とかいろいろ迷惑かかるって意味で言ったんだ」
「なんであんたが私の立場なんて気にしてんのよ!勝手に決めつけて勝手に納得しないでよ‼︎」
「す、すまん」
泣きだしてしまった。
嗚呼、こんなつもりじゃなかったのに泣かせてしまった。
彼女は堰を切ったようにここ数日溜め込んでいた感情を爆発させた。
「弁当の時だって葵のは美味しいって言ったのに私にはないし!あっさりと仲良くなって!急に疎遠にはなるし書類だってそう!なんで何も言ってくれなかったの⁉︎それなら声をかけてほしかった!ここで私と一緒にやってほしかったよぉ‼︎」
その後、感極まった鈴宮さんに殴られもう2度とこんな変なことは言わないししないと誓わされることで許してもらった。
鈴宮さんは夕飯を温め直すと言ってキッチンに戻っていった。
「鷹宮ー。あんたも手伝いなさい。」
「はいよー」
僕は人を簡単には信用できないししない。いろいろ見てきた。裏切る人や裏切られた人、裏切られて傷つくぐらいなら初めっから信用しないほうがマシだ。
だから僕が抱いくこの感情は決して信用や信頼ではないのだと言い聞かせる。これはきっと同じ秘密を共有する共犯者だ。
「ねぇ、鷹宮。」
「なんだ?」
「私の事さん付け無しで下の名前で呼びすてにしてよ」
「え?ムリ」
「なんでよ!葵の事は呼んでたじゃない!」
「ボッチの僕にそんな事出来るとでも?いきなり女子の下の名をさん付けなしなんてハードルが高すぎる。…まぁ、頑張るから少し待っていてくれ、鈴宮」
「威張って悲しいこと言うな!でもまぁ、これからもよろしくね。私も呼んでもらえるまでちゃんと待つよ、辰巳!」
そう言って彼女は笑った。
「僕の下の名前知ってたんだ。以外だ」
「あんた私の事何だとおもってるの?」
ああもう、まったく、何だよさっきの笑顔は。反則だ可愛いすぎる、兵器かよまったく。
こうして一悶着どころか何着かあったが少しだけ関係が深まった。
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