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二人で夜谷は起き上がってみると、そこにはサンドイッチが四つ盛られているお皿が置かれていた。
「夜谷さん、お待たせしました」
闇野が優しい微笑みで言う。
「あ、すいません。わざわざ」
夜谷は早速サンドイッチを一つ手に取ってそれを口に入れた。
小腹が空いていたのは本当らしく、口に入れる速度が速い。
「んー、やっぱ美味い。闇野さんのサンドイッチ」
「そう言って頂けると有り難いです」
闇野はタッパーなどの使っていたものを次々に片付けていきながら言った。
「いや、もうなんて言うんだろ。純粋な美味しさっていうの? そんな感じでいいと思うよ」
「参考になります」
会話が賑やかになる。
夜谷と闇野は一人を除いて、話を盛り上がらせている。
その時、
「おい、飛鳥」
とやや低いトーンで呼ぶ声がした。
声が止む。
その呼ばれ方に夜谷はこの中で、その呼び方をする人間を見た。
此処には一人しかいない。
「何、嵩人さん」
「一つくれないか」
影山は顔を合わせず、視線の先はパソコンの画面を見続けている。
真剣な横顔が目に映る。
だが、夜谷からすればまだ怒っている顔にしか見えない。
短気にも程がある、と思った。
「何しているんだ?」
言われてビクついた夜谷はお皿の上を見ると、残っているサンドイッチが二つ。
「いらないんじゃなかったのかよ」
と、文句を言うとお皿を持って椅子を下り、影山の方へ近づいた。
夜谷はそっと影山のテーブルにお皿を置くと、ぼそぼそと会話をし始めた。
何を話しているのかは、闇野にはわからない。
しかし、話に一区切りがつくと影山が何か言ったのか、夜谷がふざけんな、と声を荒げた。
これで気が済んだのか、影山の顔には薄ら笑いが見えている。
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