9
お客は最後の最後まで持て成すのが、この喫茶店だった。
「わかりました。では、軽く何かお作りましょう。影山さんも如何です?」
いきなり話をふられ、影山はきょとんとした。
何故なら自分が聞かれるとは思っても見なかったのだ。
「……僕の、夜食かい?」
一応、話は聞いていたらしい。
「えぇ」
さっきからずっとパソコンとの睨み合いっこが続いているのだ。
少しでも気休めも兼ねて
影山は自分の顎を掴み、うーんと唸りながら考える。
困っているようで、迷っているようで。
「そんなに迷うぐらいなら頼んじゃえばいいじゃんか」
横から夜谷が言った。
影山がなかなか物を言わないものだから、居ても立っても居られなかったのだろう。
影山は腕を組む。
「お前、そう軽々しく言うがその代金は誰が払うんだ?」
夜谷を恨めしい目で言うとあっ、という声が上がった。
「いつも誰が払っている」
「え、えーっと」
夜谷は何と返せばいいかわからず、言葉を詰まらせた。
実はこの男、夜谷飛鳥は家庭の事情により仕事仲間の影山嵩人に養われてもらっている。
理由は多々あるが、一番の理由は夜谷自身に通常の生活が出来ないから。
生活能力がからっきしないのである。
料理も出来なければ、機械もカメラが精々、唯一出来ることと言えば掃除ぐらい。
ある意味、問題あり過ぎる
その為、金銭管理など夜谷にとって難しいらしいものは気がつけば影山が管理していた。
これでわかるようにもはや、影山は夜谷の保護者的存在になっている。
だが、彼等は完全に赤の他人同士であり、血縁関係云々という関係はない。
「もういい。食べたかったら食べればいい。僕はいらない」
「いいんですか?」
闇野は確認の為に影山に問う。
金銭に関して気にしているのならば、何とかしようと思ったのである。
簡単なサンドイッチやホットケーキぐらいなら安く作れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます