9

その日の夜だった。

執事は、その後2人によって警察へ連れて行かれフレイヤは一安心し、深く眠っている時だった。

窓やドア、カーテンは完全に締め切っている。

誰も入っては来れない状態。

月が昇り、明かりがカーテンを透けて部屋が少し明るくなっていたその時だった。


コツ・・・


コツ・・・


足音が聞こえて来た。

フレイヤは熟睡している。

そして、足音はついにベットの前で止まった。


「フレイヤさん、フレイヤさん。」


その人は、小さくフレイヤを揺さぶり起した。


「んんっ・・・」


フレイヤは、少しボーっとなりがらも身体を起した。

すると、目の前には帰ったはずのカイが黒いマントに身を包み立っていた。

フレイヤはあっという間にして目が完全に覚めた。


「こんな夜中にすいませんね。実は、報酬をもらいに来たんです。」

「ちょ、ちょっと待って下さい!どうやって入って来たんですか!?」

「あぁ、簡単ですよ。事前にワイヤーで作った仕掛けさえバレなかったらこんな事ぐらい。」


カイはすらりと答えた。

それを聞くにフレイヤは少し寒気を感じた。

嫌な予感がした。


「では、フレイヤさん。本題なんですが、今回の報酬は」


カイは、フレイヤの顎を掴んで目を合わせた。




「・・・貴方の〝血〟を頂きます。」




カイは、そう言うとフレイヤの首筋に思いっきり被りついた。

フレイヤの動きが一瞬にして硬直した。

カイは、被りつき自分の歯で空けた穴から出てくる血を美味しそうに飲んでいく。

それが、数時間続いた。


「ありがとうございました、フレイヤさん。」


カイはベットから下りるとそう言った。

なぜならフレイヤは、顔が真っ青になり血の気が全く無くなっていた。

・・・死んでしまったのだ。


「貴方でもなければ、『あの血』を持つ人というのはどんな人なんだ・・・」


カイはふと独り言を言い、その場を誰にも気付かれないまま去った。




次の朝だ。

新聞記事には、一面に昨日の事件が載っていた。

相変わらずの汚い事務所。

2人は、いつもの所に座って会話をしていた。


「カイ、知ってる?フレイヤさんの事。」

「あぁ、吸血鬼にやられたらしいな。」


カイは、あるファイルを読んでいた。

それには、女性の名前・年齢等の個人情報がぎっしりあり、そして、奇妙な事に写真の家に『×』がひとりずついくつも書かれ丸で囲み『死亡』と記されていた。


「ねぇ、カイ。何か知っている事ある?」


ワートがまた困ったように言った。


「いや、オレは何も知らねぇって。」


カイもカイで素っ気無く答えた。



fin.

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ヴァンパイア・ホームズの日常 時遡 セツナ(トキサカ セツナ) @otukimipanda

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