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すると、フレイヤは眉をしかめてこう言った。


「・・・多分、そういう人は周りにはいないです。」

「そうですか。」


ワートは、カバンからペンとメモを取り出し会話を記録し始めた。


「じゃ、何でこんな事が起きているのかについても心当たりないって事で受け止めていいんですね?」

「はい、大丈夫です。」


カイは、フレイヤの表情を見た。

何処かおどおどしていて、何かを隠してるように見える。

嘘をついていると仮説を立てたカイは、ふとこう言った。


「確か、この屋敷に住んでいる人が貴方と御婦人、そして執事に使いの5人。計して8人ですが、家の主人である御主人はどうなされたんですか?」


フレイヤは、それを聞くと目を見開き驚いた顔をした。


「一週間前にお亡くなりになったのですか?」


カイの質問は続く。

ワートは、細かく話を綴っていく。

これはカイの事件を関わる度にやっている習慣だった。

これがワートの記事の元となり、カイの事件資料にもなる大きな役割を果たしていた。

多くの記者もカイの元へ行くが運良く事件が回って来ずしぶしぶと帰っていく人が多い。

しかし、ワートがふとカイのところへ行くとその日かその前から事件は起きており、見事に事件の解決の瞬間をその場で見ることが出来るという特別とも言っていい運を持っていた。

今もその幸運のひとつだった。


「・・・当たりですか?」


カイが笑って言うと、フレイヤはため息を吐いた。


「いつお分かりに?」


フレイヤは苦笑いをしながら言った。


「バレバレですよ。家族の説明といい、表情といい。言いたいことを我慢でもしてるかのように言っている。探偵じゃなくてもわかりますよ?これじゃあ。」


カイは、満足したかのように紅茶を啜って話を続けた。


「では、本当の話をお願いします。今度は嘘なしで。」


カイは作り笑顔なのだろうか満面の笑顔で言うと、フレイヤは口を開いた。


「貴方の言う通りです。私の面倒を見てくださった父は一週間前に病に倒れ、世を去りました。お2人共わかると思いますが、我が家は財閥です。昔、父と母は間に子供が出来ず、跡取りがいない事で困ってしまった時期がありました。父と母は最終的に自分の子供は諦め、孤児院に住む子供を養子として引き取ろうと決め、私を引き取ってくれました。そこまでは、・・・よかったんです。父は私をとても可愛がってくれました。母はどうも私を気に入ってないようでしたが。そして、月日が経ち、一週間前に父が亡くなった後母が主人として家を継ぐ事になるだろうと思ったら遺言書が出て来たんです。父の部屋から。内容は、この家の跡取りの件で自分が死んだ後は私が家の主人として家をお守りするようにと書かれていました。・・・母が継ぐであろう家をその遺言書により母は主人として家を継ぐ権利がなくなりました。様々な事件は遺言書が出てきたその日から起こり始めました。」


フレイヤが言い切ると、カイは面白がるように笑った。

すると、ワートは


「ねぇ、犯人はもうわかったのかも同然って事にならない?カイ。」


と言った。


「いや、そこまではまだわからない。」

「え?だって。」

「ここに来る前、執事に何か貰いましたね?」


カイは言った。


「え?何の。」

「惚けたって無駄です。いくらふざけていてもやるべき事はちゃんとする人間なんです。手紙を折りたたんで手に隠してた事知ってますよ?」


ついに観念したのか、フレイヤは手に隠していた手紙を開きカイの前へ差し出した。


「何か心理まで読まれている感じがします。さっきから。」

「そんな事はないですよ、探偵に必要な事は細かく人を観察する事にあるんです。ただ自分は貴方の行動を見て言っただけです。」


すごいとワートは心の中で実感した。

鋭い観察力でフレイヤの隠し事がすんなりと消えていく。

手紙をもらっていたなんてちっとも気がつかなかった。

今回もどのようにして答えを導かせるのだろうか、とワートはうきうきしながら話を聞いていた。

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