3

「ねぇ、カイ本当に何か隠し事してない?」

「してない、してない。してたらとっくの昔にこの事件はオレが解決してるし。」


カイはそう言って深いため息をついた。

2人が話しているのはここ2年間続くある殺人事件だった。

若い女性を標的とした事件で必ず被害者となってしまった死体には、首元に二つの穴が開いており血が一滴も残らず抜き取られているという話である。

最初は、綺麗と評判の娘から始まり最近となっては教会に勤めているシスターやオペラの役者まで狙われ、被害は町だけではなく隣町のライヤタウンにまで広がっていた。


2人は、階段を下りて外を出た。

車道には、車が沢山走っていて、歩道にも人が沢山いる。

その中に、ふと奇妙な人がいた。

車道をじっと見ている女性だった。

一台の車が通り過ぎると、ゆっくりと車道を歩こうとした。

向こうからは、次の車が走って来ようとしていた。


「あ、あの人!!」


ワートが言っている内にもカイは物凄い速さで女性のところまで走り、腕を引っ張った。


「きゃあ!」


彼女は、カイの所へ引き寄せられ、車はクラクションを鳴らすとそのまま走っていった。


「お、おい。大丈夫か?」


カイは彼女に言った。


「あ、・・・はい。」

「ったく~、周りちゃんと見ろよ。」

「す、すみません!!」


彼女はそう言うと、慌ててカイに離れた。


「カイー、大丈夫だったか?」

「当たり前だ、バーカ。」

「もう僕運動とか駄目だよぉ。」

「運動駄目とか何だよ。記者だろ?!」


カイは、ふと彼女を見た。


「なぁ、ちょっと言っていいか?」


カイが言うと、彼女はコクと頷いた。

すると、カイは息を吸いこう言った。


「バッカ野郎!!こんな車が多い所を横切るなよ!何考てんだ!自殺する気か!?オレが早く止めてなきゃあの世逝きだったぞ!!」


カイは、言い切ると息を整えてまた深呼吸をした。


「本当にすいません。ちょっとある所を探していて。」

「何処だよ!!」

「えっと、探偵事務所なんですけど知っていますか?有名な探偵さんがいると聞いて。」


それを聞くと、カイの中でスイッチの入った音が鳴った。

被っていた帽子を取り、眼鏡を格好良く外した。


「申し送れました。自分は、カイ・ウェリアム。そこで探偵事務所を開いている者です。年齢は18。現在、彼女募集中です。」


カイが彼女に名刺を差し出すと、ついさっきの人とは思えないオーラを出していた。


「うわっ、出た。カイの特技猫かぶり。」

「何か言ったか?」


ワートがぼそっと独り言を言うと、カイは明るい表情だったが低い声で反応した。


「別に。」


ワートがそっぽを向くと、カイは


「では、事務所で話をお承りましょう。」


と彼女に言った。

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