冬休み前半戦

「あー寒っ……」

「ごめんね……私達の所為で」

「いいよ。俺が勝手にやるって決めたんだから」


 この前四人で遊んだ時に現地集合にしたら、優美がナンパされていたので、今回は優美と明里を迎えに行くことにしたのだ。俺なんかで男避けになるかは疑問だが。


「というか優美ほんとにそれ寒くないの?」

「ぜ、全然さぶぐない」

「めちゃ震えてるじゃん」


 明里はベージュのコートを着て手袋やマフラーといった防寒具もしっかり身に付けているが、優美は布が薄いものを着ているので見てるこっちまで寒くなってくる。一応彼女の家を出るときに確認したのだが、「問題ない」と言ってきたのでそれ以上は言わなかったが、やはり寒かったのだろう。俺も寒いけど、仕方ないか……。


「これ着な」

「いいよ、大聖に悪いし」

「いや、女子にずっと寒い思いをさせておくわけにはいかないからな。それに今風邪をひかれたら困る」

「何で?」

「何でってくr……ほら帰省とかするだろ? 今風邪をひくと帰省できなくなるぞ。……とにかくほらこれ着て」


 危うくバラすところだったがなんとか防げた。あやつもなかなかやりおるなぁ。などと考えていないと焦っているのがバレそうだったので、必死で関係のないことを考えた。

 今二人に風邪をひかれると翔也と準備してきたことが無駄になってしまう。今まであまり風邪ひいてこなかったので自分は大丈夫だろうと思い、着るのを拒んでいる優美に無理やりコートを着せた。

 嫌なのはわかるけど、そんなに拒まれると流石に傷つくなぁ。


「……ズルい」

「ん? 何か言った?」

「ううん。何でもないよ」


 もしかして、明里まで『無いわぁ』とかって思ってるのか? ……まぁそうね。キモいもんね。ごめんね?

 俺が少し落ち込んでいると、明里が明るい声で「あれ三島君じゃない?」と言いながら、手をブンブン振っていた。


「ん……そうみたいだな」

「おーい!」

「ちょっと優美さん恥ずかしいからやめて……」


 優美が大きな声で翔也を呼んだので、周りの人から凄い見られている。本人はこういうことはあまり気にしないだろうが、俺たちの方が恥ずかしい。

 どうやら翔也もこっちに気づいたらしく、小走りで近寄ってきた。


「朝から元気だね」

「ほんとだよ……。一日中このテンションでいられるって凄いよな」

「えへへ」


 皮肉のつもりで言ったのだが、優美には効果が無かったらしく、嬉しそうに笑っていた。こんだけ頭がお花畑だと幸せだろうな。


「んじゃ、行くか」

「れっつごー」



     ☆   ☆   ☆



「うわー。久し振りだからテンション上がる」

「走ると危ないぞ」


 今日は水族館に来たのだ。買い物でも良いと言ったのだが、それだと俺と翔也が暇になるとか言って水族館に行くことになった。


「でも久し振りだから私もちょっと楽しみ」


 珍しく明里もいつもより浮かれているようだった。まぁ、俺もちょっと……いやだいぶ楽しみだけど。


「私達も行こっか」

「そうだな」


 優美はどんどん行ってしまったが、高校生だしきっと迷子にならないだろうけど一応追いかけなきゃな。と考えていたら迷子の案内の館内放送が流れた。


「今は冬休みだから小さい子もたくさん来てるんだね」

「あぁ……」


 俺が今フラグ立てたのが悪かったのか? いやまさかね。だって高校生だよ。

 俺の返事が気になったのか翔也が俺の顔を覗き込んできた。


「ん? 大聖どうかしたのか?」

「嫌な予感がするんだよ」

「どんな?」

「それはy……」


 俺が抱いている嫌な予感を翔也に説明しようと口を開いたのと同時に迷子の子の名前と特徴が放送された。


「……これが俺の嫌な予感」

「あはは……」


 明里も翔也も苦笑いでこっちを見てきた。


「迎えに行くか」

「あぁその前にリード買ってきていいか?」

「大聖いつから天○人になったの?」


 いや、俺はマリー○ョアに住んでないから。ていうかあいつらはリードどころか首に爆弾着けさせてたじゃん。俺そんな酷いことをするつもりはないからね。


「俺そんなに酷くないから」

「はいはい訳わかんないこと言ってないで迎えに行くよ」


 国民的なマンガを知らないとは……。明里がジト目でこっちを見ながら迷子センターの方を指差している。

 まぁ確かに早く行かないと優美が可哀想なので急ぐとしよう。






 幸い迷子センターは俺達がさっきまで居た場所から近かったのですぐにたどり着いた。


「迎えにきたよ」

「明里ちゃーん」


 優美はよく目立つのですぐにわかった。明里が声をかけたら少し涙目になっている優美が明里に抱きついた。

 二人が百合百合しているのは微笑ましくて良いのだが、二人とも美少女なので周りからの視線が凄い。当の本人達はあまり気にしていないようだが周りに居る俺と翔也は視線が気になってしょうがないし、とても恥ずかしい。


「合流できたし早く行こう」

「え、ちょっと待ってよー」


 どうしていつもこういうことばかり起こるんだ? もう俺が慣れるしかないのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校一の美少女が冴えない俺にデレてくるんだが ばーむ @KouP

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ