楽しいお出かけー買い物編

「着いたけど、何処に行くの?」

「うーん。とりあえず服から見ようかな」


 本気で買い物する気だな。あんまり荷物が多くならないといいなぁ。


「安心して今日はそんなに買うつもりはないから。今日は遊ぶのがメインだからね」

「移動しやすいようにしとかなきゃ」

「さいですか」


 なら、買い物じゃなくて遊戯施設とか遊園地とかに行けばいいんじゃね。と思ったのは内緒だ。


「じゃあ、とりあえず行きますか」

「レッツゴー」





 俺たちは今ショッピングモール内にある○Uに来ている。


「ねぇ大聖どっちが似合う?」


 優美が右手に黒のダウンコート、左手にクリーム色のトレンチコートを持って現れた。


「なんで俺に聞くんだよ……。翔也とか吉田さんの方が、俺よりファッションセンスあるだろ」

「いいからいいから」


 そんなこと言われても、優美は顔もスタイルも良いからどれも似合うんだよな。……身長? 小さくて可愛いよね。そのおかげでコートがだぼっとしており、彼女の可愛らしさが際立っている。


「どっちも似合ってるからなぁ……」

「嬉しいけど、その答え方はダメだよ」


 あざとい……。優美は頬を膨らませながら、顔の前で人差し指を交差させて小さくバッテンを作っていた。


「わかってるけど……」


 もう一度考えたが、やはりどちらも似合っている。俺がしばらく悩んでいたら、優美にため息をつかれた。


「まぁ今日はそれで許してあげる。でもまた今度付き合ってね」

「はいはい」


 次遊ぶときは完全に荷物持ちだな。最近遊んでなかったから、たまにはいいか。


「マネキン並みに何でも似合うな」

「うおっ。……いつから居たの?」


 いつの間にか背後に居た翔也に驚いた。翔也ってアサシンの素質あるんじゃね? 黄色いタコに弟子入りしてこいよ。


「それより、あれ見てみ」

「ん?」


 翔也の視線の先には、着せ替え人形のようにいろんな服を着させられそうになっている吉田さんが居た。どんな服でも似合うため、店員さんが興奮しているようだ。あ、勿論店員さんは女性だよ。って、誰に言ってるんだろ……。


「大変そうだな……」

「助けてって目をしてるぞ」


 店員さんが楽しそうだったので、少し言いづらかったが、案外素直に止めてくれた。吉田さんは凄く疲れた表情をしていたので、店員さんは申し訳なさそうな顔をして謝っていた。


「服以外に何か買いたい物って何かあるの?」

「今は特にないかな」


 ショッピングモールのパンフレットを見ながら吉田さんが答えた。


「ならちょっと行きたい所があるんだけど」

「何処?」

「書店に行きたい」


 俺が今一番はまっているライトノベルの最新刊が先週発売されたのだ。他にも気になっている本があるのでそっちも買うつもりだ。


「じゃあ、道案内よろしく」

「へいへい」





「何でずっとついてくるの?」

「ん?」


 吉田さんが可愛らしく首をかしげた。

 さっきからずっと優美と吉田さんがついてくるんだが……。翔也なんて本屋に着いたらすぐにどっか行っちゃったのに。俺についてきたって楽しくないだろう。


「あぁそういうことね」

「どういうこと?」


 優美は俺の考えていることがわかったらしい。言わなくてもわかるとは、流石幼馴染み。でもなんかあの笑顔どこかで見た気がする。しかも理由はわからないが、嫌な予感がする。


「……大聖はエッチな本を買いたいから、ついて行かれたら困るんだよ」

「おい」

「そうなの?」

「違う」


 思い出した……。あの笑顔は優美が悪巧みをしていたときに浮かべていたものだ。つまり……わざとってことだよな。


「そうだよね。大聖にはエロ本なんて必要ないもんね」

「お、おう」


 意外とあっさり止めたので、どうかしたのかと思い彼女を見たら、ニヤリと笑みを浮かべていた。おい待てその顔は……。


「ちょっ、やm」

「大聖の傍にはこんな美少女が居るんだからエロ本なんて必要ないってことだよね」

「…………」


 やりやがった。

 あいつご丁寧にわざとらしく自分の肩を抱いてやがる。吉田さんは顔を朱く染めながら口をパクパクさせていた。そして俺と目が合うと俯いてしまった。周りからは白い目で見られており、視線が痛かった。……オワタ。


「……あれ? やりすぎちゃった?」

「もう手遅れだ」

「……ごめん」


 優美が謝ってきた。声からして本心だろう。


「いいよ。俺の精神的ダメージが大きいだけだから」

「怒ってるじゃん……」

「冗談だよ」


 優美が悲しそうな表情をするので、流石に可哀想になってしまい、すぐに止めてしまった。罪悪感半端ない。

 優美は少し拗ねていたが、すぐに切り替えて再び話しかけてきた。


「何で私たちに何処かに行ってほしそうにしてたの?」

「何処かに行ってほしいわけじゃないよ」

「違うの?」

「じゃあどういうこと?」


 え? 俺そんなに冷たくしてたっけ? 二人ともそう感じたのか……。


「ついてきても二人は楽しくないだろうから、本を見てきていいよって言おうとしたんだよ」


 俺が買おうとしてるのはラノベばかりだから、二人は興味ないだろう。まぁ、二人の本の好みなんて知らないけど……。


「私本読まないし」


 そうね。君は読書苦手だもんね。


「私もこの前本を買ったばかりだから今日はいいかな」

「さいですか」


 まぁ二人がいいならいいか。

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