幼馴染み

「寒……」

「早く暖かくなればいいのにね」


 昨日帰り道で言われたように俺は吉田さんと二人で登校していた。もちろん翔也は朝練があるので、先に行ってしまった。


「朝から練習って運動部は大変だね」


 前に何回か翔也とキャッチボールをしたことがあるけど、冬にやったときはいつもより痛かったのを覚えてる。冬の朝から野球の練習とか考えたくもない。


「あ、そういえば今日転入生が来るって言ってたけど、どんな人だろう?」

「あぁそのことなんだけど……」


 俺はその転入生のことを知っている。何日か前に母さんから聞いた。その転入生のことを吉田さんに話そうとしたら、後ろからパタパタとテンポのよい足音が聞こえてきた。


「大聖~久しぶり~」

「朝から元気だな、優美」


 彼女はもり 優美ゆみ。俺の幼馴染みだ。優美は運動が得意で吉田さんより、運動神経がいいだろう。勿論俺とは比べものにならない。身長が低く、顔は整っており、身長の方は成長しないのに、胸は凄く成長している。彼女とは幼稚園、小学校と一緒だったが、中学校は別だった。


「紹介するね。コイツは優美、俺の幼馴染み」

「よろしくー」

「よ、よろしくお願いします」


 本当に元気な奴だ。再会したばかりなので言いにくいが、少しは吉田さんを見習ってほしい。まぁでも明るいところが優美のいいところなんだがな。


「んで、こっちは吉田さん」

「うわー美人。……まさか大聖の彼女?」

「そんなわけないだろ。どう考えても……いやなんでもない」


 昨日釣り合わないって言ったら、怒られたんだった。怒られるのは嫌だからな。ちょっと怖かったし……。

 それより何で吉田さんはガッカリしてるんだ? それより優美のやつ、笑顔になりやがって。そんなに俺に彼女がいないことをバカにしたいのか?


「じゃあ私先に行くね。先生に用があるから」

「あぁ。気を付けろよ」


 なんか久しぶりに優美の相手をしたら、疲れたな。でもそのうち馴れるよな。


「俺たちも行こっか」

「うん……」


 やっぱ元気ないな。俺何かやらかしたのか?




     ☆   ☆   ☆



「何であいつが……」

「クソッ」

「藁人形を持ってこい」


「た、たいへ、ん、だな」

「おい笑ってんじゃねぇ」


 どうやら優美が俺たちと同じクラスだったらしい。そこまではよかった。しかし、優美が俺の幼馴染みということで、優美の席が俺の隣になった。俺はそんなマンガみたいな展開は求めてないのに……。

 吉田さんと最近仲良くしていて、優美と席が隣になった俺をクラス中の男子が恨んでる。翔也は楽しんでるが。いくら俺が美少女二人と仲良くしているからって、恨むのはやめてほしい。

 それと何故かいつもより吉田さんに見られてるような……。


「もう帰りたい……」

「昼休みは一人にするか?」

「いやお前は居てくれ」

「バレたら俺を盾にするってことか。まぁこれくらいはやってやるよ」

「頼む」


 昼休みまで耐えればなんとか休めそうだ。早くこれに馴れないとな……。





 四時間目が終わったら、すぐに弁当を持って翔也と一緒に教室を出た。屋上には二人しか居ない。……はずだった。


「……で、なんで君たちが居るんですかね?」

「えへへ」

「だって……今日全然大聖君と話せてないもん」


 二人ともかわいいので、つい許してしまいそうになる。

 普通に言っても聞いてくれないだろうなと思い、何て言おうか考えていると、笑いをこらえている翔也が視界に入った。お前を信じた俺がバカだった。


「翔也には後でお礼をしないとな」

「それって本当にお礼なの?」

「いやいや、吉田さん大聖がそんなに良い奴なわけがないでしょ」


 みんなが俺と仲良くしてくれるのは嬉しいけど、流石にこれは疲れる。昼休みくらいは静かに過ごしたかったなぁ。


「そういえば、何で優美は転校してきたんだ?」

「聞いてないの?」

「何を?」

「私一人暮らしすることにしたの」

「……で?」


 俺は視線で続きを促した。すると、優美は頷いて続きを話し始めた。


「お父さんが、大聖が居る学校に転校するっていうのを条件に出したの」

「は? 何で?」

「細かいことはいいの」


 一人暮らしをするということには少し驚いたが、今時珍しくもないかもな。それより優美の親父さんが許可を出したことの方が驚いた。まぁ娘が美少女だから過保護になるのもしょうがないのか?


「あと、私の家は大聖の家の近所だから、たまに遊びに行くね」

「断っても来るくせに」


 でもきっと、母さんが喜ぶだろうから、断るつもりはないけど。こっちに引っ越してくるって聞いたら、凄く喜んでた。


「俺も最近行ってないから遊びに行こっかな」

「いいけど、お前は二週間前に来ただろ」

「あ、あの……私も遊びに行っていい?」

「勿論いいよ」

「なら、同じ日にみんなで遊ぶか」


 翔也もたまにはいいこと言うな。みんなで遊べば、仲良くなれるかもしれないしそれがいいかもしれない。


「そうだな。でも、その前に早く弁当食べようぜ。昼休みが終わっちゃう」

「あぁ」


 遊んだときに面倒なことが起こりませんように。……フリじゃないからな。

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