学校一の美少女
最近はあまり女子と会話をしていないのに、初対面かもしれない女子に話しかけるとかちょっとレベル高くないですかねぇ……。
しかしそんなことを言っていてもどうにもならないので、恐る恐る話しかけた。
「あ、あのどうかしましたか?」
「…………なんでもないです」
「え……でも」
「いいから……ほっといてください」
この声って……たぶん吉田さんだよな? 何でこんなところに居るんだ?顔が見えないから確証はないけど。
どうしよう。まぁでも制服を着ているってことは学校に行く気はあるのか?
「えっと、学校は? 行かないの? 今から行けば一限には間に合うと思うけど」
「今日はもう帰るからいいです。あなたこそ早く行ったらどうですか?」
うっ……。ごもっともです。まぁでも今まで無欠席無遅刻だから一回くらい大丈夫でしょ。皆勤賞? なにそれ美味しいの? バカだからよくわからないなぁ。(IQがた落ち)
「えっと、疲れたから休憩」
「…………」
「だからもうちょっとここに居てもいいかな?」
「……………………」
無視!? マジか。
さすがに俺に興味なさすぎない? こんな態度ばっかとられると傷つくんだが。
というかさっきから吉田さんがずっと俯いてるから俺がヤバい人にしか見えなさそうでヤバい。何がヤバいって女子高生を泣かせたヤバい奴か、大きな声で独り言を言っているヤバい奴にしか見えなさそうでヤバい。(語彙力死亡)
これは早めに何とかしなくては。
「あ、あの何かあったの?」
「…………」
「俺で良ければ話聞くけど」
「なんでもないって最初に言いましたよね。ほっといてください」
だんだん語気が強くなってるな。それに拳を握る力も強くなっている。余程人に聞かれたくないことなのだろうか? 彼女が嫌がっているかもしれないことを考えて引き下がるべきなのかもしれない。
しかし、いくら空が明るいからといっても彼女を一人にするのはなんだか危ない気がする。
どうしようか考えているうちに喉が渇いてきた。まぁさっき全力で自転車を漕いでいたので当たり前だろう。
このままずっと同じことをしていても何も進展しなさそうなのでとりあえず公園の近くにある自販機で飲み物を買うことにした。
自販機まで来たのはいいけど、吉田さんの分の飲み物は何がいいかな? 吉田さんとはあんまり話したことないから、好みとかわからないんだよな。まぁ無難に水とお茶にしてどっちか選んでもらえばいいか。
自販機からベンチまで戻る間もどうしようか考えたが何もいい考えが思い浮かばなかった。どうしよう……。
恨むぜコミュ力が無い俺。
許せコミュ力がある架空の俺。
はぁ。何やってんだろ俺。
「これ飲む?」
彼女はとても驚いた表情をしていた。こんな時でも彼女の顔を見て、綺麗だと思う自分がアホらしい。まぁでもやっと顔をあげてくれてとりあえずほっとした。
「え? どこかに行ったんじゃ……」
どうやら俺が自販機に飲み物を買いに行ったのを、諦めてどこかに行ったと勘違いしていたらしい。
「いや、これを買いに行ってた。えっと、どっちがいい?」
「いらない」
吉田さんは無表情になっていたが、もう俯いていない。それだけでも大きな進歩だろう。
「でも俺二本も飲めないから」
「……じゃ、じゃあ貰う。ありがと」
そう言って彼女は水を受け取ってくれた。
それよりぶっきらぼうにお礼言うとか可愛すぎるだろ。……いや落ち着け俺。
とりあえずお茶を飲んで、喉を潤しながら、冷静になって、もう一度考えたがやっぱり何も思い浮かばなかった。そのせいで少し長い沈黙が生まれ、彼女は居心地が悪いのか水を飲み、視線がせわしなく動いていた。
もうこれしかない……。
あんまりこういうことはしたくないんだけど他にいい案が思い浮かばないので仕方がない。まぁ最悪嫌われてもいい。どうせもともと諦めなければいけない相手なんだから、相手から嫌ってもらえたら嫌でも諦めることになるからな。ごめんね吉田さん。
「あ、あのさ水をあげたお礼に一つだけ質問に答えてくれないかな?」
「…………そういう人だったんだ。嫌に決まってるでしょ」
彼女の視線が鋭くなる。声音もさっきより若干低くなっている。明らかに嫌悪感が出ている。まぁ覚悟していたことだ。そりゃ誰だってこんなことをされたらそうなるに決まっている。俺だって誰かにやられたらムカつく。
「答えなくてもいい。だけど無言は肯定と捉えさせてもらうよ」
うわなんか俺イキってる。これ明日死にたくなるやつやん。すまない明日の俺。
「っ……」
「今の吉田さんの悩みは誰にも知られたくないことなの? 言いたくないことなの?」
「……………………」
念のため少し長く返事を待っていたが、返事は返ってきそうにない。
どうやら答えは『YES』らしい。ならばもう俺にできることはないな。これ以上聞いたらそのことが彼女を傷つけることになるからな。
「わかった。もうこれ以上は聞かないようにする」
「え?」
彼女は驚いているようだった。なぜそんなに驚くんだ? 嫌だと言ったのは吉田さんなのに。いくらさっき汚い手を使ったからって、俺は人が嫌がることを喜んでするような鬼畜じゃない。
「だって嫌なんでしょ? なら無理強いはしない。嫌な思いはしてほしくないから。あと、さっきはごめんなさい。騙したり、しつこく話を聞こうとしたりして」
「え? あ、うん」
なんだよその顔。可愛すぎるだろ。まぁでも吉田さんは高嶺の花だから俺には無理だし、汚い手を使ったから嫌われただろうけど。
「でもこれだけは約束してほしい」
「……」
彼女は黙ってこっちを真剣な眼差しで見ている。どうやら続きを待っているようだ。
「いつか話せるようになったら話してほしい。俺には話したくないだろうから信頼できる人でいい。無理にとは言わないけど、できれば誰かにその悩みを打ち明けてほしい。一人で抱え込まないで。きっと周りの誰かが助けてくれるから」
「……」
彼女の表情が一瞬暗くなった気がするが、何か地雷を踏んだのだろうか? それとも嫌いな人からのお願いは聞きたくないのだろうか。
「ごめん。あんなことする人のお願いなんて聞きたくないよね。忘れて」
「ううん。わかった。約束する」
「ありがとう」
これで俺の役目はあと一つだ。
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