学校一の美少女が冴えない俺にデレてくるんだが
ばーむ
公園の女子高生
俺、
「吉田さんさっきのとこ教えて~」
授業が終わってすぐに女子生徒がノートを持って彼女のもとへ歩いていった。
「OK。えっとね……」
「あぁ。そういうことね。ありがと~。やっぱ先生よりも吉田さんの方が教えるの上手だわ」
その言葉にピクッと反応した数学の教師が肩を落としてガッカリして、教室から出ていった。……先生ドンマイ。
「そんなことないよ」
「いやいやマジでわかりやすいから」
彼女は容姿端麗、成績優秀、スポーツも得意。髪は綺麗な茶髪のロングヘア。スラッとしているのに出るところは出ているので余計に強調されている。高身長で手足も長く初対面の人にモデルだと言っても全員信じてしまうだろう。誰がどう見ても彼女は学校一の美少女だ。
対して俺は身長はそこそこ高いが、勉強もスポーツも平均かそれよりも少し上くらい。もちろん顔も普通。スクールカーストは……察してくれ。どこからどう見てもそこら辺にいそうな男子高校生。いわゆるモブだ。友達を作らn……いないのを除けば。
こんな俺と吉田さんが釣り合うわけもないので、いつも通り遠くから吉田さんを眺めながら『いい加減諦めろ』と自分に言い聞かせている。
「よぉ。何してんだ? 吉田さんのことをずっと見つめて」
めんどくさいタイミングで来やがって……。しかもおもしろいネタを見つけたってメチャクチャ顔に出てやがる。
「ニヤニヤしながら聞くな。絶対わかってんだろ」
「いやぁ。そんなことないよ。マジでわかんないから教えてくれよ」
だからニヤニヤしすぎだろ。今の翔也の顔を撮って見せてやりたいよ。というか隠すの下手すぎんだろ。隠す気あるのか?
「……いいぞ」
「え? マジで?」
OKが出ると思っていなかったのかとても驚いた顔をしている。いつも余裕そうな翔也に一泡吹かせてやれた気がして気持ちよかった。
「ああ。ただし教えた後に翔也が永眠するという条件付きでもよければだが」
「ケチだなぁ」
「ほっとけ」
そう簡単に教えてやるかよ。いや翔也はたぶん気がついているから別に言おうが言わまいが関係ないのか。
こいつとは中学校から一緒で、ずっと同じクラスになっている俺の唯一の友達の
イケメンで野球部のエース。身長は俺よりも高く190cmくらいはあると思う。翔也は見た目だけではなく中身もイケメンなのでメチャクチャモテる。
「そうだ昼飯どこで食べる?」
「んー。いつもと同じで屋上でいいんじゃね」
「大聖は屋上が好きだな」
すごく嬉しそうに笑ってやがる。というか屋上が好きなのは翔也だろ。翔也は高いところからこの町を見おろすのが好きらしい。
「いや考えるのがめんどくさいからいつもと同じにしてるだけ」
翔也は俺と違ってカースト上位にいるのにいつも俺と一緒に昼飯を食べてくれる。もちろん体育のペアもだ。恥ずかしいのかわからないが、直接感謝を言ってもすっとぼけるのでいつも心の中で感謝している。
「あ、そうだ。ついでに数学の課題教えてくれよ」
本当は中学生の時にいつも独りで食べていた俺のことを気遣って一緒に食べようと声をかけてきてくれているのだろう。本当に翔也には感謝してもしきれない。わかりやすい嘘をつきやがって。バレないとでも思っているのか?
「まぁ別に教えるのはいいけど、今度のテスト大丈夫か? 特に英語」
翔也は運動は滅茶滅茶得意なのだが、勉強が苦手らしい。漫画やラノベの世界でよく出てくるイケメンパーフェクトヒューマンではないのだ。……なんかカタカナばかり並んでると馬鹿っぽく感じるな。
強調したところに悪意はないよ。ホントホント。
しかし翔也は器用でだいたい何でもできるので、真面目に勉強に取り組めば人並みかそれ以上はできるようになると思うんだが……。まぁかなり追い込まれたら嫌でも本気を出すだろう。
「嫌なこと言うなよ……。考えないようにしてたのに。ていうか今何か失礼なこと考えてただろ」
翔也にジトッとした目で睨まれた。
もしかして翔也はエスパーなのか? いやたまたまだよな……。
「気のせいだろ。でもちゃんと勉強しとけよ」
「へいへい」
コイツ絶対聞いてなかったな。最後の方とか窓の外見てやがった。返事も適当だったし。
まぁでも翔也のおかげで俺は楽しく学校生活を送れているんだから翔也が本当に困って頼んできたら俺はいくらでも手伝ってやるつもりだ。せめてこれくらいの恩返しはさせてもらわないと。
「大聖は優しいよな。そういうところをみんなに見せればもっと友達ができると思うんだけどな」
「うるせぇ。余計なお世話だ」
翔也が急に真面目な顔になったから何かと思ったら、そんなことかよ。
俺は偽善者だ。優しくなんてない。
「あと俺は大聖と一緒に居るのが楽しいから一緒に居るだけだ。勘違いすんな」
「俺の思考を読むなよ……」
急にそんなことを言われると照れる。しかもこれが計算や嘘ではないってわかるから余計に照れる。翔也がモテる理由ってこういうことなんだろうな。
「別に大聖の思考を読んだわけじゃないぞ」
「は?」
「大聖わかりやすいから。顔見たら、だいたい何考えてるかわかる」
「さいですか」
俺も人のこと言えないな。
顔見たらわかるって翔也は俺のことを好きすぎだろ。……いやないな。俺たちにはそんな趣味はない。
ていうかやっぱエスパーだろアイツ。
★ ★ ★
「ヤバい。遅刻する」
俺は寝坊をし、急いで学校に向かっていた。今の季節は冬なので上着を着ているため、全力で自転車を漕いでいると、汗で中のシャツがかなり濡れる。気持ち悪い。
信号で止まったときにふと近くの公園を見たら、公園のベンチに座っている女子高生を見つけた。しかもうちの制服を着ている。しかし俯いていているため彼女の顔は見えないので、誰なのかはわからない。
平日の朝ということもあり、周りには誰も居ないため彼女は目立つのだ。
そのまま学校に向かおうかと思ったが、時計を見たところもう間に合いそうにもないのでとりあえず声をかけてみることにした。
自転車を公園の入り口付近に止め、彼女のもとへゆっくり歩いた。
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