驕る盛者はエクスマキーナーに久しからず虧く

@dekai3

プロローグ

 はーい、次の方どうぞー。


 はいはい、ここに座って下さい。えー…お腹を刺された?

 ちょっと見せて貰えますか? ほら、手をどかして…うっわ、刺さってる。よく我慢して待ってましたねあなた。

 まあでも、抜かずに来たのは正解ですよ。抜いたら傷口が広がって血がもっと沢山流れてましたから。とりあえずここに横になれます? あ、一旦座ったら力抜けちゃいました?

 仕方ないですね、ちょっと抱えますから痛いの我慢してください。

 よっ………と。


ドサッ


 はい、じゃあもう今すぐ抜いて中を見て色々縫うので覚悟して下さいね。

 え、何? 本当に治せるのかって?

 そりゃあ非合法だし未登録ですけど、これでもそこらの医者よりは知識も技術もありますよ。なんてたって前時代の技術をそのまま身に付けてますから。

 それに、今の時代はサイボーグや義体ユーザーばかりで生身の人間を診れる人って少ないでしょう? だから相対的にこの辺りでは私が一番生身の人間に詳しい医者って事になります。


 って、あー。これ内臓までいっちゃってますね。

 じゃあちょっと時間かかるな。仕方ない、次の患者さんには帰って貰おう。

 それと、ここまでは気力で持ってたんでしょうけど流石にそろそろやばめなので、この酸素吸入やら痛み止めやら諸々をしてくれるヘルメット付けますよ。

 大き目だからサイズの問題は無い筈です。ほら、ちょっと頭上げますよ~。はい、これでとりあえずは大丈夫。


 えー、じゃあこれからこの大きなナイフを抜いて傷口を縫っていくんですけど、何か質問はありますか?


 はい、はい。え、そんな事気になるんです?

 確かに街の方でも私と同じぐらいの技術の人はそうそう居ないとは思いますけど、私のこの知識と技術は真似出来ないですよ?

 ちょっとずるい事してますからね。


 え、聞きたい?

 死ぬかもしれないから気になる?

 気になったままだと化けて出るかもしれない?


 アッハハハ。死に損なって化けて出るって言うのなら、今頃この辺りは幽霊だらけですよ。

 まあ、いいでしょう。どうせ傷口や内臓を縫うのは簡単だけど時間がかかるから面倒ってだけで、手術中はヒマなんですし。





 あれは、私がまだとても小さかった頃の話でして、今から結構前の話です。

 その日はとても良く晴れていて、私は昼頃に村の”お勤め”の為の材料を取りに村の外へ出て花畑に向かったんです。


 ええ、花畑です。

 一面に色んなお花が咲いていて、小さな川が流れていて、お日様の光を全身に浴びられる花畑があったんですよ。

 今はもう、そうとは思えないでしょうけど、当時の私にはとても素敵な花畑だったんです。

 そこで、私はあのお二人に出会ったんです。


 私を外に連れ出してくれた、神様と、女神様のお二人と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る