第4.5話


『デザインヒューマンプラン』


約三十年前、Dr.ゼラという研究者によって発案された、遺伝子操作を施した人間を生み出すこの計画は突如として破綻した。

コペル王国を発展させるという建前で優秀な子供を欲した貴族たち。その欲を形にしたのがデザインヒューマンプランでありデザイナーズチャイルドであった。

Dr.ゼラは自身しか知らないの生成法でデザイナーズチャイルドを生み出し育て、秀でた才能が確認できた段階で貴族へと高値で売る。いわゆる人身売買を公的に行なっていた。中でも、デザイコレクションと呼ばれる子供たちには法外な価格がつけられ、誰も手を出すことはなかったそうだ。


しかし、いざ実際にデザイナーズチャイルドが世に根付くと、その力を良くも悪くも遺憾なく発揮してしまう。学業、運動、仕事効率において頭角を現し、並外れた実力が世に知れ渡ることにより国民の不安を煽ってしまったのだ。純粋な人間の居場所がなくなると危惧し、疎まれるようになっていくのは明白だった。

疑念の声は次第に強くなる。それに伴い、デザイナーズチャイルドの振る舞いも目に余るようになっていった。反発する為、自分たちの否定をねじ伏せる為に武力行使など行き過ぎた力の使い方をしたのだ。


こうなると当然、デザインヒューマンプランを推奨していた王国も無視できない状況になっていく。


そこに決定打を打ったのはある哲学者だった。哲学者は『デザイナーズチャイルドが秩序を乱し、純粋な人間の生活を奪う』という言葉と共にその原因を論理、科学の両面から導いた研究結果を世界に広めたのだ。これによりコペル王国は国内外から批判を受けるようになり、厳しい立場に追いやられることになる。

他国との関係を悪化することを恐れたコペル王国、一般市民から批判の的になった上級貴族はピンチを感じると掌を返す。


責任を発案者であるDr.ゼラに背負わせ、首謀者に仕立て上げることで解決しようとしたのだ。Dr.ゼラが危険な人体実験を行なっていることを詳らかにし、王国を壊そうとしているテロリストであることを公に発表した。上級貴族らも血の繋がりのないデザイナーズチャイルドに対し迫害し、Dr.ゼラから購入した事実を揉み消したのだ。


この事実を知っているのは張本人であるデザイナーズチャイルドと真実を塗り替えた国王、貴族の人間だけ。今も国民を騙したまま偽りの平等社会を築いている。

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