三月二十七日 さくらの日

 日本の国花でもある「桜」—— 例年三月の下旬頃を暦上「桜始開」と呼ぶそうだ。「さくらしかい」と読みたいところだが、この場合は「さくらはじめてひらく」と読むらしい。


 公益財団法人 日本さくらの会によって平成四年(一九九二年)に制定された記念日とのことで、三月二十七日が選ばれたのは桜始開の時期と重なることの他に、さくらと九九の掛け算(三九=二七)の語呂合わせだという。

 同会は昭和三十九年(一九六四年)の東京オリンピックを機に桜の愛護、保護、育成普及に力を入れている元国会議員が創始した団体と公式アナウンスされている。


 一説によると弥生時代には桜の開花は既に生活に密接していたという。

 桜が咲いたら農作業の本格的なシーズンに入るという認識だったようだ。

 時代を少し下り万葉集にも桜を読んだ歌は散見される。

 奈良時代「花」といえば「梅」を指していたが、平安時代以降徐々に「花といえば桜」と認識されるようになり春の花として、万葉集の頃に比べて四倍量ほどの和歌が詠まれていたりする。

 豊臣秀吉も大金を投じて桜宴会用の植樹をしているし、現在の花見の原型は江戸時代には確立していた。

 ソメイヨシノが栽培品種となったのも江戸時代後期の頃とされていて、明治時代になると桜といえばソメイヨシノと言われるほど世間を一世風靡した。


 そんな桜は学名をCerasus(ケラスス)という。

 ラテン語でそのまま「桜」を指す言葉だそうだが、我々には英名チェリーブロッサムの方がよほど耳馴染みは良いだろう。

 因みに桜は厳密にはバラ目バラ科サクラ亜属という括りで、バラ科の亜種的な立ち位置だ。(バラは手入れしないと屋根より高いトゲトゲ大木になるよ)

 シーズンが終わるとジャン切りにしてしまうバラとは異なり、どちらかというとサクラは刃物を嫌う。

 不用意に枝を落とすとそこから傷んでしまうことも、ままあったりするそうだ。


 現在日本の桜の約八割を占めるソメイヨシノは、厳密にはエドヒガンとオオシマザクラの交雑で誕生した「雑種」という扱いになるそうだ。

 その栽培品種は全て一本の交雑原木から派生したクローン個体であることが平成七年(一九九五年)に明らかにされている。だから開花時期がおおよそ一斉に被るらしい。


 日本の桜は古来から様々品種の掛け合わせがなされてきたそうで、一説にはざっくりと六百種を超えているそうだが、そのベースとなる桜の野生種は十数種程度であるらしい。

 桜は元々交配しやすく、突然変異体が発生しやすい種なんだそうだ。


 日本さくらの会によると、その主だった原種に挙げられるのが、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、ミヤマザクラ、カンヒザクラあたりらしいのだが、これらを総称して「山桜」と呼んでいる。

 一方のソメイヨシノ、カンザクラ、コヒガン、オオカンザクラといった品種は園芸用の栽培品種であり、「里桜」に区分されているようである。

 叶うならば、六百種をも超えるという桜を一堂に会して拝見したいものだ。

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