三月十九日 眠育の日

 三一九と眠育みんいくの(若干強引な)語呂合わせ。

 寝具メーカー大手、西川株式会社が提唱、一般社団法人 日本記念日協会の認定を受けたオフィシャル記念日だ。

 子供たちの健やかな成長に欠かせない睡眠習慣について考えるきっかけ作りとのことらしい。


 同社によると、子供の成長段階によって「眠るためのリズム」が異なることを改めて指摘している。


 特に新生児は睡眠習慣がまだ定着しておらず、数時間おきに眠っては目覚めを繰り返すのがリズムであるため、ご両親が最初に経験する寝不足試練と言える。

 概ね一歳半くらいになると細切れ睡眠を卒業できるようになるが、睡眠の取り方を成長の過程で学習しているということのようだ。

(夜にまとまった時間眠るという行為は日々の訓練の賜物と言える)


 ご両親と同じ時間帯にぐっすり眠るとは、つまり幼いながらに身に着ける最初の社会性である、という考え方だ。

 ご両親の生活リズムがもれなくこの時期の赤ちゃんの睡眠リズムに影響を与えているため、規則的な生活習慣を意識することが大事——改めて言われると、とても耳が痛い。


 さて次に、少し成長した子供たちにとっての適切とされる睡眠時間は十時間であるとされている。

 逆算して朝七時起床を想定すると、夜九時の就寝、そこから特に入眠三時間で深い眠りにつけるかが大事であるとされている。

 この三時間の間に成長に必要なホルモンの分泌が促され、また脳内、体内に蓄積している疲労を解消できるというのだが、それが適切に行われることが重要というわけだ。


 これが解消できない状態のことを、昨今「睡眠負債」などと表現しているのだが、こんな年齢から借金ならぬ借眠を抱えさせるのは何だか色々と申し訳ない気持ちになる。


 成人した大人でも理想とされる睡眠時間は八時間であると提唱されているが、実際には平日で平均七時間強、休日でも八時間には満たない結果となっている。


 余談だが、一日六時間睡眠を続けた場合、およそ二週間で脳は完徹二日同等レベルに疲労を溜め込みパフォーマンスが低下するという実験結果が出ているという。

 そして、働き盛りと言われるアラサー、アラフォー、アラフィフあたりのカクヨムでも大きなπパイを占める世代では、実に三人に一人の割合で睡眠負債を抱えているというのが現状だそうだ。

(かくいう筆者も自覚している一人である……なぜヒトは睡眠貯蓄できんのだ。負債ばっかり抱えさせおって)


 平均七時間睡眠として、毎日「一時間の睡眠負債」を抱えていると仮定すると、身体的な影響としては数週間を過ぎたあたりで自律神経に乱れが生じ始めるという。

 交感神経が刺激され続けることで生物学的に高血圧になりやすいそうだ。


 数ヶ月続くと、今度はホルモンバランスに乱れが生じ、つまり肥満や糖尿病リスクが高まることになる。

(最近痩せにくいのよね〜という中年太りはココが落とし穴である可能性……)


 若い世代では、成長ホルモンがストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)に置き換わってしまい免疫力低下や疲労回復の遅延が症状として現れてくるという。


 これが数年間単位で続くと、うつ症状へと発展してしまう可能性が示唆されているし、数十年単位になると認知症やアルツハイマー発症との因果関係が指摘されている——要するに、精神神経系にダメージを受けている状態だ。

 いずれ日本人の平均寿命は再び短くなるだろうという予測値まで算出されている始末である、勘弁してほしい。


 なりたくて認知症になるわけでも生活習慣病にかかるわけでもないが、そうなる危険性の高い睡眠習慣を長年送っているという皮肉だ。

 見方を変えると、睡眠一つで予防線が張れるということでもある。

(あー、耳が痛い)


 諸君、どうぞ健やかであれ。

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