三月十七日 聖パトリックの日

 日本ではあまり馴染みがないが、カトリック系キリスト教徒の祭日の一つ。

 四世紀後半から五世紀半ばにかけてアイルランドにキリスト教を布教した功績で聖人となったパトリキウス司教の命日。

 現在ではアイルランドの守護聖人でもある。


 古くから祭りの風習はあったようだが、アイルランドでは明治三十六年(一九〇三年)から正式に国家の祝日に制定されている。

 厳密にいうとケルト系カトリックといった感じで、土着のカミサマなり妖精さんなりが布教の過程でやんわりキリスト教化していったりしているので、太陽信仰の名残を彷彿とさせるケルト十字など一種独特のキリスト教文化が根付いていたりする。


 かくいうパトリキウスも西ローマ帝国の支配下にあった当時のイギリス(ブリテン島)ウェールズ地方出身のケルト人であったと伝承されている。

 十六歳の時に、アイルランドの海賊に拉致られて、そのまま奴隷として売っぱらわれてアイルランドで羊飼いとして働かされていた(虐待されていたという表現もある)時に、天啓に目覚めたそうだ。


 カミサマの「アイルランドにキリスト教広めてな!」というお告げきっかけで、パトリキウスは牧場を脱走して故郷ウェールズに帰ると、そこからヨーロッパ大陸に渡ってキリスト教神学の道を突き進んだ。


「今に見とれよ、キリスト教漬けにしちゃるからな!」

 という、ある種の復讐心からバリバリ勉学に励んだパトリキウスは、そうこうするうち時の教皇から「アイルランドに布教よろ!」と出向命令を受けて再びアイルランドに足を踏み入れることになった。

(因みに家族は大反対したらしいよ)


 超頑張ったパトリキウスはアイルランドにガンガン教会を建設し、じゃんじゃん地元民を改宗させまくってアイルランドの地で没したそうだ。

 結果、こんにちのアイルランドに至るわけである。


 そんなパトリキウスのシンボルカラーはグリーンで、色の由来は三つ葉のシャムロック(クローバーとかカタバミとか三つ葉の植物の総称=現在のアイルランドの国花にもなってるよ)を片手に布教活動に勤しんだから、だそうだ。


「シャムロックが三つ葉なんは、三位一体(父と子と聖霊)を表してるんやで」

「へえ〜そうなん?」


 元々、ケルト文化においても「三」という数字は神聖視されていた上、身近な植物で説明されて理解しやすかったのだろう。真偽はともかくパトリキウスのプレゼン上手が伺えるエピソードだ。

 それが転じて、聖パトリック祭で緑色のアイテムを身に付けてるとラッキーに恵まれるという謂れになったそうだ。


 それが行き過ぎて、とうとうビールも緑色に染めるし、河川や噴水まで緑色に染め倒して祭りを祝うようになった。

(一応、映画なんかで使われる「無害な」塗料を使用してるらしい。入浴剤と思えば理解できなくもない……かも?)

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