三月十六日 十六団子の日

 主に東日本以北(関東・東北・北陸あたり)を中心に行われていた農業における伝統行事の一つ。

 曰く、昔は山にカミサマが住んでいて、春から夏にかけての稲作期にはカミサマが人里に降りてきて種を蒔き、秋の収穫まで田園を守ってくれると考えていたという。

(無事に収穫が終わると、カミサマは山に帰って越冬するライフスタイル)


 そこで、毎年三月十六日になると杵と臼で音を立て「春でっせー、(よく育つ)種おくんなましー」とカミサマに合図を送り、餅を付いて十六本のお団子をお供え(豊作祈願)するという作法が由来となっているそうだ。

 そのお供えする団子を「十六団子」と呼んでいるらしい。


 さて、この「十六」という数字。実はルーツを同じくする記念日が既出の「和菓子の日(六月十六日)」である。


 世が乱れまくっていた平安前期、疫病が流行るわ、天変地異は起こるわ、政権闘争で人間社会もきな臭いわで、嫌気がさして改元した「嘉祥」の頃と考え方は基本的に同じという感じだ。

 十六個の餅(菓子)を供えて、それを食べて無病息災を祈願した(室町くらいから一般化して江戸時代くらいまで当たり前に普及してた)イベントの農業版といった立ち位置である。


 とりあえず現代版では、もっと気軽に上新粉や白玉粉で作った団子をお供えするスタイルでも問題ないらしい。何だったら蒸す工程をレンチンで代用できる便利な世の中である。

 余談だが、上新粉は生のうるち米を粉にしたもの、白玉粉は一度蒸したうるち米を乾燥させて粉にしたもの、という違いがあったりする。

 だから、もちもち団子を作りたいなら白玉粉の方がよりお手軽に扱えるといえなくもないが、お値段も上新粉に比べて倍くらいする。

(上新粉で作った団子の食感がパサつくのは蒸し時間が足りないのとツキが足りないのが原因。だって生米だからね)


 そして関西風桜餅(クレープみたいな生地じゃなくて、もちもちつぶつぶな生地で餡子を包んでるやつ)などによく使用される道明寺粉も基本的には蒸して乾燥させて荒い粉にしているという点では白玉粉とカッコで結べる製法だったりする。

 たまには、そんな伝統に思いを馳せつつ、少し濃いめの緑茶と共にまったりと団子を食すの粋だと思う。

 何せ、これからが花の季節本番だ、団子が美味い。

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