二月十五日 春一番名付けの日

 春一番——春先に吹く南寄りの強い風。

 春の嵐とも言われたりする季節風を指す言葉だ。

 それがメディアで大々的に取り上げられて定着したことを記念する日。そのきっかけが、昭和三十八年(一九六三年)二月十五日付けの朝日新聞だったという。


 現在、気象庁では(気象条件等の地域差を考慮しつつ)概ね「春一番」を次のように定義している。


 一つ、立春から春分までの期間(例年、二月初旬〜三月中旬頃)に吹く風であること。

 二つ、日本海側を進む低気圧に向かい、南側の高気圧が毎秒八メートル以上の風を伴いおよそ十分間吹き続けること。

 三つ、前日に比べて気温が上昇していること。


 これらの条件に全て当てはまった場合を「春一番」と呼ぶということになっている。

 だから、そもそも山に囲まれた甲信地方の山梨県や長野県、そもそも日本海に面していない沖縄、時期的にシベリア寒気団が上空を陣取る北海道などの地域は、春一番発生条件から外れてしまうことになる。

 また過去の統計データから、風速や気温などの条件は満たしているが時期が立春前だった——という理由で春一番認定されなかった年もあり、その場合は気象庁の発表は「観測なし」ということになるらしい。

 逆に、期間内に条件を満たすケースが複数回発生すると、便宜上「春二番、春三番」と呼称することになっているそうだ。


 因みに昨年二〇二〇年の春一番観測は、東京で二月四日、北陸・名古屋、四国中国北九州で二月二十日、大阪で三月二日、南九州では観測なしという結果だった。


 そんな「春一番」の語源となった海難事故が、江戸時代末期、安政六年(一八五九年)の二月に長崎県の壱岐郡(現在の壱岐市)で起こっている。漁業中、折からの強風で漁船が転覆し五十名を超える死者を出す大惨事となった。

 このことから漁師の間で「ハルイチ(春一番)」などと呼ばれ始めたことが由来であるとされている。

 実際のところ、春の嵐、強風のことは江戸時代以前の文献でも該当する記述が残っているとかで、どこの時点が語源になるかは正直、曖昧のようである。


 そして、気温が上昇した後はガクッと下がるのも春一番の特徴らしい。

 いわゆる「寒の戻り」というやつで、この時にだいたい体調を崩したり風邪を拗らせたりする人が増えるという。

 季節は確かに移ろってきているのだが、人間にはまだまだ厳しい寒さが続く日々である。くれぐれも読者の皆様におかれては体調管理にご留意いただきたい季節だ。

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