二月十日 一ページの論文が「ネイチャー」に掲載されたところノーベル化学賞を受賞することになりました
明治二年(一八六九年)にイギリス、ロンドンにて設立創刊された科学週刊誌「ネイチャー」——主に科学技術をメインにした査読済みの論文を掲載する総合学術雑誌である。
とりあえず、現状世界的に権威ある学術論文が集結する雑誌の一つだ。
そこに昭和九年(一九三四年)二月十日、わずか一ページの物理学論文が掲載される。
ジャン・フレデリック・ジョリオ=キュリーおよびイレーヌ・ジョリオ=キュリー夫妻の共著「Artificial Production of a New Kind of Radio-Element(新たな放射性同位元素の人工生成について)」を発表した。
二〇一五年あたりにネイチャーに掲載された過去論文がオンラインで無料閲覧可能になったそうなので、ダメ元で検索をかけてみたところPDFデータ化された当時の紙面がダウンロード閲覧可能となっていた。ありがたい。
因みにイレーヌは、かのマリー・キュリー夫人の長女であり、ジャン・フレデリックは現役当時のキュリー夫人の助手を務めていた経緯で、娘イレーヌと結婚した義理の息子(フランス人物理学者)である。
雑誌の二〇一ページの後半から二〇二ページの前半にかけて掲載された二段組の一ページに満たない短い論文であるが、ばっくりとした内容としては、アルミニウムにアルファ線を照射することで人工放射性同位元素リン30の合成に世界で初めて成功したという小難しい研究結果を発表している。
補足として、自然界に存在する天然放射性物質ではなく、陽子やらアルファ線やらベータ線やら中性子なんぞを原子核にぶち当てて、人工的に核変換を起こして生成する放射性物質のことを「人工放射性核種」と呼んでおり、彼らの研究はこの分野に属しているということらしい。
で、この発見によって後世に続く核開発研究が飛躍的に進歩した。
核実験、原発の技術をはじめ、医療分野、研究、産業とさまざま方面で応用されているという。
短い論文ではあるのだが、物理学系の論文では伝統的に過去研究の引用を懇切丁寧に前置き説明などしないため、いきなり核心だけをズバッとついた仕様になることが多いという。
なので、取り立てて珍しいケースではないのだが、内容は特濃だったということだ(それでも一ページにさっくり収まるって、どんだけ文章力高いんだ)。
とりあえず、めちゃめちゃ凄い発見だったので、翌年、二人はノーベル化学賞を受賞することになった。
英語自体は非常にシンプルで、下手な英語教材よりもよっぽど読みやすい構文で綴られているので一読に値するのだが、元素記号や演算、物理独特の単語表現が散見されるので、ちまちま辞書引きは必要になる——のだが、何となくそれなりに(読み物として)面白い。
(理解できたとは言ってない)
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