二月六日 出版社が初めて「週刊誌」を創刊したら気が付くと週刊誌ブームの火付け役になっていた件

 日本の出版業界で初めて週刊誌を創刊したのは、昭和三十一年(一九五六年)二月六日発売の週刊新潮だったそうだ。

 今年で実に六十六年というご長寿雑誌である。


 誤解のないように申し添えておくと、それまでも週刊誌自体は存在しており、その先駆け的存在は、戦後間もない昭和二十二年(一九四七年)に遡って「週刊朝日」が誕生したことに端を発していたりする。

 ただし、当時の週刊誌はあくまでも「新聞社」が携わっており、新聞の延長線にある以上「掲載する内容にはある程度のお行儀の良さ」というものが要求される少々お堅いものだったらしい。


 そこに出版社が殴り込み(語弊)をかけたところ、新聞業界では暗黙の了解であった例えば政治に絡むような公にできない事件等の「聖域」にさっくり切り込む記事を手掛けちゃったり、下世話な下ネタを含むゴシップを取り上げる怖いもの知らずの雑誌が出来上がった——という。

 割とギリギリのギリみたいなネタを扱うものだから、時代的にまだまだその手の話題に厳しい監視の目が光っており、真偽の程は定かじゃないが、新潮サイドには警視庁お呼び出し対応専門のお抱え警視庁OBがいたとかいないとか業界内の噂が上がっていたそうだ。


 業界的には「そんなん知っとったし、今更」という裏ネタが世間の人様の目に晒されることになったという点で、非常にセンセーショナルな雑誌となった。

 もちろん、得意分野である連載小説なんかも扱っていたから、すぐに幅広い層に浸透した。

 そして、これを皮切りに怒涛のように出版業界から週刊誌が創刊されることになる。


 拍車をかげたのが、昭和三十三年から三十四年(一九五八年〜五九年)にかけての当時の皇太子殿下(現、上皇様)のご成婚の話題だったりして、テレビ業界と共に週刊誌の売れ行きは鰻登りとなる。

 週刊文春や女性自身等の雑誌もこの頃創刊され、また活字だけでなく週刊サンデーやマガジンといった漫画雑誌も続々と創刊されているのがこの時期だ。

 月刊誌を上回る勢いで伸び続け、週刊誌ブームの到来と相なったわけである。


 一九六〇年代に入ると、週間TVガイドや女性セブン、少年ジャンプやプレイボーイ、週刊ポスト等々、テレビ雑誌からコミック、女性誌、男性誌に至るまで多岐にわたって、こんにちもお馴染みの雑誌が続々と登場し、引き続き週刊誌人気は多少の浮き沈みはありながらもコンスタントに続いている。


 余談になるが、週刊誌ブームの合間合間に、ちょこちょこ文庫本ブームというものも起こっていたりする。


 戦後の出版業界再建で爆発的に業界が活性化し「お堅い」週刊誌が登場した後、ちょっと冷めた(不況の)時期にコスパ重視の文庫本が注目されるという大小ウェーブが出来ているのは面白い。

 我らが角川文庫が台頭したのは、ちょうど朝鮮戦争勃発前後の時期(一九五〇年前後)と重なる。実は、週刊誌ブームの到来前に第一次文庫ブームが来ていたことになる。

 この時は深刻な紙不足が原因でコスパ重視のコンパクトな本=文庫本の需要が伸びた。


 その後もそれぞれ六〇年代の週刊誌発行横這い時期にはカッパブックス、七〇年代のオイルショック時には講談社文庫や文藝春秋などが起爆剤の役割を担っていたりするのだが、コンスタントに映画やタレントとのタイアップで業績を伸ばして何だかんだ存在感を示しているのが、第一次文庫ブームを牽引した角川だったりするのは実に興味深い。

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