二月二日 世界湿地デー(ラムサール条約採択日)

 昭和四十六年(一九七一年)二月二日、中東イラン北部カスピ海に面するマーザンダラーン州ラムサールで開かれた国際協議の場において、湿地に関する国際条約が採択された日。

 それを記念して毎年二月二日を「世界湿地デー」と称する正式な国際デーである。


 採択地に因んで俗に「ラムサール条約」と呼ばれている条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)」という実に長いタイトルを持っている。


 平たく掻い摘むと、目的は「水鳥の保護」なのだが、多くは渡鳥だったりする。

 中には丹頂鶴やコウノトリなどの絶滅危惧種も含まれるのだが、これらの野鳥を捕獲保護するには限界があるため(何せ渡鳥)、ならば生息環境を保護した方が早いんじゃね? という観点である。

 そして、それは単一国内でどうにかなる話ではないため(何せ渡鳥)、国際的に枠組みを設けて地球規模で生息環境を保護しようという取り組みである。


 さて、タイトルのとおりラムサール条約は「湿地」に関する条約なのだが、この「湿地」については非常に広義的な捉え方をしているのが特徴だったりする。

 条文第一条には、次のとおり定義されている。


 一、湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水かんすい(=海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が六メートルを超えない海域を含む。


 二、水鳥とは、生態学上湿地に依存している鳥類をいう。


 つまり、湿原や湖沼、河川などは言わずもがなだが、干潟や水田、マングローブ林やサンゴ礁等も包括している非常に広い範囲を指しての「湿地」表現というわけだ。

 そして、鳥類も川辺、海辺を問わずに広義的に捉えているという特徴がある。


 水田まで保全となると、人間の生活どうするよ? という疑問が浮かぶが、その点は「賢明な利用」という表現で続く条文に明記されている。

 どういうことかというと、地域の生活が立ちゆくよう経済活動は行いながら、該当地域に住んでいる皆さんには水鳥のための環境保全にも協力してもらうという感じだ。

 で、その協力はワールドワイドにやりまっせという三つの大項目を掲げている(非常にばっくりとした説明)


 国際的な該当湿地の条件は、代表的な九つの基準が設けられている。

 その中には、絶滅危惧種の生息地などから、二万羽以上の水鳥の生息を支える地域、その生息地域を支える動植物なども含まれていたりする。

 そして、九項目全ての基準を満たすのではなく、「いずれか」の条件を満たしていれば湿地登録が可能ということらしい。

 詳しくは環境省がデータを公開しているので、興味のある方は暇な時にチョイっと覗いてみるのも面白いと思う。


 日本の場合は、国際基準を満たしていること、国内法と照らし合わせて将来も自然環境保全がなされること、該当地域住民の賛意を得られていることの三つが条件となっている。

 その結果、二〇二一年十一月時点で、全国五十三箇所が日本国内における条約湿地として登録されているそうだ。

 数えてみると、北海道だけで全体の四分の一を占めているのは、土地面積を考えても当然のことだろうと納得する次第だ。

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