一月二十九日 南極昭和基地開設記念日

 昭和三十二年(一九五七年)一月二十九日、第一次となる南極地域観測隊が南極大陸東岸部から四キロメートルほど離れた辺りに位置するオングル島に無事に上陸した日。


 当時は一つの島だと思われていたオングル島だが、実際には間に細い海峡を挟んだ東西に別れた島で、第一次隊は正確には西オングル島に上陸し、その後、観測基地の建設は東オングル島にて進めている——現在の昭和基地だ。

 ちなみに上陸地点には看板を設置しており、基地からは一時間程度で行ける距離感らしい。


 初期隊(〜一九六二年)は海保の砕氷船「宗谷そうや」でのミッションに従事していたのだが、現在は観測船「しらせ」が目下活躍中である。


 昨年十一月二十日に、第六十二次隊となる南極地域観測隊(越冬隊)が無事に横須賀を出発した。

 通常はオーストラリア、フリーマントルに「しらせ」が先行し、南極で必要となる物資を調達して待機しているそうだ。

 隊員はオーストラリアまでは空路で移動し、オーストラリアで「しらせ」に合流して一ヶ月にもなる南極海洋航路へと切り替えるそうだが、このコロナ禍で他国を経由するのは難しいと判断され、観測隊史上初となる「他国への寄港一切なしプラン」でミッションを遂行中のようだ。

 日本ー南極往復直行便である。


 しらせの現在地は、今やインターネットでリアルタイムに追えるようになっているのだが、履歴によると昨年十二月十九日に無事越冬隊を基地に送り届けて、現在は夏季隊を回収して復路についている最中のようだ。

 順調にいけば、来月下旬には横須賀に戻ってくるはずである。


 ただし、(一応)夏場である南極とはいえ昨年一月時点の気象庁が発表している平均気温は、マイナス一・六度Cという過酷な環境だ。

 加えて、南極とオーストラリアの間にまたがる暴風圏と呼ばれる海域での時化しけは、航行する隊員を大いに苦しめることでも有名だ(船酔い続出海域)。


 そんな負担を少しでも軽減する空路+航路プランが、今年はオール航路という厳しさ増し増しプランを遂行中だ。

 それでも「引き続きお願いしまっす!」というわけにはいかない夏季隊員の「安全を優先」という熟考に熟考を重ねての判断のようである。

(夏季と越冬では用意する装備も変わってくるので当然といえば当然)


 余談だが、南極基地での最終移動手段は輸送ヘリになるのだが、これは防衛省(自衛隊)管轄だったりする。国家プロジェクトなので各省庁各部署総出でチーム編成されている。

 何してるかというと、ばっくりと四部門に分けられるのだが、研究観測、基本観測、公開利用研究及び継続的国内外共同研究で構成されている。


 もう少し噛み砕くと、地球環境の変動メカニズムの解明と将来予測に必要な南極域変動データを様々とっているという感じだ。

 南極から観測できる大気の精密データ、氷床や海氷縁辺域の観測、そして南極の昔の状態を復元するプロジェクトなどが世界規模で遂行中であるらしい。


 一般人にはどうしてもタロジロのイメージが強いが、現在の昭和基地は随分と快適になっているもようだ。

 野菜などの自給自足研究もされているし、川のない南極で雪解け水を人工的に作って浄水化する昭和基地のおいしい水(仮)なども充実していたりする。

 一説には三百戸分の電力を賄える太陽光発電(夏季白夜なら二十四時間充電できるよ)を整備し、南極のブリザード対応風力発電機(シンプルコンパクトでイカつめボディ 笑)も三台稼働中だ。

 お天気の良い日には、皇帝ペンギン視察団が遊びにくる珍事も起こるらしい。


 ただし、冬季の天候は過酷を極め平均気温マイナス二〇度Cの中、風速二十五メートル越え(もはや常に巨大台風が直撃してる感じ)もあるあるで、数メートル先の視界が消えるホワイトアウトな世界に包まれる。

 越冬隊のミッションはこれから、そんな環境で現在も行われていると思うと頭が下がる。

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