一月十六日 アメリカで禁酒法が施行された日
まず初めに宣言しておこうと思う。
「筆者に禁酒は無理(キッパリ)」
宗教上の理由からアルコールに嫌悪感を抱いていた敬虔なプロテスタント(=
俗に「禁酒法」として知られるアメリカ合衆国憲法修正第十八条は、大正九年(一九二〇年)一月十六日に施行され昭和八年(一九三三年)の修正第二十一条の批准をもって廃止されるまで、十年以上続いたアルコールの製造及び販売を禁止する法律である。
この法律のうっかり(というか、もはや骨抜き)しているところは、禁止したのはあくまでも製造と販売であり、飲酒そのものを規制したものではなかったという点に尽きると思う。
その結果どうなったかというと、国レベルでは、重要な財源であった酒税が徴収できなくなり政府は財政難に陥った。
民間レベルでは、一部の大金持ちが法の対象外であるカナダから大量に酒類を仕入れて買い占め、中下層の間では非合法の密造酒が法外な値段で地下売買され、それはもれなくマフィアの潤沢な資金源となり、粗悪な酒で深刻な健康被害に見舞われる人が増え、街中には禁酒法施行前のおよそ三倍近い非合法飲み屋がコソコソ乱立する事態となった。
こうして完全に割を食ったのが正規の醸造家たちで、法律施行期間に随分と醸造技術も環境も失われてしまった。
アルコール摂取によって起こる犯罪を抑制するはずが、逆にアルコールを巡って犯罪が横行するという本末転倒ぶりだ。
ある意味、浮世離れしていたこの法案は皮肉をこめて「高貴な実験」などと呼ばれているとかいないとか。
俯瞰すれば、びっくりするくらい大失敗の政策であったが、もう少し時代背景を掘り下げると禁酒法が施行されていた期間に世界で勃発していたのは第一次世界大戦だったりする。
強烈な戦時統制化と物資不足の予防線を張るという大義名分が、この法律を下支えしていたような節もあった。
そして、浮かれた花の二十年代の次にアメリカを襲ったのが暗黒の木曜日に始まる株価大暴落——世界恐慌だ。
金銭感覚も生活習慣も何だか少しずつ、全体の歯車が狂っていた感じがそこはかとなくする。
かくいう日本でもトントン拍子の酒税対象の改訂や飲酒可能年齢の引き上げ検討など、トンチンカンな議論がなされている昨今だ。
ここは是非とも過去のアメリカで起きた事象から学んでほしいと願ってやまない筆者である。
確かに、飲酒による健康リスクや事件事故は後を絶たない。
だが、全面禁止したところでやはりゼロリスクにはならない。
何事も過ぎたるは及ばざるが如し——というやつだ。
アメリカで禁酒法が施行されたことを受けて、日本では一月十六日を「禁酒の日」と呼んでいるそうだが、いつ誰が制定したのかは定かではないという。
むしろ、日本ではこれからが蔵開き本番だ、蔵元で買うなら非加熱生原酒が一推しである。
おやおや?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます