一月九日 風邪の日

 江戸時代に流行した謎の風邪で当時の横綱(第四代横綱谷風梶之助)が現役のまま死亡した日。寛政七年(一九七五年)一月九日(新暦二月十九日)のことだ。

 べらぼうに強くて、当人も「自分に勝てるのは風邪くらい」といった旨を豪語するくらいの力士だったそうだから、世間はさぞかし驚いたことだろう。

 追悼の意味も込めていると思われるが、谷風の四股名は、二代目梶之助で止め名になっているそうだ。


 元々のきっかけは第十一代将軍徳川家斉が、現在の千葉県辺りで狩を楽しんだ数日後、謎の風邪症状を発症し、それがあっという間に公議に仕える武士の間で広まり、市井に波及したとする説がある。

 罹患した者に共通していたのが猪や鹿の体毛が着物に付着していた点で、このことから、当時この謎の風邪は「御猪狩風おいかりかぜ」と呼ばれていたそうだ。現在で言うところの正体は、インフルエンザである。


 定期的に猛威を振るうインフルエンザにはじまり、「風邪」と呼ばれる諸症状の主な原因はウィルスによる上気道感染とされている。

 現在、世界規模で変異を繰り返しているコロナウィルスも例に漏れないが、これらのウィルスを寄せ付けないことが一番の予防と手引きには記されている。


 その基本行動が、手洗いうがいと言われているわけだが、石鹸等で不活化(あるいは失活化)したウィルスを物理的に洗い流すためには、十五秒〜三十秒程度の時間が必要だとされている。

 うがいも同じように口内の粘膜に付着したウィルスを物理的に洗い流すことで予防と重症化を抑える効果が期待できるという。

 もっとも、物理的に洗い流すなら、こまめにお茶を口に含んで飲み込むという方法も効果的だ、人間の体内において、もっとも強力な殺菌作用は胃酸が担っているのだから、活用しない手はない。


 またビタミン摂取も大事になる。

 白血球の活動を助けるビタミンC、鼻腔や喉粘膜の機能を高めるビタミンB2及びB6、そもそものエネルギー代謝に必要なビタミンB1を含む食材が、免疫力維持には欠かせない。

 そして何より、体を冷やさないことも大事だ。

(こたつでみかんは季節柄、大正解の行動と言える・笑)


 因みに、江戸時代後期にはマスクの原型が存在していたそうだ。

 島根県大田市にある石見銀山資料館では、旧家から出てきた当時の資料を元に復元したマスク「福面」が展示されているという。

 もっとも、これについては銀山の発掘作業で粉塵を直接吸い込まないように考案されたものであると考えられているが、何にせよ、なかなか現代的なマスクデザインであることに驚く。


 この頃からマスクスタイルに抵抗がなかったらしい日本人の姿勢が垣間見れて面白くもあり、また新型コロナウィルスの一日も早い収束を願ってやまないこの頃である。

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