十二月九日 漱石忌(夏目漱石の命日)
カクヨムに身を置く以上、無視をしてはいけない日、その十八。
明治から大正にかけて活躍した日本を代表する文豪の一人。
昭和五十九年(一九八四年)十一月一日から平成十九年(二〇〇七年)四月二日まで発行されていた日本銀行券D号券(戦後第三世代千円札)の顔でもある。現在は発行停止扱いになっているが、市場流通分は引き続き使用できる現行紙幣だ。
プレミアつくかも〜的な感じで個人的に大事にしまっておくのは自由だが、現行紙幣である以上、千円の価値は千円以上でも以下でもない。
余談だが、紙幣の写真を撮影して画像をアップし(これ自体を取り締まる法律はない)、それがまかり間違ってプリントアウトなんかされた場合は「通貨及証券模造取締法」に抵触する可能性があるので、やめておくに越したことはない。財務省公式で指摘しているので、まず間違いない。
さて、みんな大好きお金の話(違)はさておき、漱石は江戸の牛込馬場下(現在の東京新宿区)生まれの生粋の江戸シティーボーイである。
当地代々名主の五男として、権力も財力も持って生まれた超
ただし、お祖父ちゃんは一代で家計を財政難にさせるほどの放蕩者だったそうで、漱石の父親はだいぶ頑張って財経を立て直している苦労人である。
しかし、五男ともなると扱いは雑になるようで、幼少期の漱石は幾度となく養子に出されては生家に戻されを繰り返しており、大人の事情に振り回された余波は二十歳を過ぎるまで続いていたようだ。
(ティーンエイジ前に養父母が離婚しているが、実家と義両親家が揉めまくり漱石が「夏目」籍に戻されたのは二十一歳の時になる)
そんな事情で学校を転々とすることになるのだが、基本的にやれば出来る子だった。漢文や漢詩に始まり、特に語学ではずば抜けて英語のセンスが光っていた。
しかし、運の悪さもある意味ずば抜けている漱石だった。
大学予備門の進級試験では虫垂炎を煩い受験できず、食いつないで学費を稼ぐためにも教師として生計を立てることになる。
漱石が生涯の親友となる俳人、正岡子規と出会ったのも、このあたりの時期で二十二歳前後のことだ。
子規の発表した文集の巻末に漢文で批評を書き連ねたことがきっかけだったという。「子規」も「漱石」も漢文からとったとされるものだが、漱石の場合「子規の使っていた号の一つを拝借あるいは譲渡」されたものだという。
二人の親交の深さが窺えるというものだ。
二十三歳の時に帝国大学(現、東京大学)英文科に入学し、様々な翻訳などを手がけていくことになるのだが、この前後四年の間に漱石は身内を立て続けに亡くし続けている。
元々、幼少期に大病を煩い、落ち着かない家庭環境に置かれ、多感な時期を不安定に過ごさざるを得なかった生い立ちだが、ここにきて徐々に精神面にその不安定さが垣間見えてくるようになる。
言葉は悪いが「運のない男」、漱石は大学卒業後は教師として働くもやはり大病を患い、療養も兼ねていたのだろう地方(四国や九州)へ移住することになる。(この頃、俳句に多大な影響を受け、また与えている)
そして三十三歳の時、国家プロジェクトとしてイギリス留学をすることになるわけだ。
英文学の研究の傍ら「何かと思い詰める男」漱石は、もはや持病ともいうべき神経疾患に悩まされることになる(この留学期間中に、親友子規は日本で病死している)。
挙句、「夏目発狂(実際、発狂まではしていない)」と誤認され帰国命令を出される始末だ。つくづく運のない男と言わざるを得ない。
帰国後、帝大の教師(小泉八雲の後任)になるも数々の風評被害とともに持病が悪化し、結局は教師を辞めることになる漱石なのだが、この頃からリハビリを兼ねて本格的に執筆活動を開始する。
ここからが、とことん運のない男の快進撃だった。
これまでに経験した数々の出来事が順次作品となってこの世に送り出されていく。
その最初の一本、記念すべきデビュー作が「吾輩は猫である」なのである。
続けて「
しかしその後も様々な病魔に襲われ続けた漱石は、大正五年(一九一六年)十二月九日、胃潰瘍からくると思われる体内出血が原因で遺作「明暗」を書きかけ途中——四十九歳で波乱万丈の生涯を終えた。
東京帝大で司法解剖されたのち、漱石の「脳」と「胃」は大学に寄贈され、現在もエタノールに漬けられた状態で東大医学部に保管されているという。
そして、「漱石忌」はその死期もあって現在では「冬の季語」として数多くの句が詠まれている。
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