十一月二十七日 ノーベルさんが遺言状を残したのでこの日をノーベル賞制定日にします
アルフレッド・B・ノーベル博士——スウェーデンを代表する化学者でありダイナマイトの発明で巨万の富を得た御仁。
ノーベル博士に悪気があったわけではないが、彼の功績は生前、世間でのウケは非常に悪かった。
(純粋な研究も使用者の悪用法でイメージダウンという二次災害みたいなもの)
一説にはノーベル博士の実兄が亡くなった際には、(ノーベル博士本人と間違えられて)「死の商人、死す」などという誤報が飛んだほどだったという。
改めて自分の死後の評価に思い致したノーベル博士は、明治二十八年(一八九五年)十一月二十七日に遺言状を残した。
その内容を簡潔にまとめると、自身の莫大な財産を遺言執行人が有価証券に変えて運用し、基金を立ち上げ、運用利子を毎年、人類のために最大限貢献した人たちに、賞として分配すること。
その分野は次の五つとする——即ち、物理学、化学、生理医学、文学、平和事業である。
これらの賞の受賞条件は「その段階で存命である」こと。
全文はもっと長いが、要約するとこういう感じである。この遺言状が残された日を後年「ノーベル賞制定日」としている。
(授賞式はノーベル博士の命日に行っている)
物理学、化学、生理医学、文学はスウェーデンにて授賞式を行い、平和賞についてはお隣ノルウェーで授賞式が行われる。
いずれの会場でもそれぞれスウェーデン王室、ノルウェー王室が臨席する超格式の高い場だ。
昭和四十三年(一九六八年)からはスウェーデン国立銀行の原資による基金で経済学賞が追加されている。
厳密に言うならばノーベル博士の遺言には載ってない分野なのだが、現在ではゆる〜く同じ括りで賞者を扱っているそうだ。
第一回ノーベル賞は、ノーベル博士の死後五年目に当たる明治三十四年(一九〇一年)に開催された。その時の受賞者を最後にばっくりと紹介しておく。
物理学賞:ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン
(ドイツ。X線の発見により選ばれた)
化学賞:ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ
(オランダ。熱力学の分野で化学反応におけるエネルギー変化と示量性の状態量を見積もる上で有効とされる「ファントホッフの式」発見により選ばれた)
生理医学:エミール・アドルフ・フォン・ベーリング
(ドイツ。ジフテリアに対する血清療法の研究によって選ばれた)
文学賞:ルネ・フランソワ・アルマン・(シュリ)プリュドム
(ペンネーム:シュリ・プリュドム)
(フランス。ライバル候補者トルストイを制して「高尚な理想主義と芸術的完成度の形跡、心情と知性の両方の資質の珍しい組み合わせを与える、詩的な構成物」が評価され選ばれた)
平和賞:ジャン=アンリ・デュナン
(スイス。赤十字創設の功績を認められて選ばれた)
平和賞:フレデリック・パシー
(フランス。自由貿易に反する植民地政策に反対、当時の軍縮および紛争調停の呼びかけ、産業事故の法制提唱、列国議会同盟創設等の功績により共同受賞となった)
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