十一月十二日 ネッシー撮影できたで、という人が現れた日

 グレートブリテン島北部ハイランド地方——スコットランドイチ大きな淡水湖、それが幅およそ二キロメートル、長さおよそ三十五キロメートルを誇るネス湖である。

 そんなヨーロッパの小さな島国の北の方の片田舎にある細長ぁ〜い湖を一躍有名にした未確認生物がいる。二十世紀最大のミステリーとの呼び声高い、皆さまご存知、ネス湖のネッシーさまだ。


 古代の首長竜の生き残り、巨大な魚類(あるいはカメ)、はたまたオカルト的な宇宙生物等々、その正体は未だ解明に至っていない。あるいはそもそも存在しないとすら言われている謎生物だ。

 正体は分からないが、ネッシーの存在を信じている人は世の中割りかしいるようで、現在も真面目に学問としてネス湖の生態調査に勤しむ研究チームだってある。


 そんなネッシーの最初の目撃情報は、西暦五六五年まで遡る。

 日本ではまだ元号開始前、第二十九代欽明天皇の時代(大雑把に古墳時代としておく)あたりだ。

 アイルランド出身のとある修行僧について書かれた伝記に「ネス川の怪物」なる文言が見られるという。(ただし≠ネス湖)


 そこから時代がポンっと飛んで、目撃情報が増え始めるのは二十世紀に入ってから、一九三〇年代以降の話である。

 昭和八年(一九三三年)十一月十二日、お昼時に撮影されたとされる「水に潜るネッシー」が、世に出回った最初のネッシー写真だとされている。


 当時からフェイクを疑う声は一定数あったようだが、撮影者ヒュー・グレイは「ネッシーとは五回程度遭遇している」そうだ。それだけ遭遇していれば、確かに写真に収める余裕も出てきそうだ。

 翌年には通称「外科医の写真」と呼ばれるネッシー写真がタブロイド紙に掲載された。

 おそらくこの写真が、世界的に最も有名な「ネッシー写真」であろうと思う。波打つ湖面から細長い黒い首がヌッと出ているあの写真だ。


 その後も、某テレビ番組のロケで日本の某俳優が「何かそれっぽいもの」を撮影したかもしれない(?)と報告していたり、昨年のフェイスブックにも「っぽいもの写った」的な写真がアップされていて一部界隈で話題になったようだ。


 素朴な疑問なのだが、ネッシー何歳なん……?


 少なくとも古墳時代の個体とは、完全に別個体であることは間違い無いだろうと個人的には思っている。


 そもそも、「ネス湖にはネッシーありき」であの界隈は商売が成り立っている。

 ネッシーがいるから(あんな僻地に道路が整備され)人が集まる。

 ただの細長い湖が、「ネッシーいるかなあ?」という期待値だけでプレミア化し、観光地として成立している。

 ゴリゴリのネッシー関連グッズが飛ぶように売れて、地域の経済を下支えしているのである。


 正直、ネッシーの正体が恐竜でもカメでも宇宙人でもフェイクでも何でも良いのだ。

 地域に貢献している存在であり、それはすなわち「商売のカミサマ」であり、「カミサマの存在の是非を問うこと」自体が実にナンセンスなことなのである(極論)

 ネッシーさまが、なかなか人の目に触れないのは(商売の)カミサマだからと個人的に納得して満足している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る