九月二十九日 洋菓子の日(サン・ミシェルの祝日)

 日本伝統の甘味を和菓子と表現することに対義して、西洋から入ってきた(または西洋にルーツを持つ)菓子類を洋菓子という。

 こんにち、当たり前となったジャンル分けだが、洋菓子が日本に広く浸透したのは昭和三十九年(一九六四年)の東京オリンピックの影響が大きいという。

 もとより海外からのお客さま(選手団を含む)をもてなす目的もあり、さまざまな洋菓子がオリンピック開催に向けて準備されたそうだ。


 日本食糧新聞によれば、オリンピック前には、そもそも現在でいうところの生クリームという概念が存在していなかったようだ。

 瓶詰めのヘビークリームは一部流通していたようだが(料理用だろうか?)、いわゆる乳脂肪分四五パーセントの生クリーム(製菓用)が登場したのが、オリンピックの五年前、昭和三十四年のことだという。


 また、洋菓子に欠かせないフルーツ類も、それまでは生のものをボイルして下拵したごしらえする手間があったそうだが、これも昭和三十年頃に「フルーツ缶詰」が普及し、その後、急速に種類が増えていったという。

 お手軽なフルーツ缶詰と生クリームが揃えば、合わせてトッピングするしかないだろう(偏見)

 同時期、無塩バターをはじめ、主にアメリカやフランスからショートニングやマーガリンが入ってくると、日本における洋菓子作りが覚醒し、凄まじい勢いで急成長を遂げていく。


 オリンピック前年には、世界中から新作料理ヌーベル・キュイジーヌが集結し、日本で考案された品々も含めて、それらはホテルを通して一般人にも浸透していったそうだ。


 ケーキといえばバタークリームが主流であった洋菓子だが、生クリームを使用するにあたり「要冷蔵」という概念が生まれたのも突き詰めるとオリンピックきっかけというわけだ。


 さて、そんな菓子作りだが、西洋では菓子作りの守護聖人が存在しているそうだ。それが、みなさまご存知サン・ミシェル(フランス語読み)——大天使V I P、聖ミカエルである。

 フランスにおいて九月二十九日はサン・ミシェルの祝日とされている。


 日本では、この「サン・ミシェルの祝日」から派生して、平成十四年(二〇〇二年)に三重県洋菓子協会(本部所在地、三重県伊勢市)が「洋菓子の日」に制定している。


 余談だが、いちごの乗ったショートケーキは日本生まれの洋菓子代表格だ。

 元になった菓子は諸説あるが、アメリカの家庭菓子説——ショートニングを使用したサクサク生地に生クリームといちごが載っている菓子。

 イギリス・ショートブレッド説。

 フランス・いちごケーキ説——様々だが、とりあえず日本人好みを追求してみたら、カステラ生地からヒントを得たふわふわのスポンジ生地に落ち着いた。

 そして、そんなショートケーキ考案に深く関わった老舗が、ぺこちゃんでお馴染み不二家フジヤだったりする。

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