九月二十二日 ライソゾーム病について知ってほしい

 ライソゾーム病。

 発症確率はおよそ十万人から二十万人に一人とも言われている、難病指定センターによれば「国の指定難病十九」に該当する劣性遺伝型の先天性代謝異常疾患とのことだという。

 症例が少なく馴染みが薄いため、一般人だけでなく医療関係者にも知らない人が多いらしい。


 人間の体は億単位の細胞群から成り立っているわけだが、その細胞内にライソゾームは存在している「代謝を促す」機能の一つだ。

 老廃物を分解するのが主な仕事になるが、そのための分解酵素の一部が生まれつき欠損あるいは著しく機能低下しているため、細胞内に老廃物を溜め込んでしまうという疾病のことを指している。

 具体的な症状名は複数あり、現在のところサブグループおよそ六十種ほどの症例が確認されているそうだ。

 代表的な症状としては、肝臓や脾臓の肥大化、骨の変形、神経障害、眼障害、腎障害、心不全など多岐にわたる。


 ダメージ蓄積型の病気で、加齢とともに症状は悪化する傾向にあるという。なので治療も継続型であることが多く、完治は未知数というなかなかに厄介な病気だ。

 もっとも、遺伝性とはいえ保因者全員が発症するわけではない。

 一応、調べようと思えば血液検査による酵素活性度から診断可能らしい。


 治療では、欠損あるいは機能低下している酵素を静脈点滴で補う酵素補充方式がもっとも多いようだ。しかし、定期的に補い続けなければならないことと、静脈注入式なので脳への必要酵素の伝達ができないことが課題であるとされている。

 また、造血幹細胞移植という手段もある。骨髄や臍帯血によって正常な酵素を生成できるようにするという方法だが、こちらはドナーの提供ありきというハードルの高さと予後の経過が課題だという。

 飲み薬による酵素の摂取も随分と検討されているそうだ。

 これなら、経口からの体内吸収を経て脳への不足酵素伝達も可能になるが即効性よりも、やはり継続治療が前提となっていて経済的精神的負担が大きいことには変わりない。

 解決策というよりは対処療法という側面が強いように思う。


 そんなライソゾームの代謝異常が確認されている箇所の一つ、X染色体q22(ライソゾーム病の代表的な症例である通称ファブリー病を誘発すると考えられている染色体番号)から、q22=922=九月二十二日が制定日として選ばれた。


 制定したのは愛知県に本部を置く一般社団法人Sakura Network Japan(名古屋セントラル病院の有志による希少疾病勉強会が母体)で、平成二十四年(二〇一二年)より九月二十二日にはライソゾーム病(および希少疾病)に対する啓蒙活動を続けているそうだ。

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