七月四日 不思議の国のアリスが本になった日

 カクヨムに身を置く以上、無視してはいけない日、その九。

 不思議の国のアリスといえば、言わずと知れた作者ルイス・キャロル(本名チャールズ・L・ドジソン)の二十世紀を代表する名作である。


 オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ(オックスフォード大学広しといえど、一番デカくて裕福な学舎)の講師であったドジソンの上司にあたる学寮長ヘンリー・リデル(有名な男爵家の末裔)の三姉妹のために即席で物語られた話を末娘アリスがいたく気に入り、「本にしてほしい」とせがんだことが世に広まるきっかけとなった。

 作家として既にそこそこヒットを飛ばしていたドジソンだが、これが人生最大の大当たりとなったのは後世の誰もが知るところである。


 数学者であり、論理学者であり、作家であり詩人であり、写真家でもあるドジソンはマルチタレントにも程がある。

 若かりし頃はシュッとしたイケメンだが、どうやらリア充とは言い難い青春時代を送っていたようだ。吃音で会話は然程上手くはなく、また十七歳の時に呼吸器系感染症の後遺症で右耳の聴覚を失っている。(その後の人生においても慢性的な肺の弱さに悩まされている)


 そんなドジソンは一時期、写真にのめり込んでいく。被写体は主に幼女(ヌードもあったとかなかったとか)ばかりだったので、現在で同じことをしたら即逮捕されることだろう……。

 名誉のために申し添えておくならば、児童ポルノ的な性癖ではなくロマン主義的思想による「純真無垢な姿」に意義を見出しての撮影だったそうだ。(他ならぬ私自身もそう信じたい)


 さて、一つ面白くもややこしいのが、チャールズ・ドジソンのお兄さんもお父さんもお祖父ちゃんも、みーんな「チャールズ・ドジソン」という名前なのだ。名前を呼んだら一族男子が一斉に振り返る珍現象が見られることになる。

 そのせいか否かは分からないが、ドジソンのペンネーム「ルイス・キャロル」は自分の本名「チャールズ・ラトウィッジ」をラテン語に置き直してから再度英語に変換した上でのアナグラムになっている。(ついでにラトウィッジは結婚した奥さんの姓だ)


 本名をもじって案外安直にペンネームを決めてしまうあたりに、そこはかとなく共感してしまう私がいる(苦笑)

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